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2024年2月16日(金)第4,911回 例会

ロイヤルホテルの挑戦

䕃 山  秀 一 君(ホテル・旅館・料理店)

会 員 䕃 山  秀 一  (ホテル・旅館・料理店)

1956年大阪府生まれ。’79年神戸大学経済学部卒業後,(株)住友銀行(現(株)三井住友銀行)入行。一貫して関西の法人営業に携わり,2014年 同行(代取)副頭取,’15年 取締役副会長に就任。’17年(株)ロイヤルホテルの代表取締役社長,’23年6月より取締役会長。’12年大阪RC入会,2021-2022年度友好委員長。日本ホテル協会副会長。元関西経済同友会代表幹事。

 ホテルの改装も始まり,1年経って落ち着いたところで,ホテルに何が起こっているのかという話と,今後の展開についてお話したいと思います。

ロイヤルホテルの挑戦

 歴史からご説明します。1935年創業ですので,ちょうど2025年,来年に90周年を迎える古いホテルです。東京には帝国ホテルがありましたが,大阪にも国賓級の方々が滞在できるホテルが必要だと第7代・関 一市長が,各方面に相談されたのがきっかけだと聞いています。
 設立には住友財閥が関係し,1935年に「新大阪ホテル」という名前で開業しました。場所はフェスティバルホール(中之島2丁目)のあたりと聞いています。その後’70年万博開催が決まると,当時のホテルでは小さいということで,この土地(中之島5丁目)にホテルをつくりました。当時は東洋一大きなホテルになりました。
 バブル以降,失われた30年と言われています。観光産業・ホテル事業も好調とはいえない時代。阪神淡路大震災やリーマンショック,東日本大震災の被害を受け,非常に青息吐息の時代が長く続きました。
 風向きが変わったのは,コロナ禍直前の2~3年からです。第二次安倍政権で観光立国を打ち出し,中国や東南アジアのビザ条件の撤廃や緩和,免税品の金額を下げて申請しやすくしました。コロナ禍直前のインバウンドブームは関西が火付け役になりました。ちょうどその頃に私は社長に着任しました。「業績悪いと言うてますけども,いいやんか。10年は楽勝やな」と思っていたら2年後にコロナ禍…。それも3年続きました。ホテルは大打撃を受けました。3年間で約170億円の赤字です。
 建物は頑強なのですが,維持にも年々10億円以上の再投資が必要です。10年後,借金返済のめどが立っても今度は建て替え問題が表出します。コロナ禍後にすぐ潰れるという問題はクリアし,その後の経営方針を模索するなかで浮上したのが外資との提携という方法です。

外資との提携

 外資から提案を受けた際,私は土地建物を売却して財務状況を安定させるだけではリーガロイヤルホテルは安泰にならないと思い,経営方針を整理しました。2つあります。1つ目は,ホテルは中之島でご利用いただくことが“一丁目一番地”ですが,土地建物の所有者は二の次でよいということです。2つ目は,それを流動化し,資金化することで財務安定を図り,事業を展開させることです。土地建物が他人の手に渡っても,ブランドを維持し事業を継続させることを条件に交渉しました。
 カナダ系不動産投資会社・ベントール・グリーンオーク(BGO)は不動産の外資系ファンドです。彼らとの契約書の中には,建て替えの際の客室面積や部屋数,宴会場の面積,レストランの総面積など構造上の明細まで記載があります。
 BGOとの契約を「戦略的資本業務提携」と表現しています。BGOが出資した不動産保有会社に,リーガロイヤルホテル(大阪)の土地建物を550億円で売却します。この資金でコロナ禍の赤字に対応する貸金やバブル時代に積み残った貸金を返済し,手元に120~130億残りました。

中之島の「リーガロイヤル」を守るために

 リーガロイヤルホテルの宴会場の回転率は結構高稼働です。非常に業績がいい。ところが肝心の宿泊部門は客室への手入れが甘く,客室単価が低調なのが弱点でした。客室は1,030室あります。このうち約600室は万博当時につくられていますので,シングル中心で一部屋20㎡前後で部屋面積は小さめですが,改装して2部屋を引っ付けて40㎡にする部屋もあります。いずれも内装はしっかりリニューアルする方針です。
 その後,さらにインターコンチネンタルホテル(IHG)から「組みませんか」と提案を受けました。リーガロイヤルホテルというブランドを中之島で守ることを第一目的に掲げているので,リーガインターコンチネンタル…,そんな名前になるのは受け入れられないと伝えたところ,「VIGNETTE(ヴィニェット)」というブランドを提案されました。彼らが展開するソフトブランドで,地元のホテルブランドは残したままヴィニェットコレクションという名称で彼らの宿泊システムの中に組み込みます。
 IHGは,マリオットやヒルトンに続く世界のホテル業ビッグ3の中の一つで,彼らのメンバーズ会員は1億人以上です。彼らとしては,宿泊客は送り込めてもMICE客のような団体客を送り込むホテルを関西に持っていないのでその部分が改善されるメリットがあります。
 今月から改装に入ります。客室中心で1フロアずつ進めるので,ホテルを閉めることはありません。宴会場は大きく手を入れませんが山楽の間は,壁紙をシャープな色に張り替えます。メインロビーはフロントを奥に下げる工事により混雑さは解消されます。
 改装後は沖縄の北谷に200室ぐらいのホテルを展開します。これ以外にも3つは近々発表する予定で,年間3~4つずつ全国に展開する方針です。
(スライドとともに)