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2023年7月14日(金)第4,886回 例会

コラボレーションをデザインする

吉 備  友理恵 氏

株式会社日建設計 企画開発部門
イノベーションデザインセンター
プロジェクトデザイナー
吉 備  友理恵 

1993年大阪生まれ。神戸大学建築学科卒業。東京大学大学院新領域創成科学研究科修了。都市におけるマルチステークホルダーの共創,場を通じたイノベーションについて研究実践を行う。共創を概念ではなく,誰もが取り組めるものにするために「パーパスモデル」を考案し,書籍化。日建設計本社にある共創の場PYNT(ピント)の企画運営も手掛ける。

 私は「コラボレーションをデザインする」ということで,社内外の方たちをつないで,新しくプロジェクトであったり,研究開発であったり,そういったものを生み出すきっかけを作るということをやっております。いろんな社会課題が増えてきておりますが,一人では解決ができないものだと思います。だからこそ,いろいろな立場,専門性を持った「私たち」で解いていくしかない。「共創の時代」がもう既に来ていると思っています。

共創の時代が到来

 コラボレーションをデザインするということについて3つの活動,「リサーチする」,「つなぐ」,「場をつくる」についてお話をします。
 「リサーチする」ですが,まずコラボレーションでうまくいっているプロジェクトはどういったものがあって,それがどうやってうまくいったのかなど,事例を共有することがすごく大事なポイントになっております。
 そこで起きがちな問題が,大きく2つあるかなと思っています。1つ目は,一緒に取り組むといってもどうしたらいいかわからない。2つ目は立場の異なる人とかで一緒にプロジェクトを進めていく中で,コミュニケーションのズレが起こってしまう。
 そこで私,リサーチをし,そこから要素を抽出したものをモデル化して,共創を可視化するツール「パーパスモデル」を作りました。真ん中にそのプロジェクトの何のためにやるのかという「共通目的」を置き,その周りを囲むように,どんな人たちが関わっているのかということを描いているモデルになっております。
 皮膚病の薬を作っている製薬会社が取り組んでいるプロジェクトでは,「共通の目的」は「慢性的な皮膚病の疾患がある方の生活をテクノロジーで改善する」とし,その周りを囲むように,誰がどんな役割で,どんな目的でこのプロジェクトに関わっているのかというモデルになっております。
 こういった形で,「 パーパスモデル 人を巻き込む共創のつくりかた」(学芸出版社)という本を出していますので,よければご覧いただければと思います。

リサーチする・つなぐ

 2つ目,「つなぐ」です。
 何とかしないといけないんだけれども,複雑化しているし,事業化もなかなか難しい,手をつけられなくなっている都市課題というのはすごくたくさんあります。そういったものを一社では解決できない。だからこそ,関係性を作っていきながら,どうやって実装していくのか。それを目指すためのイノベーションデザインセンターというチームかなと思っています。その中で少しずつ育っていったプロジェクトの一つをご紹介させていただければと思います。
 「フューチャーラボ」というチームがありまして,未来の技術を受け入れる都市環境をちゃんとアップデートしていこうよということを考えていくチームです。未来の技術,これまでよりもどんどんスピードが上がってきている中なので,要請があってから設計をするのではなくて,こういったものが必要なんじゃないかということをどんどん提案していく,そういったチームになっています。その中の「ドローンフレンドリーシティ」は,次世代インフラと,地域の活性化をテーマにしたプロジェクトになりました。
 彼らから私のチームに相談があったのが,空飛ぶモビリティの実装について,都市空間でそれが受け入れられる形になってないよねというところで,特にドローンであったり,空飛ぶ車の離発着場の環境をより実践的に考えていきたいというような課題がありました。そこで私たちが「おつなぎ」をしたのが,実際に実証している自治体さんと経産省の皆さん。ドローンが飛んでくる時の機械音が気になるということであったり,ドローン本体の離発着が風に弱いというところで不安定になってしまうという課題があったり,あとは実際に町の生活となじむのかというところが課題として挙げられていたので,そういったところをつなぐ離発着場の設計ができないかというところを実際に行っているという事例になっています。

リアルな「場」をつくる

 そして最後,「場をつくる」です。4月に日建設計の本社が改修をいたしまして,ここの中に,オープンイノベーションと会社のアイデンティティを高めるために「場」ができています。「PYNT(ピント)」といい,「都市の社会課題が集まる共創の場」と位置づけています。これまでこの場所は普通に執務のエリアになっていた場所なんですけれども,オンラインになってしまって希薄化してしまった人の関係性をつなぎ直すことだというところで,コラボレーションのためのフロアというものを作っていくことになりました。
 この場に課題を持ち込める人,実装できる場を持っている人,そして私たちにはない技術を持っている人,そして資金を集める方法を知っている人,そして共創の支援だったり,そういった「つなぐ」ということができる人,そういった方たちが自分たちの思いを持って集まるという拠点,リアルな「場」こそ,そういったことが一歩進むきっかけになるんじゃないかと思って,私たちはリアルの空間を作っています。
 この「場」は,コラボレーションのための「つながる」,「学ぶ」,「発信」するという3つのアクティビティが起きるように設計しました。ワークショップが簡単にできるエリアだったり,プロジェクトを展示して皆が見られるようなエリアだったり,発信ができるステージであったり,つながるためのコミュニケーターがちゃんといられるバーカウンターのようなものがあったり,そういった場所ができています。
 もしよければ飯田橋の東京本社の3階にございますので,ぜひ遊びに来てください。
(スライドとともに)