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2024年1月12日(金)第4,906回 例会

ニュー イヤー コンサート ~オペラ『カルメン』より名曲集~

カルメン(メゾソプラノ)
十合 翔子
ドン・ホセ(テノール)
小餅谷哲男
ミカエラ(ソプラノ)
奥田 敏子
エスカミリョ( バリトン)
谷本 尚隆
ピアノ
前川 裕介
解 説
米田 哲二 君(音楽)

 本日は,19世紀のフランスの作曲家,36歳という若さで夭逝したジョルジュ・ビゼーの「カルメン」の5曲をご紹介いたします。カルメンの音楽は非常に抒情的なオペラです。
 このカルメンの原作は,プロスペル・メリメの「カルメン」ですが,ジョルジュ・ビゼーが作った音楽により世界で最も有名なオペラになりました。日本でも1917年から23年,ちょうど大正時代ですけれども,まさに浅草オペラ全盛の時代であり,「カルメン」が特に人気を博しました。
 物語の舞台はスペインのアンダルシア地方のセビリアです。ジプシー生まれのカルメンは,歌手・踊り子,タバコ工場の女工でもあり,自由奔放な女性でした。魔性を秘めた美しく魅力的な彼女は多くの男性に囲まれていました。そのカルメンに恋をしてしまう,素直で無垢な青年として,セビリアの町に駐屯する兵隊の伍長・ドン・ホセが登場します。
 ホセにとって都会の女性は怖い存在でしたが,2人きりになった時にカルメンが誘惑し,ホセは負けてしまいます。カルメンもしばらくはホセを愛しますが,次第に気持ちが離れていきます。ホセは彼女に復縁を迫りますが,拒絶され,遂には彼女を殺めてしまうというお話です。
 ジプシーは社会的主流から外れた下層階級を指す言葉です。カルメンは下層階級でありながら美貌あふれる女性として生まれ,多くの男性から求愛されますが真実の愛がないと感じています。真実の愛を求める一方で,自由奔放な生き方を望むがゆえに,悲劇的な運命に突き進んでいきます。
 今日の5曲ですが,1曲目は,「ハバネラ」。「ハバネラ」とはリズムのことです。カルメンの自由奔放な生き方をハバネラのリズムで「恋は自由 恋は自由 誰にもしばられない 恋はジプシーの生まれ 私のことを好きにならなくても 私が好きになってあげる しかし私からあなたを好きになったら あなたは大変な目に遭って怖いですよ」と歌っています。


ーー♪「ハバネラ」
カルメン 十合 翔子氏

 この歌で,ドン・ホセはまだカルメンを無視しています。逆にカルメンは花を投げつけます。
 2曲目は,「ドン・ホセとミカエラの二重唱」。ドン・ホセの幼馴染のミカエラ,このミカエラという女性は孤児で,ホセの母親に引き取られて,ホセと兄妹のように育てられた純情な娘です。ミカエラは,ホセの母親から「息子が今セビリアにいるので,私の思いを伝えてほしい」という母親の手紙を持って田舎からやってきます。


ーー♪「ドン・ホセとミカエラの二重唱」
ドン・ホセ 小餅谷哲男氏
ミカエラ 奥田 敏子氏

 3曲目は,「セギディーリャと二重唱」ですけれども,セギディーリャというのはスペインの舞踊の音楽で3拍子のリズムです。今,ホセとミカエラ,純愛の二重唱をしましたが,この二重唱でカルメンがホセを誘惑します。カルメンはタバコ工場の女工と喧嘩して逮捕されます。ホセは連行するように指示されますがカルメンは,縄を解いてくれれば恋人にしてあげる,と誘惑し,最後は縄を解いて放免してしまいます。

ーー♪「セギディーリャと二重唱」
カルメン 十合 翔子氏
ドン・ホセ 小餅谷哲男氏

 4曲目は,「闘牛士の歌」です。大衆であふれた闘牛場,そして,見物人がどよめき,猛り狂った牛の様子を歌っているのが「闘牛士の歌」です。

ーー♪「闘牛士の歌」
エスカミリョ 谷本 尚隆氏

 2ヵ月後,カルメンを放免して牢獄に入ったホセは彼女に会いにいきます。兵隊なので兵舎に帰らなければならないのですが,カルメンは「本当に私を愛しているなら,軍隊など気にせずここにいるはずでしょう。私があなたに夢中になっているのがわかる?帰りたければ帰りなさい。もうあなたのことなんか信じられない」と冷たく言い放ちます。牢獄に入ったホセは,カルメンへの愛を切々と歌います。非常にロマンティックな歌ですが,「君が僕に投げつけた花,この花を僕は手放さなかった。しぼんで干からびても甘い匂いは変わらなかった。牢獄での長い期間その匂いに酔いしれながら君を想い,僕の希望はただ一つ君に再び会うこと。僕のカルメン,君を心から愛している」という情熱的な歌です。

ーー♪「花の歌」
ドン・ホセ 小餅谷哲男氏

出演者プロフィール
十合 翔子氏(そごう しょうこ):カルメン

神戸女学院大学音楽学部卒業。在学時クラブファンタジー海外研修助成金拝受。新国立劇場オペラ研修所第19期生修了。ANAスカラシップによりミラノ・スカラ座アカデミー,バイエルン州立歌劇場研修所で研修を実施。

小餅谷哲男氏(こもちや てつお):ドン・ホセ

大阪音楽大学音楽学部声楽科首席卒業,同大学院オペラ研究室修了。関西二期会副理事長及び研修所所長,桃山学院教育大学教授,大阪音楽大学非常勤講師。

奥田 敏子氏(おくだ さとこ):ミカエラ

神戸女学院大学音楽学部声楽専攻卒業,同大学院音楽研究科修了。関西二期会正会員。奈良県音楽芸術協会会員。神戸女学院大学元非常勤講師。ヒューマンアカデミー神戸三宮校講師。児童劇団FLAP TRIP歌唱指導。

谷本 尚隆氏(たにもと なおたか):エスカミリョ

愛知県立芸術大学音楽学部音楽科声楽専攻卒業,同大学院博士前期過程修了。学部卒業後ミラノへ留学し,Roberto Covielloに師事。神戸市混声合唱団員。関西二期会準会員。

前川 裕介氏(まえかわ ゆうすけ):(ピアノ演奏)

大阪音楽大学卒業,同大学院修了。在学時に,ザ・カレッジ・オペラハウス管弦楽団と協演。大阪音楽大学短期大学部ミュージカル・コース非常勤助手。神戸市混声合唱団ピアニスト。宝塚音楽学校講師。