音楽家・数学研究者・STEAM教育者。(株)steAm代表取締役,(一社) steAmBAND代表理事,大阪・関西万博テーマ事業プロデューサー,内閣府STEM Girls Ambassador,東京大学大学院数理科学研究科特任研究員。国際数学オリンピック金メダリスト。音楽数学教育と共にアート&テクノロジーの研究も進める。
音楽と数学と教育,特に「STEAM(スチーム)教育」というものをしております。その名も「steAm」という会社を2017年に立ち上げて,昨年万博事業にもつなげていくということで,音楽のバンドみたいに「steAmBAND」という社団法人を,元文科副大臣の鈴木寛さんを会長理事として立ち上げております。
2025大阪・関西万博テーマ事業プロデューサーとしては「いのちを高める。遊び,学び,芸術,スポーツなどを通じて生きる喜びとか楽しさを感じて,共にいのちを高めていく共創の場を創出する」というプロジェクトを担当しております。主にはシグネチャーパビリオンを創ってイベントを行う。どんどん事前からいろんなことをやっています。
数学オリンピックにも関わっておりまして。実は’03年以来20年振りに,今年7月に千葉で「国際数学オリンピック」が日本で開催されます。数学好きのアスリートたちがやってきます。かなりおもしろい,個性豊かな数学好きが集まります。
私自身,高校2年生と3年生の時にインド,アルゼンチンと数学オリンピックを通じて行くことができて,そこで世界中の人が集まるおもしろさというのを堪能させていただいていまして,ことしも楽しみですし万博もそういう意味ですごく楽しみにしております。
信念としては,万人万物にすばらしい創造性が多様にあふれている,その多様性こそが価値である。ただ,社会のせいで今たまたま弱いとか,例えば障害のある方とか,場合によってシニアの方とか,力が十分に発揮できない状況になっているのは,社会が追いついてないのかな。そういう意味で「創造性の民主化」ということをテーマに挙げています。万博でお声がけいただいたのも,こういう取り組みでかなと思っていまして,なのでパビリオンを創るだけじゃなくて,社会変革みたいなことを手がけていきたいと思っています。
STEAM,Sがscienceサイエンスで科学,Tがtechnologyで技術,Eがengineeringで工学なんですけど,私はものづくりと訳したほうがわかりやすいかなと。Aがartで芸術アート,これは後から加わりました。私は日本で言うと大体文系の科目というのはこういうアーツの中に含まれると思っていいのかなと思うんです。Mがmathematicsで数学。今まで分かれていた教科が,ある種横断的に,実社会での課題解決に生かしていく教育であると文科省さんは出しています。海外だと,科学とか数学を学ぶんじゃなくて,科学者とか数学者のように考える。芸術を学ぶよりは,アーティストとかエンジニアのように創る。その学び方とか生き方そのものがSTEAMと定義されているものが多いです。なので,学ぶ,働く,生きる,創る,遊ぶということがもう全部ニアリーイコール(≒)になってくる時代である。
文科省さんが今出されている学習指導要領で,新しいことで「探究」という言葉が入ってきたりとか,もちろん主体的,対話的でそういう学びを出していたりとか,社会に開かれた学びとかいろいろ出しているわけなんですけど,そういうこととこのSTEAMの流れというのが実はすごく呼応するものだということで,最近文科省さんもSTEAMということを結構言っています。図書館とかミュージアムが世界中で変わりつつある。図書館は知を受け取るだけじゃなくて,知を創り出す場であるとか,ミュージアムも人が創ったものを見るだけじゃなくて,皆が創って遊ぶ場所も,諸外国のミュージアムとか図書館で作られ始めています。
万博の話をします。テーマは「いのち輝く未来社会のデザイン」。私のテーマは「いのちを高める」。「STEAM」とか,「ワクワク!を探す旅へ」をテーマに挙げております。私たちの何か大事なものを表してくれる概念として「クラゲ」が出てきまして,「いのちの遊び場クラゲ館」を協賛企業さんと一緒に創らせていただいております。’25年に「クラゲ館」が建ち上がるんですが,事前から活動していこうということで,’21年に「未来の地球学校」プロジェクトを立ち上げています。「創造性の民主化」の実現です。今,全国の,世界のいろんな学校,その中では特別支援学校,過疎地の学校,聾学校,盲学校,ミュージアム,図書館,いろいろつながっております。「弱いもの・小さいもの・少ないものの爆発的な可能性と価値を開く万博にする」ということが,ミッションとして感じているところです。
クラゲ館ですが,イベントも企画しておりまして,クラゲプロジェクトの軸はいろいろあるんですけれど,全部連携し合っています。1つ目が「0-120歳の学び・遊びの大変革」,2つ目は「インクルーシブ・プレイフルな協奏社会」,3つ目,民俗音楽/芸能・祭り。4つ目,茶道とか茶室を通じて日本文化を知る。5つ目,サーキュラーエコノミー。6つ目,生まれ変わるゴミのこと。7つ目,世界と自治体の連携。各自治体に子どもたちと世界をつないでホストしてもらうということを万博でできないかということでやっております。その子どもたちとかが実は作り手としてすごいんです。プレイイベントとしても広げていきたいというふうに思っております。
より一人一人の多様ないのちが躍り輝く未来社会を皆様と創っていきたい。できれば,万博に無縁だと思いがちな方々を巻き込めるようなスキームをご一緒に考えていただいたり,バンドとしても手を取り合ってやっていけたらいいなと思っておりまして,この機会に皆様とお近づきになって,万博を利用して盛り上げていくようなテーマ事業を,私以外にもたくさんおりますのでご一緒にできればいいなと思っております。
(スライドとともに)