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2024年4月5日(金)第4,916回 例会

企業経営とSDGs,2031年以降へ

村 上    芽 氏

株式会社日本総合研究所
創発戦略センター エクスパート
村 上    芽 

京都大学法学部卒業。日本興業銀行(現みずほ銀行)を経て,2003年より株式会社日本総合研究所。専門分野はESG(環境,社会,ガバナンス)企業調査やサステナブルファイナンス支援,SDGsに貢献するビジネスの支援や人材育成など。著書に『図解SDGs入門』『少子化する世界』,共著に『日経文庫SDGs入門』や『サステナビリティ人材育成の教科書』などがある。

 日本総研の村上と申します。私は20年ほど日本総研の大阪オフィスで働いておりまして,その間ずっとESG(Environment〈環境〉,Social〈社会〉,Governance〈企業統治〉を考慮した投資・事業活動)やサステナビリティ,特に環境関係と企業,ビジネスについて調査をしてきました。最近は,SDGsに貢献したいと考える経営者を支援する場面を多く頂いています。日経文庫の『SDGs入門』は多くの方に手に取って頂きました。最近は高校生が読書感想画という絵のコンクールの題材にしてくださって,それが全国で評価されるということもあって,非常にうれしく感じています。

SDGsをめぐる議論

 SDGsとサステナビリティについてですが,足元ではどんな動きになっているか整理するとともに,SDGsは2030年までの目標なので,その先の見通しやビジネスへの期待はどこにあるのか,という部分を解説したいと思います。
 まず,過去から現在ですが,企業に社会性といいますか,環境,社会といったことも考えてくださいという考え方は昔からありました。1960年代,’70年代くらいから,公害対応とか,悪影響を及ぼすビジネスへの規制とか消費者運動とかが始まりました。ただ,サプライチェーンを通じた企業の社会的責任まで考えるなどの動きが顕著になったのは今世紀に入ってからだと思います。
 ESG,SDGsは,日本では2015年から広がり始めた言葉です。それから10年近くが経過しましたが,ロシアのウクライナ侵攻や中東紛争など想定していなかったことが起きています。気候変動や生物多様性といった課題が進み,悪化するスピードは大きくて簡単には止まらない側面があり,解決困難な課題も増えています。
 SDGsは去年がちょうどハーフタイムでした。もう後半戦に入っていますが,達成状況は目標の3分の1にとどまっています。2015年にSDGsができましたが,そのときよりも悪くなっている部分もあります。特に新型コロナウイルスによる影響があり,’20年が分岐点になりました。ただ,感染症の影響だけではなくて,感染症と気候変動に伴う異常気象による災害,紛争により,弱い環境にあった国や地域の人々の生活を直撃したことで,貧困や飢餓に関する指標が悪化しました。

拡散するSDGsという指標

 日本では,SDGsへの認知度が様々な調査で9割弱まで増えています。私がSDGsについて話し始めた頃は,まだ3割ぐらいで,世代や性別による差が大きかったと記憶しています。最近はマスメディアでも積極的に取り上げられるようになり,地域差・年齢差・性差がなくなってきました。ただ知っていても行動に結びついているかというと,つながっているとは言い難いのが現実です。身近な今日の活動をどう変えていくのか,ということを示す手がかりが,E(環境)S(社会)G(ガバナンス)の3つの側面から企業活動を点検し,改善することだと思います。比較的わかりやすく,共通語として手を付けやすいのがESGです。まずはSDGs達成のためにESGを使って整理することで,方向性がつかめるのではないでしょうか。

より良い世界を目指して

 「2031年以降へ」というタイトルをつけましたが,大阪では万博開催が決まったときにSDGs万博とも言われました。開催時点での達成状況と「SDGs+beyond」として,先の将来について発信できたらいいのではないかと思っています。
 発信する要素として例を挙げると,1つ目は「LGBT」です。ジェンダー平等の観点から日本でも大変関心が高まっているキーワードの1つです。これは目標には明記されていません。もちろん不平等を無くすとは書いてありますし,ジェンダー平等にも触れていますが,まずはジェンダー平等の中でも,女性と男性との問題に特化しています。全世界共通の目標だと思いますが,文化的,宗教的,歴史的背景から,言葉としてそのまま出したくない国も非常に多いです。今日では,ジェンダー平等について無関心でいると,若い方との感性が全く合わなくなってしまいます。
 2つ目は,「技術と人間」です。これは2015年時点の技術と今を比べると,AIの登場など,想像できなかったことがたくさんあると思います。SDGs全体を通じて,非常に技術に対しては前向きで,技術力で環境・社会問題を解決していこうという意欲であふれていますが,高い技術力が与える影響までは考慮できていなかったのが現状です。
 SDGsからビジネスにどんな期待がされているのか。これまで多くの企業から,SDGsに貢献しているというお話を伺ってきました。製品・サービスを顧客が利用することで,環境にプラスの効果をもたらすこと。あるいはサプライチェーン全体で環境,社会配慮を進めること。そして労働環境につながる社内制度を改善することなどです。企業の中でも継続的に実施し,次の時代に渡していくことが大事だと思います。
 地球環境と人間の関係で言えば,いい地球環境があるから,生存につながる大気や水がある。だからこそ社会,経済が成立する。人間も自然の1つだと改めて認識する必要があると思います。人生100年時代なら3世代先のことを考えた判断が必要になるでしょう。平和という観点で申し上げると,ダイバーシティが組織にプラスに働くかという問いへの答えは,多用な価値観が組織内に併存する方がより良い解を見つけられるから,となるわけです。ところが対立や分断,二極化が進むと,何も改善しない。自分とは異なる価値観や信条をどう捉えるか。SDGsをそういった状況を良くするのに活用していくことができればと強く思います。
(スライドとともに)