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2026年5月8日(金)第5,004回 例会

北陸新幹線の整備に係る取組について

堀 川    淳 氏

独立行政法人 鉄道建設・運輸施設整備支援機構
北陸新幹線建設局長
堀 川    淳 

1996年東北大学工学部土木工学科卒業後,日本鉄道建設公団(現:(独)鉄道・運輸機構)関東支社に入社。企画調査部,鉄道建設本部計画部,新幹線部,関東甲信工事局,大阪支社計画部,国際部,事業監理部,建設企画部を経て,’23年北陸新幹線建設局副局長に就任。’24年には新幹線部担当部長(北陸事業推進調査),今年4月より北陸新幹線建設局長に就任。

 1年前に京都の自治体向け説明会で①新幹線ネットワークの整備②北陸新幹線(敦賀―新大阪間)③新幹線建設と施工上の課題―の3つについてお話ししたことがありますが,きょうは主に③の話です。
 現在,北陸新幹線の敦賀―新大阪延伸を巡り,8つルートが検討されています。このうち「小浜・京都ルート」は京都を通る計画なので,工事を進めると地下水への影響があるのではないかと,京都の方々から非常にご心配の声をいただきました。それに対して,われわれ鉄道・運輸機構がどのような取り組みをしたのかを中心にお話をしたいと思います。

京都市内の2つのルート

 まず,北陸新幹線の概要です。長野オリンピックに間に合わせる形で1997年10月に長野まで開業し,長野新幹線と呼ばれていた時期もありました。その後,長野から金沢までが2015年3月に開業し,金沢から敦賀までが2024年3月に開業しました。開業から3年目になる金沢―敦賀間の利用状況はかなり好調と聞いています。
 敦賀―新大阪延伸については,現在,自民党と日本維新の会が与党整備委員会で,現行計画の「小浜・京都ルート」を含む8案を再検討しており,7月までに結論を出す方向です。「小浜・京都ルート」以外のルートになった場合は,改めて環境影響評価の調査から入っていくことになります。
 「小浜・京都ルート」は,福井県の敦賀から小浜市付近を通って京都市内のどこかに駅ができて,京田辺市(松井山手)付近にも駅ができて,新大阪に来る。
 京都市内だけは,2つのルート案に絞って検討しています。1つ目は,東海道新幹線の京都駅に乗り換えがしやすい場所に北陸新幹線の新京都駅をつくるルートで「南北案」と呼んでいます。乗り換えは便利だと思いますが,京都の中心市街地にトンネルを通す計画なので,地下水への影響が懸念されています。
 2つ目は,「南北案」の代替案という位置付けで,京都市の中心部を避け,桂川駅のそばに新京都駅をつくる「桂川案」です。この2つのルート案について,地下水への影響を検討しました。

地下水への影響

 京都は,日本の都市でも希有なほど,地下水が非常に高度に利用されています。われわれは,京都の地下水の流れがどうなっているかを調べるため,文献調査やボーリング調査,井戸の水の流れの検査などを行いました。
 京都では,周囲の山々から地下水が京都盆地の中に流れ込み,北から南の方に流れていきます。京都盆地の地下水はやや西寄りに傾いて流れ,サントリーの山崎の蒸溜所の辺りに向かっているのです。
 地下水には,浅い層の地下水と深い層の地下水があります。浅い層の地下水は生活用水として利用されますが,雨の影響を受けやすい。一方,深い層の地下水は,水圧を持っていますが,水質は非常に安定していることが分かりました。伏見の酒造組合の酒蔵は,深い井戸を掘って,水質が安定している地層から水を取り,おいしいお酒を造っています。
 次に,コンピューター上に京都盆地と周囲の山々の仮想空間をつくり,雨を降らせて,川に水を流したり,井戸から水を取ったり,リアルの自然状況や水の動きを再現することを試みました。仮想空間がリアルに近いことについて,有識者のお墨付きを得た上で,仮想空間の京都盆地に北陸新幹線のトンネルを掘ったり,地下に新京都駅をつくったりして,地下水にどのような影響が出るかをシミュレーションしました。
 「南北案」のルートで,東海道新幹線の京都駅のちょっと南側に北陸新幹線のトンネルと地下駅をつくった場合,地下水位が1m下がるというコンピューターの計算結果が出ました。現在,京都駅付近では,たくさんの井戸が使われていますが,重要なのは,地下水位が1m下がる範囲内に井戸は確認されていないことです。われわれは「間違いなく地下水への影響は出ます。ただし,井戸による地下水利用への影響は限りなく小さいです」と説明しています。
 もう1つの「桂川案」でも,地下に駅をつくると地下水位が1mぐらい下がる範囲が計算で分かりました。周囲に井戸はたくさんありますが,地下に駅をつくることで地下水位が下がる範囲には井戸は確認されていません。
 京都の地下水に関する取り組みについては,自治体や一部の業界団体には説明し,ホームページで計算結果を公表していますが,今後は市民の方々に丁寧に説明していく必要があると考えています。

埋蔵文化財や陵墓への対応

 京都は「2千年の都」なので,どこを掘っても文化財が出るのではないかと言われます。世界遺産,国宝,皇室関係施設の多くは陵墓,お墓です。寺社仏閣の総本山,お茶,お花の施設もあります。「南北案」「桂川案」ともに,現在,把握している文化財やお墓の真下を絶妙に避けて,ルートを選定しています。
 ただ,京都の中心部を通るルートと郊外を通るルートでは,文化財などがある密度が全然違います。特に「埋蔵文化財包蔵地」と呼ばれるエリアは,掘ったら限りなく文化財が出る可能性が高い地域を示しています。いわゆる「洛中」は,どこを掘っても何がしか重要なものが出てきそうな範囲で,その中を「南北案」ルートは抜けていくことになります。
 過去に地下鉄の東西線や烏丸線の建設工事で,地下を掘ったときはどうだったのかを調べたところ,地表から2.5mより深いところは,2000年より古い地層,つまり人が京都に暮らし始める前の地層なので,お宝は出ないことが分かりました。われわれも2.5mよりも深いところにトンネルを通す工夫をしています。ただ,新京都駅は地下の駅になるので,地下に大きな箱をつくるには,どうしても地上から掘らなければならない。そうすると地表から2.5mの範囲内を触ることになるので,漏れなく埋蔵文化財の発掘調査をすることになると思われます。
(スライドとともに)