バースセラピスト,ダイアローグジャパン・ソサエティ代表理事,ダイアログ・イン・ザ・ダーク理事,「こども環境会議」代表。
主な著書:『エールは消えない-いのちをめぐる5つの物語』,『さよならの先』,『いのちのバトン』,『大人のための幸せレッスン』,『マママインド』。
共著『親が育てられるとき』内田也哉子,『まっくらな中での対話』茂木健一郎他。番組 J-WAVE DIALOGUE RADIO ~IN THE DARK ナビゲーター
私は,セラピストとして33年ほど活動していました。ターミナルケア,末期のがんの方を最後までお世話をしてお看取りをしながら,遺族になった方たちの心の安定ができるまでお側にいるということをしていました。がんの末期の方というのは,自分は自分でいいんだってことに気づかれていって,「もっと元気なうちにこの心境にいけたらよかったなと思う。人と比べたりしないで自分の人生を楽しんで生きたほうがいいよ,ということを伝えたい」とおっしゃっているんです。
東京の竹芝,浜松町にダイアログ・ダイバーシティミュージアムがございます。
「対話の森」という体験型のエンターテインメントなんですけども,「ダイアログ・イン・ザ・ダーク/見えない経験」―真っ暗な中で,いろんなことを体験してまいります。森のシーンがあったり,民家があったり,公園があったり,電車に乗ったりとかしながら,遊んでいただくんです。小学校の1年生からお年寄りまで遊んでもらって,そして目が見えない人と関わります。次のエンタメは「ダイアログ・イン・サイレンス/聞こえない経験」―聞こえない,音のない空間を用意します。真ん中の人が身振り手振りをしていますが,言葉の壁を越えた状態で,おしゃべりしながら関わっていく,そんなエンタメです。これは聞こえない人たち,ろうの人たちが活躍する空間です。そして次は「ダイアログ・ウイズ・タイム/歳を重ねる経験」です。何歳でも人は成長できて,そしてエイジングはすてきなことなんだってことをお伝えするんです。アンチエイジングじゃなく,歳を重ねるのは豊かなことで,そしてずっと人間は成長できるんだよ,とお伝えしていくようなエンタメです。
この3つがダイアログ・ダイバーシティミュージアムとなっています。今日,皆さんには,ダイバーシティとはどんなことなのということをお伝えしたくてやってまいりました。
私たちのところのエンターテインメントは障害の擬似体験ではなくて,多様性,ダイバーシティを理解するソーシャルエンターテインメントだよということをお伝えしています。皆さんの常識では,健常者が障害者を助けるんだとご理解されていると思いますが,私たちの場合はそうではなくて,障害者が健常者を助けることもできるんだよ,そんなこともお伝えしています。もう一つの願いがありまして,「雇用」なんです。目が見えない人や聞こえない人,80歳以上の人を雇用,目や耳を使わない人たち,豊かな経験を持つ人が有利なんだよ,そんなことをうたっています。
ダイアログ・イン・ザ・ダークの経験ですが,暗闇の中では,私は1歩も歩けない,迷子になります。ところが見えない人たちは,あちらこちらに連れていってくれるんです。公園でもブランコに乗せてくれたりとか,広場ではキャッチボールもさせてくれる。社会変化の触媒として展示しているミュージアムなんです。私たち,今までは分けるようなことをしてまいりました。特別支援学校で障害者が学ぶ。一般校では正常者が学ぶ。でも,私たちの願いはインクルージョンです。今これがだんだん世界で浸透してきています。盲学校はものすごいいい勉強をさせているんです。たとえば天体の勉強,見えない人が星や月とかを見ることはできないんですが,天体の勉強はします。模型を使うんですけども,太陽と月と地球の位置をちゃんと把握していて,どう周っていくのか立体的に教えているんです。そうしますと見えない人たちのほうが,天体に関しては説明がうまいんです。盲学校の教育と一般校の教育を混ぜていくと,さらに学校教育は豊かになるだろうと考えています。
ダイアログは,世界中の47ヵ国で開催しています。学校教育でこれが入っているんです。暗闇の中は対等な場です。学校の中でもヒエラルキーが実はあるそうなんですけれども,暗闇に入るのでそれもなくなって,助け合いが生まれるんです。助け合える場所を用意して,学校教育に入っていくのがダイアログなんです。海外では小学校4年生と中2で学校教育に入り,そして子ども達の自殺を減らしていくということを国が認めています。ダイアログの場合は,世界中で日本以外は国が運営しているんです。これが日本にはできていません。清水建設さんとかJRさんとかにバックアップしてもらっていて,民間で支えてもらい運営しています。日本でもこの教育をどうしても採用したい。すごく効果がある。
ダイアログ・ダイバーシティミュージアムのガイドは「意思の疎通を図りましょうよ。そして自分たちのことも知ってほしいし,皆さんのことも知りたい。ダイバーシティのことをもっと,もっと皆さんと一緒になって学んでいきながら,世の中にいろんな人たちが活躍できる場を作りませんか?」と願っています,私もです。子どもだからこそ,大人だからこそ,高齢者だからこそ,外国人だからこそ,障害者だからこそ,そしてあなただからこそ世界をもっとよくできる,そんなふうなダイバーシティがあったらいいなと思っています。
実は私も皆さんも,多様性の中の一人なんです。ですから皆一緒です。それぞれ得手,不得手があります。助け合っていけたならば,世界がより豊かになってこれからの未来が明るいものになります。ですので,皆さんにお願いがあるんですけども,お子さんたちがちょっと元気なさそうだぞと思ったならば,声をかけてあげてください。障害者の方たちにも声をかけてあげてほしいんです。それは彼らの生きる力をさらにアップします。声かけを,そしてその人たちの力や能力を知っていただけたなら,と思っています。
(スライドとともに)