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2023年9月8日(金)第4,892回 例会

インバウンドは新しい人口(消費者)~25年万博を越えてさらに関西振興の起爆剤になる理由~

加 藤  史 子 氏

WAmazing株式会社
代表取締役 CEO
加 藤  史 子 

慶應義塾大学環境情報学部卒業後,(株)リクルートにてインターネットでの新規事業立ち上げに携わった後,観光産業と地域活性のR&D部門じゃらんリサーチセンターに異動。主席研究員として調査研究・事業開発に携わる。2016年7月,訪日外国人旅行者による消費を地方にもいきわたらせ,地域の活性化に資するプラットフォームを立ち上げるべくWAmazing株式会社を創業。

 WAmazingは訪日外国人旅行者を対象とした事業をしています。ITの会社だからどこでも働ける,ということで,約250名の従業員が,北海道から沖縄まで,自宅やその他の場所でリモートワークをしております。私はインバウンドの方々を「新しい消費者」と捉えており,これから西日本や関西エリアにも大きな影響を与えていくのではないかと思っています。

裾野の広いインバウンド市場

 2016年,政府は「明日の日本を支える観光ビジョン」を策定しました。省庁一丸となってオールジャパンで達成していこうということで,5つの目標がありますが,そのうち4つがインバウンドに関するものです。この中で挙げられているのが,’30年に訪日外国人旅行者数6,000万人,その消費額15兆円という目標です。
 ’19年の訪日外国人旅行者1人当たりの日本国内での旅行支出は15.9万円でした。内訳は宿泊費,飲食費,交通費,娯楽等サービス費,買物代などです。
 買物代にはお酒や医薬品,食料品,伝統工芸品など色々なものが含まれていて,国内生活者のような消費が行われています。非常に幅広い,裾野の広い市場です。
 一方,日本人や日本に住んでいる人の一人当たりの年間消費額は平均130万円です。ということは,外国人旅行者が8人来ると日本人1人の年間消費を賄えるということです。
 これから日本の総人口はかなりのスピードで減っていき,高齢化率は高まります。ただ,個人的には人数の減少自体はそれほど問題ではないと考えています。というのは,先進国でも人口1億人以下のところも多いからです。
 一方,高齢化率が高まってくると「労働力」と「消費力」が失われます。このうち「消費力」ですが,やはり人は若いころはいろいろな欲がありますし,例えば子供が小さければ教育費もかかります。これがやがて,子供も育ち,夫婦2人だったらコンパクトな家に引っ越そうなど,だんだんと消費の元になる必要性や欲求が減り,消費が減っていきます。
 労働力はAIやDXなどで補えるチャンスがありますが,ロボットは食事したり,映画を見に行ったりはしません。ですので,消費の下支えは,いまは訪日外国人旅行者しかありません。消費が細ると,いくら生産して労働しても意味がないわけです。

インバウンドで外貨獲得

 ’19年時点で訪日外国人旅行者の消費額は4.8兆円でした。プラスチックや鉄鋼,自動車部品などの輸出額より多額です。モノをつくって輸出するのも,外国人がユーロやドル,人民元やウォンを日本で使うのも,同じ外貨獲得産業という考え方ができます。
 「’30年に6,000万人,15兆円」が達成されると,外国人旅行者1人当たり25万円を1回の旅行で使う計算になります。外国人旅行者5人で日本人(定住者)1人の年間消費を賄うということです。
 そうすると,この方々を単純に旅行者と捉えるよりも,皆様のビジネスにどこかでつながってくる「5分の1の生活者」「5分の1の日本人」と考えたほうがいいのではないでしょうか。
 100%内需の企業の場合,6年後にはそのうち20%が外国人旅行者による消費になっていてもおかしくない。反対に言えば,インバウンドに対応しないと,6年後には売上が20%減っていてもおかしくない。そういう考え方もできるのではないでしょうか。
 日本には’19年,3,188万人の外国人が来ました。’03年の6倍以上です。世界全体で見ても旅行者は一貫して伸び続けています。しかし,コロナがありました。どこまで旅行者が減ったかというと,世界の国際観光客は’19年に14.7億人まで増えていましたが,それが4億人までダウンしたのです。

新型コロナ禍から急速に回復

 今,ここからすごい勢いで回復しようとしています。日本政府観光局の速報で,人数ベースで77.6%まで回復しています。台湾や香港からの訪日客はほぼ100%に回復しています。
 今年のインバウンド消費額を5.9兆円と予測するところもあります。’19年実績が4.8兆円ですから,徐々に対応していこうではなく,今すぐしっかり受け止めることが大切です。
 旅行客の消費の単価が上がっていて,’19年に一人当たり15.9万円だったものが,今,足元では21万円弱となっています。この理由は3つぐらいあり,一つは円安です。もう一つはインフレ格差。最後にリベンジ消費です。日本に3年間行けなかった分の旅費が貯まっているわけです。
 では,どういう方々がお金を使っているのか。’19年は東アジア,中国,台湾,香港,韓国からの旅行者が全体の7割を占めていました。東南アジアを含めると,8割以上がアジアです。
 もう一つ覚えておいていただきたいのが,個別手配のインバウンドの比率が,’19年時点76.6%だったということです。外国の方は,旅行会社のツアーで日本に来ているわけではないのです。インターネットで情報を検索し,航空会社のホームページで航空券を取り,サイトで宿泊施設を取り,個人で日本に来ています。
 一泊当たりの旅行中支出がもっとも多いのは中国で,2位は香港,3位はシンガポールです。1回当たりではフランス,オーストラリア,英国という順番で高いのですが,これは,例えばフランスの方は日本に来た場合3週間いたりするからです。
 インバウンドはアジアからが8割,もっとも支出するのは中華圏,個人旅行者の方々やネットで情報収集するデジタルネイティブな方々。こうしたことを頭に入れて,ぜひ皆様に,インバウンドという方々を単なる旅行者ではなく新しい消費者だ,5分の1の消費者だというふうに意識いただければ,と思います。
 われわれは日本で,インターネットでインバウンドに特化した企業として最大です。インバウンドが日本経済の再興のカギになると信じていますので,皆様と連携しながら,外貨獲得,地方創生を実現していきたいと考えています。
(スライドとともに)