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2023年12月8日(金)第4,903回 例会

夢見る未来社会 ~NTTが取り組む2025大阪・関西万博~

工 藤  晶 子 氏

日本電信電話株式会社 取締役 執行役員
研究開発マーケティング本部
アライアンス部門長
工 藤  晶 子 

1990年日本電信電話(株)入社。2014年NTTコミュニケーションズ(株)経営企画部広報室長。’16年同社 東海支店長,’19年第五営業本部長を経て,’20年日本電信電話(株)執行役員 広報室長。その後,’22年取締役 執行役員 新ビジネス推進室長,’23年6月より現職。

 日本電信電話株式会社の工藤です。2025年大阪・関西万博のお話をさせていただきます。JR大阪駅のビルに,万博の広告があり,盛り上がっているなと実感しました。東京も大阪に負けずに盛り上がっていきたいと思います。本日は,万博でお披露目を検討している内容の一端について解説したいと思います。

物理的なものを超えてつながる世界に

 昭和の時代の「黒電話」から発展し,1970年の大阪万博で私たちは「電気通信館」の中で「コードレス電話」を発表しました。今度の万博でも新しい未来の姿をお見せしたいと思っています。
 昭和から平成に移り変わる中で,公衆電話,ポケベル,ショルダーホンなどが開発され一気にコミュニケーションの多様化が始まりました。ビジネスシーンで広がった「ポケベル」ですが,当時はまだ数字で思いを伝えていました。電話も持ち運ぶ時代になったバブルの時代。まずは「ショルダーホン」ですね。次が,「携帯電話」。折りたたみの「ガラケー」と続き,現在のスマートフォンということで,時代の変化とともに端末も変わり,伝える情報も音から映像,そしてSNSと変わっていきました。
 NTTは万博で,「距離という物理的なもの,離れているという心理的な壁を越えて,空間や感覚を共有できる世界」を実現させたいと思っています。NTTが2030年に社会実装を目指している「IOWN(アイオン)」という技術を用いて空間・感覚を共有する体験をしてもらうことで,新しい通信の可能性を示したいと思っています。パビリオンでは,離れた場所に3次元データやセンサーデータをリアルタイムに転送し,再現します。IOWNの超大容量,超低遅延でしか実現しない体験です。訪れた観客たちは3Dスキャンされ,会場内のシアターに誘導されます。そこではパフォーマーたちが踊っていますが,その姿もリアルタイムでスキャンされており,カメラで投影されます。一方で,空間内の3D表示装置の中にも,人のシルエットが現れ,踊り出します。遠く離れた場所や時間にいるパフォーマーの姿も投影され,異なる時空を生きるパフォーマーたちが,息の合ったパフォーマンスを披露します。あたかも遠くにいる人たちが同じ空間にいるように感じることができます。

通信の未来・可能性を示す機会に

 続いて,未来社会の縁の下で支えるIOWNについて,ご紹介します。
 ここ数年でインターネットの中の情報量は莫大に増えております。また,情報量が莫大に増えるに従い,消費電力も拡大の一途をたどっています。
 そんな現状を打破するのがIOWNの技術です。IOWNはInnovative Optical and Wireless Networkの略ですが,先ほどお話ししたようなデータ量や消費電力の増大といった問題を解決するために,これまでのインフラをはるかに超える現状打破のテクノロジーをつくり出そうということで,現在開発を続けています。
 IOWNが目指しているのは,データ処理の主役を「電気から光に変える」というものです。大容量,低遅延,低消費電力という,新たな性能へとジャンプアップすることを目指しています。例えばYouTubeで動画を見るときPCやスマホにデータが届くまでにネットワークは光になっていても,データは電気で処理をされています。光⇒電気⇒光⇒電気と処理を繰り返す中で電気の消費量も増えますし,遅延も起こります。この一連の処理をすべて光に変えていこうというのが,私どものチャレンジです。
 このチャレンジの実現に際して,転機になったのが,2019年に発表した世界最小の消費エネルギーで動作する光変調器と光トランジスタの実現です。光による信号処理技術をプロセッサチップの中に導入することが可能になりました。超低消費電力エネルギーで高速なコンピューティング基盤の実現に向けて大きく前進しました。この技術を応用して光と電気を融合した「光電融合デバイス」を開発しまして,コンピューターやネットワーク機器に組み込んでいくことを始めています。具体的には,2030年には電力効率を100倍,伝送容量を125倍,エンドツーエンドの遅延を200分の1にしていこうとしています。
 続きまして,NTTパビリオンについてご説明します。
 体験では離れた場所の感覚や感情を届けたいと考えていますが,建築においても感情をまとう建築をコンセプトにワクワクするパビリオンをつくっていきたいと考えています。
 1つ目のコンセプトは,生きているパビリオンです。時間や季節の移ろいとともに,パビリオンの表情が変わる仕掛けですとか,パビリオンを覆う布が来場者の喜びや笑顔で動き出すといったようなことも考えています。
 2つ目は,一緒につくるパビリオンです。2025年に向けて子ども達とパビリオンを覆う布を一緒につくっていけないかということを考えています。
 3つ目は,建築構造そのものです。この建築は,一言で言いますとテントです。ワイヤーで引っ張って布で覆うことで,会期終了後になるべく無駄を出さないことで,循環するパビリオンとして鋼材料を減らしていこうとしています。
 NTTが取り組む万博の全体像ですが,IOWNを万博の会場全体に設置する以外に,来訪者の疲労度や見たいものに応じた最適ルートをAIが導き出してくれるアプリの開発・提供や,バーチャルパビリオンの基盤提供も予定しています。
 万博まで500日を切りました。テレコミュニケーション(Telecommunication)の,その先へ。夢見る未来社会のお披露目はすぐそこです。
(スライド・動画とともに)