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2024年9月6日(金)第4,935回 例会

日本から見た世界,世界から見た日本

磯 貝  富 夫 氏

関西日印文化協会
副会長
磯 貝  富 夫 

1956年生まれ。大卒後シャープ(株)で37年間海外事業に従事。サウジアラビア,UAE ,米国,メキシコ,インドに延べ29年間駐在。退職後は独立して日印関係の架け橋として,ビジネスマッチング,学術提携,人材誘致,文化交流などの活動に従事。関西日印文化協会(神戸市)の副会長,横浜市のインドセンターの参与を務める。日印での講演などの登壇回数は350回を超える。

 私は40年間,海外事業をやっており,世界60カ国以上を訪問しました。私が最初に5年半駐在したサウジアラビアは異文化そのものでした。その後,アメリカ,メキシコ,アラブ首長国,アフリカなどから多くを学びました。今は日本とインドを橋渡しする役割だと自負しております。

異文化理解に役立つ六つの行動指針

 世界地図では日本は極東,地球の端っこにあるほんの小さな存在です。その日本人が異文化を理解するための「六つの行動指針」を紹介します。
 一つ目は「その国に溶け込め」。どこに行っても日本人だけで固まってしまう姿をよく目にしますが,しっかり現地の人とおつき合いをすることから始めていただきたい。
 二つ目は「その国の歴史と文化を知れ」。史跡観光にぜひ行ってください。歴史文化を知ることで理解が深まり,信頼関係ができます。
 三つ目は「マナーを心得よ」。マナーの一つは宗教です。日本人は世界中でどの国よりも宗教に疎いです。
 四つ目は「生活スタイルを知れ」。国の代表として派遣されると,上から目線でマーケットを見てしまいます。地場の市場を正しく把握するためにはローカル目線で見てください。
 五つ目は「現地の人より市場を知れ」。人任せでなく自身の目で見ていただきたい。
 六つ目は「日本を知れ」。日本のことを学んでいってください。私の住むインドの町には日本人がいないので,日本のことをたくさん聞かれます。
 これらのうちでも,特に宗教は侮ってはいけません。アメリカの100ドル札には宗教にまつわるメッセージが書かれています。”In God We Trust”。アメリカは,れっきとしたキリスト教の国です。また米国大統領の就任の儀式では聖書に手を置いて宣誓をします。
 一方,NHKの昔のアンケートでは3割ぐらいの日本人が「何も信じていない」と答えています。初詣に神社や仏閣へのお参り,七五三のお祝い,お盆にお祭り。日本人も決して無宗教ではないのですが,海外で自分は無宗教だと答えると「どうもこの人は信頼できない」と思われますので気をつけましょう。

インドは世界の変わる枠組みの中にいる

 去年,リシ・スナクさんがイギリス史上初めて,白人でもなければキリスト教徒でもないインド系のヒンドゥー教の人として首相になりました。私から見たら,びっくりする大事件でした。G20は世界の経済(GDP)の8割をカバーしていますが,G7はもう5割を切っています。これからの時代はG20の時代になってくる。新しいBRICSには今年,7カ国が増えました。IPEF(インド太平洋経済枠組み)には14カ国が参加しております。QUADにもインドが絡んでいます。2025年以降,大きく世界の枠組みが変わってきます。
 インドの特徴は,いろんな民族がいることです。白人っぽい人,褐色の人,日本人と変わらないモンゴロイド人種もいます。たくさんの言語,たくさんの宗教があるのです。私はインド西部のマハーラーシュトラ州のプネーにいますが,この州だけで,日本の面積も人口も全部入ります。「インドを理解すれば世界がわかる」ということです。
 日本経済新聞が4月に「インドのGDP,来年,日本を抜く」と書いています。インドは年率7〜8%の成長を続けています。インドが日本を抜く日はもう近いということです。
 人口ピラミッドの形でいうとインドはタージ・マハルの頭のようで,日本は東京スカイツリーのようです。日本の若年人口の減少は高齢化社会を支えきれなくなるので,インドのあり余る高学歴若年層に頼るしかありません。
 昨年1月に週刊エコノミストが特集「これから跳ねる!インド経済」を出しました。その後,日経ビジネスが4月に特集,7月,8月に日本経済新聞がインドの大きな記事を書きました。8月に日経ビジネス,11月と今年7月に週刊エコノミストが,9月には週刊東洋経済がインドの特集を組みました。

世界をぐるぐる巡った私からみた日本

 私が日本を見直した時に言えることは,世界最古の独立国家というのが一つ目。橿原神宮には紀元2684年とありました。二つ目,四季折々の温暖な気候と食文化が多様であること。でも自然災害も多い。三つ目,日本人は皆,平等感がある。階級意識もない。信教も自由,宗教にも縛られない。四つ目,ルールは守る。時間も守る。公序良俗という言葉は世界でほとんど聞きません。日本人の礼儀正しさと和の精神のもとを問われたら,私は聖徳太子の「十七条憲法」と答えます。私は,日本に生まれたことが人生最高の幸運と心から思っています。でも自分の国は自分で守る愛国心が足りないのは不安です。
 私がなぜインドだと言うのか。まとめると人口,優秀な人材,同盟のよい関係,仏教の関係。一見正反対に見えるが,補完し合える。ビジネスは大変難しいけれども,友人関係になったらこれほど頼れる人はいない。これが私の肌感覚です。
 日本の問題点の一つは報道の自由度が世界68位ということ。日本の報道はあんまりあてにしてはいけません。
 最後に「アラブの5A」をご紹介します。「あせらず,あてにせず,あなどらず,あたまにきても,あきらめず」。どんなことがあってもあきらめないという,アラブの世界に生きる処世訓は世界でも通用します。
 「一般社団法人関西日印協会」が今年中に設立されます。東京では明治36年に渋沢栄一さんが「日印協会」を作り,今は菅元首相が会長です。この協会を立ち上げようとされている第一人者が更家会員です。
 日本の将来はインドしかない!,もっと広げ深めよう日印の絆!ということで話は終わります。
(スライドとともに)