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2023年10月20日(金)第4,898回 例会

アドベンチャートラベル(AT)について~これからの富裕層に満足していただく旅について~

安 藤    誠 氏

北海道知事認定アウトドアマスターガイド
ウィルダネスロッジ・ヒッコリーウィンドオーナー
写真家
安 藤    誠 

1964年札幌市生まれ。東北福祉大学卒業後,予備校講師などをしながら’99年ウィルダネスロッジ・ヒッコリーウィンド開業。2004年よりアラスカにてガイド開始。’06年から「安藤誠の世界」と題した講演活動を開始。写真家としても『Nature’s Best Photography Asia』での部門グランプリなど多数受賞。プロガイド養成や人材育成に注力し,’21年よりオンライン私塾「至誠塾~Life as Guide~」を運営。

 私は本日,北海道からオートバイで来ました。ですので,スーツ姿ではありません。なぜオートバイで来たのか。その理由は,口先だけじゃなくてリアリティというものを大事にしたいからなのです。「昔やっていたんだよ」という話ではないのです。オートバイは19歳からずっと乗り続けています。それが「仕事が忙しいのでバイクに乗れない」という言いわけをしないため,仕事もバイクでやる。そういうポリシーがあるのです。

何かと何かをつなぐガイド業

 2015年,「がんばる中小企業・小規模事業者300社」にヒッコリー・ウィンドが選ばれました。いよいよ日本にも観光ビジネスとしてのアウトドアが,ということだったのですが,皆さん,「ガイド」というと何を思い浮かべるでしょうか。バスガイドやネイチャーガイドかもしれません。しかし,私はガイド業というのは,何かを伝えたり,教えたりといっただけの仕事ではないと考えています。ガイドは何かと何かをつなぐ職業なのです。英語で表現すると「インタープリテーション」。「インター」は「何かと何か」,「プリ」は「糊」という意味です。
 アドベンチャーツーリズムは,例えばこういうことです。これまでは1人あたり1万円で100人の旅行があって「お安くなっていますよ」というものだったものが,10人で100万円稼ぐ旅行とするのです。「お高くなっていますよ」なのですが,「中身はそれ以上ですよ」ということです。
 アドベンチャーと聞くと,若い人のものだと思うかもしれません。しかし,一般的にお金を持っている人は20代や30代では,それほど多くありません。また,40代,50代,もっと言ってしまえば60代,70代といった人生のいろいろな修羅場をくぐり,たくさんの苦労をされた人たちが,「最後は本物に触れたい」と思うものなのです。そして,自分の人生を振り返って「やっぱりいい人生だった」と思うのです。また,「自分の孫や子供たちにももっと素敵な未来を」と思うような場合もあります。こうした人たちが,旅行を通じて自己変革したり,トランスフォームしたりするのがアドベンチャーの趣旨なのです。

仕事も人の信頼がつなぐ

 皆さん,「北海道」の意味をご存知でしょうか?実は,北海道の「カイ」はもともと「海」ではなく「加伊」だったのです。アイヌ語で「加伊」というのは,この地で生まれた人という意味です。
 あまり知られていないと思いますが,松浦武四郎という人が考案しました。松浦は約150年前に北海道を6回探検し,アイヌ民族のガイドで成功した人なのですが,江戸時代の末期に至り,腐り切った世の中にこんなに純粋な人たちが暮らしている場所があったのか,と感じたのが蝦夷地だったのです。
 僕は16年間,アラスカでガイドをやりましたが,なぜアラスカでガイドするのかと言われたら,北海道の150年前が今もアラスカに残っているからです。何が言いたいかというと,北海道というのは自然が豊かで,ということは,そこに暮らしている人間も豊かな人たちだということです。
 ここで本邦初公開の動画を用意しました。北海道の冬をテーマにしたものです。ご覧ください。
 (動画上映)「北海道の冬の自然」
 僕は写真を撮りますが,動画のビデオグラファーでもあります。この動画で北海道の冬の魅力が伝われば,と思います。僕は,仕事をしていくのは「人」だと思っています。日本航空(JAL)の方と会ったときに「仕事をする」というスイッチが入りました。そして,JALの役員方が10人ぐらいで北海道阿寒郡にある鶴居村に来られ,3泊4日の合宿をしました。
 そのときに「JALはアドベンチャートラベルに取り組んでいきたい」という話がありました。そして,JALの方との縁を通じて,今回ロータリーに呼んでいただきました。人との信頼がつながって,いま,僕がここにいるのです。ネクタイを締めないでオートバイで来る人が,この場所で,今日ここに立っていられることが,非常にうれしいのです。

若い世代に,実際にやって見せる

 ここで1曲披露しようと思います。ビートルズをリスペクトしてアレンジした曲です。
 (ギター演奏)「ノルウエーの森」
 きょうギターを弾いたのは芸を自慢したいからではないのです。バイクでここに来たことと同じなのですが,リアリティをとても大事にしているということなのです。実際にやって見せる,やり続けるということを若い連中に,ちゃんと伝えたいのです。
 JALと一緒にアドベンチャーツーリズムのサンプル商品を開発し,夏と冬で計12回行いました。参加した人全員がアンケートで「満足」「大満足」と答えてくれました。その舞台が鶴居村なのです。鶴居村は,人口2,500人ですが年間予算が60億円規模です。チーズ作りも盛んで,最近はビールもワインも作り始めています。
 アドベンチャーツーリズムについて,お高めだけど中身は最高のものにする,と言いました。最高のものにする要素が,地域と伝統や歴史をつなぐこと,そして,そこにいる人をつなぐことなのです。地元にお金が落ちるだけではなく,誇り,プライドを持てることが大事です。「私たちの村はこんなに素敵なんだ。こんなに喜んでくれるんだ」というプライドを持ってもらう。今まではこれが欠如していたのです。
 総括として,僕のガイドのテーマにもなっている動画をご覧いただき,締めたいと思います。ありがとうございました。
(スライド・動画とともに)