1963年生まれ。’86年に株式会社コンピュータネットワークへ入社。’90年株式会社クリエートコンピュータシステムへ入社し,’94年同社,取締役統括部長就任。その後’96年同社代表取締役就任。2019年公益社団法人ゴルフ緑化促進会,理事就任。
日本国内の営業中のゴルフ場数は,ピーク時の2004年に2,453だったのが,’25年には2,102となり,20年間で約14%減少しました。ゴルフ場の数だけを見ると,衰退産業のようですが,年間平均活動数,本コースのラウンド数や練習場の利用回数は決して下がっていません。業界の構造変化が進行中だと私は考えています。
世界的にもゴルフ場業界が衰退しているわけではありません。とはいえ,日本のゴルフ人口は1994年の約1,450万人をピークに減少し,2024年には480万人となり,30年間で約1,000万人減りました。日本の人口が減っているので,ある意味当然ですが,ゴルフ人口が減り,ゴルフ場の数も減っているので,ゴルフ場が淘汰されているのは間違いありません。一方,世界のゴルフ人口は年々増えています。ゴルフ場が最も多いのはアメリカで約1万6,000コース,世界の42%です。次いで日本とイギリスがほぼ同数で,約2,100コース。日本は世界で2番目にゴルフ場が多いゴルフ大国なのです。
日本のゴルフ人口減少が予想される中で,ゴルフ場の客単価はどうなっているか。ゴルフ場と東京ディズニーランドを比較すると,バブル期の1983年ごろは,ゴルフ場の客単価は平日でも平均3万円ぐらい,ディズニーランドは約9千円でした。ところが2010年に同額の約1万円になり,そこから逆転して徐々に差が開き,’24年はゴルフ場が約1万円,ディズニーランドが約1万7千円となっています。ゴルフ市場がバブル崩壊後のサバイバル時代に低価格でシェアを拡大しようとした動向が続いた結果の逆転と言えます。
ゴルフ場の客単価の特徴として,近年は平日と土日祝の価格差が小さくなる傾向があります。引退した団塊世代の平日利用が多くなったため,平日と土日祝を同じような金額にするゴルフ場が多くなっているのです。
次に,ゴルフ場の市場規模の推移を見てみましょう。1992年の約2兆円超をピークに,バブル崩壊後は下落を続け,2008年のリーマンショックや’11年の東日本大震災もあり,半分以下の市場規模になりました。それでもゴルフ場業界が何とか利益を維持できたのは,プレー費用の低価格化と,それに伴うプレー回数の増加があったからです。
コロナ禍の2020年から’23年は,屋外スポーツで,他のプレイヤーと接触しないゴルフの参加率が急に高くなり,「コロナ特需」とも言われました。’24年度の市場規模は,推計で8,100億円超とされています。
ゴルフ熱が最も高い団塊の世代が’25年に75歳以上の後期高齢者になり,市場が急激に縮小すると予測する「2025年問題」については,実際に起きる可能性は高くないとの説もあります。実は,団塊の世代が65歳になって一斉にゴルフをリタイアするという「2015年問題」が10年前にも取り沙汰されました。しかし,医療の発達や健康志向の高まりで,予測に反してゴルフを続ける人が多く,高齢者の平日の来場が増えた結果,大した変化はなかったのです。団塊の世代の大半は,まだまだ元気で,今後も急激にゴルファーが減ることはないだろうと専門家は見ています。
ゴルフ参加人口はコロナ禍を機に急増し,現在も維持しています。’22年の調査では,新規参入者が約38万人,休眠復活組が約43万人と推計され,特に20代,30代の若い女性の増加が市場をけん引しています。日本の女性ゴルフ人口は,2000年代の減少傾向から一転して,コロナ禍を機に若年層を中心に増加傾向にあり,’24年は159万人となっています。近年はコース,練習場ともに女性比率が2割を超えており,20代から50代の女性ゴルファーが市場を変える新たな層として注目されています。これは単なるブームではなく,ライフスタイルや価値観の変化が大きく影響しています。主な要因として,①三密回避から日常レジャーへの昇華②SNSによる可視化とファッション化③インフルエンサーの発信が若い女性の参入障壁を下げたこと④緑豊かなコースと華やかなウェアがSNSとの相性が良く,自己表現の場になっていること―などが挙げられます。
ゴルフ場のオンライン予約は,利便性の向上,情報の一元化,ゴルフ場側のDX推進の観点から一般化してきています。顧客データの活用も進化し,単なる名簿管理だったシステムが,パーソナライズされた体験の提供とリピート率の向上にシフトしており,データ駆動型のマーケティングで顧客一人一人に適したサービスを提供することで,効率的に売上を最大化することが可能になってきました。フロントでのAI顔認証のチェックインやQRコードを利用した自動精算機の導入により,運営コストを大幅に削減しています。ただ,ここで大切なのは,むやみにIT化,DX化するのではなく,ゴルフ場の価値観とプライオリティ,コストパフォーマンスを多角的に検討して,必要なものだけを導入することです。
ゴルフ場業界を取り巻く外部環境を踏まえ,「場所を貸す産業」から「社会変化に適応する体験価値提供型産業」へと変わっていく必要があると考えています。余暇の過ごし方が多様化する中で,ゴルフは1日かけて楽しむものから,短時間,低価格で楽しむスタイルへシフトする必要があります。ゴルフ場は「二極化」の色が濃くなってくると言われています。歴史と伝統を大切にして独特の雰囲気とステータスを維持する高級路線と,若者や女性,初心者層を取り込んでゴルフをレジャーとして楽しむ低価格路線です。どういう層をターゲットにするのかが,ゴルフ場経営者にはますます大事になってくるわけです。
少子高齢化によるゴルフ人口減少が懸念される中,ジュニアの育成は,業界の持続可能性を確保し,次世代へ継承するために不可欠です。団塊の世代以降の高齢化に伴う市場規模縮小に対応して,女性や初心者,若年層向けの施策を打つことで,新たな顧客層を取り込むことが不可欠と言えます。
(スライド・動画とともに)