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2025年12月5日(金)第4,987回 例会

サーキュラーエコノミーの潮流と経営ビジネスで社会課題を解決する

文    美 月 氏

株式会社ロスゼロ
代表取締役
文    美 月 

連続起業家。金融機関総合職を経て,結婚・出産を経験し,2001年に起業。
EC業界,リユース業界で経験を積み,’10年からリユースを通じて途上国の若者の職業支援を行う。「捨てずにつなぐ」仕組みを食品ロスに応用し,’18年に二社目「ロスゼロ」を創業。
環境省・復興庁などから多数の受賞歴を持つ。大阪大学大学院国際公共政策研究科招へい教員,豊中市経営改革委員を務めるほか,経済産業省・女性起業家支援PJTメンターとしても活動。

 今日は,ものを捨てずに使って,次に循環させるサーキュラーエコノミー(循環経済)と,現在,私が関わっている食品ロスを減らす取り組みについてお話しします。
 私は結婚前は大手金融機関の融資部で総合職として働いていました。2人の子どもを産んだ後,再就職したかったのですが,小さな子どもがいることで,どこにも採用されませんでした。世の中に不満を言うぐらいならば,自分が社長になってお母さんたちをもっと雇うことを誓い,2001年,31歳のときにヘアアクセサリーの会社を起業しました。ちょうどインターネットで売買する人が出始めた頃でした。自宅で起業して,時間は掛かりましたが,自分で売上を上げることができたのは,しびれるような経験でした。素人からのスタートでしたが,ネットビジネスはヒット商品をどうやって作るか真摯に向き合えば,お客様がヒントをくれるので,実践,改善を繰り返しながら売上を伸ばしていきました。
 ’01年当時,1.4兆円だったeコマース(電子商取引)の市場は,’24年には約26兆円まで成長しているので,「先見の明があったのですね」と言われますが,そうではなくて,子どもがいるお母さんが家で働けるのはeコマースしかなかったのです。朝3時に起きて,友人に会わず,遊びに行かず,化粧もしない生活を5年間徹底しました。

感謝と恩返し

 未経験だったため,マネジメントが分からず,子育てとの両立も大変でした。あるトラブルがきっかけで心が疲れてしまい,家から出られず,売上も把握できない時期がありましたが,家族,友人,スタッフが支えてくれました。派手に売上を伸ばし,派手にこけて,売上が10分の1以下になり,すごくショックでしたが,経営者の友人が「人生は『成功か失敗』ではなく,『成功か学び』だ」と励ましてくれました。あまり理念がないまま起業していたので,もう一度,1からやろうとしたときに「もっと社会に感謝しなければ」と思い,自分たちの会社が社会に何を返せるかを考えました。それが「感謝と恩返し」の理念です。

ヘアアクセを回収,寄贈

 2009~’10年ごろ,売上の一部をガーナの子どもたちに寄付するチョコレート会社が出てきたり,ビールのラベルに「売上の一部は琵琶湖の浄化に使われています」と書かれていたり,社会の流れが変わってきたのを感じました。自分たちが社会に返せるものは何かを考え,まずはヘアアクセサリーのパッキングや台紙折りの仕事を東大阪の福祉作業所にお願いしました。その後,自分たちらしい社会貢献として,ヘアアクセサリーを回収して途上国に寄贈する「Little ECOプロジェクト」を始めました。お客様が使わなくなったヘアアクセサリーを回収して,ラオスやカンボジアなどに持って行くと,すごく喜んでくれました。可愛くなることについて,女性のテンションが上がるのは世界共通だなと思いました。誰かにとっては不要なものでも,有効活用できれば,まだまだ価値があることに気づきました。
 次に「継続できる仕組みづくり」を考えました。使わないヘアアクセサリーを送っていただいた方にクーポンを発行することで,たくさんの方が新規顧客となり,次の売上につながっていくサステナブルなやり方,ボランティアではなく,売上につなげる社会課題解決の仕組みを作りました。
 その後,アフガニスタン,インド,ベトナムなどにも送るようになると,上から目線でモノをあげることに疑問を抱きました。そこで,カンボジアで職業訓練プログラムの費用を支援するため,NGOのイベントで若者とヘアアクセサリーを販売して,売上を寄付する方法を始めました。4万点ぐらいが10ヵ国に行くようになりました。’14年当時はまだSDGsという言葉はありませんでしたが,自然とできていた気がします。

食品ロス削減で2回目の起業

 食品ロス削減に取り組むため,’18年に「ロスゼロ」を起業しました。もったいないものを活かす,環境負担を減らす,ビジネスとして行うという考え方は同じです。
 テストマーケティングとして,「カンボジア支援と食品ロスの削減」という2つの社会課題解決のクラウドファンディングをしました。友人の社長が提供してくれた規格外の高級チョコレートを,参加者へのリターンとすることで,食品ロスを減らしつつ,カンボジア支援の資金を集め,現地にトイレを作りました。
 当時は社会課題解決のビジネスが注目され始め,従来の売り上げ至上主義,大量生産,大量消費,大量廃棄は変わると思いました。
 食品ロスは,廃棄による焼却,埋め立てで温室効果ガスが出るので,もったいないだけでなく,環境問題も絡みます。さらに日本は相対的貧困問題があり,食の支援が必要な人もいる,とてもアンバランスな国なのです。
 ロスゼロが取り組んでいる「アップサイクル」は,単なるリサイクルとは違い,新たな価値を付けて生まれ変わらせることです。被災地・気仙沼の農家の形が悪いイチゴと神戸の使っていないチョコレートをかけ合わせて新しい商品を作り,ふるさと納税の返礼品にしたのが代表例です。農家の収入アップで被災地を支援し,地域創生につなげ,復興庁から賞をいただきました。
 食品メーカーなどバリューチェーンの中で販路を失った食品をロスゼロが購入し,家庭や企業に届けるサブスクリプションもやっています。食品ロスは,いつ,何が,どれだけ出るか分からず,ロスが集まり次第,お客様に送るため「不定期便」と呼んでおり,福袋のような感じで,喜んでいただいています。販路を失った食品の連絡を食品事業者からもらうと,最短で翌日に出荷する物流コントロールと独自のeコマースで,月に5~7トンのCO2削減につなげています。百貨店などで販売する際には,売上に応じて食品ロスが減るとCO2も減ることをディスプレイにリアルタイムで表示し,可視化しています。最近は大手企業との協業,自治体との連携がかなり増えています。
(スライドとともに)