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2023年1月13日(金)第4,863回 例会

自然・農業から学ぶ経営

大 西  千 晶 氏

日本農業(株) 代表取締役 大 西  千 晶 

1990年生まれ。2015年神戸大学発達科学部卒業。’10年大学在学中の20歳の時に(株)プリローダ(認定農業者法人)を起業し,代表取締役に就任(現任)。人と地球の健康を考えた農場を運営している。’17年六次産業をスタートするため,日本農業(株)を起業し,代表取締役に就任(現任)。’19年11月より六次産業ブランドとして,農家直営スープ専門店「たんとスープ」の店舗展開をスタートし,現在大阪と京都に3店舗運営中。

農業に「新しい価値」

 環境問題,貧困問題に強く興味を持っていました。2050年には世界の人口が100億人を超えると言われています。食料戦争が起こるかもしれないと未来の憂いを感じていました。
 大学の先輩に農業体験に誘われ,「これだ!」というのを感じて,のめり込んで今に至るわけなんですけれども,きれいな空気があって,おいしい野菜ができて,文化が残ってという,「新しい価値」というのがここにあるなということを感じました。
 有機農業にはSDGsの要素がたくさん詰まっています。こちらが私たちの運営している農場の写真ですけれども,こういう里山の中にあります。水はけの悪い畑に浄化作用もあって大変おいしいイネ科のマコモダケという野菜を一面に植えています。そういう条件の悪いところでも土がよくなって作物が育つというような取り組みもやっております。
 弊社の農場には,期間限定農家というのが欠かせません。実は農家の大変な作業がポイント,ポイントでありまして農業研修も兼ねて,大人数でやると一気に終わります。
 ハウス栽培もやっておりまして,ちょっと緑が見えると思うんですが,これは期間限定農家で1週間半ぐらい前に植えたところで,パッと芽が出ているという様子です。農場には来年にも種をつむいでいけるような伝統品種とか固定種の野菜も数多く植えています。
 起業当初から農薬,化学肥料を使わない有機農業というのをやってきたんです。有機農業の土というのは,1グラムの中に1,000億の微生物がいると言われています。それぐらい奥深いんですけれども,この多様性のある土の中に私たち人もいると。そこに,足るを知る経済とか,循環型の経済のヒントが詰まっているというふうに感じています。そういう自然から学ぶことのできる楽しい職業だなというふうに感じています。

六次産業で「出口づくり」を

 この10年,今のシステムでは農家が食べていけないということで苦労をしました。この20年で100万人以上農業従事者は減っています,2040年には35万人になってしまうと言われてます。自分たちで出口を作ろうということでたどり着いたのが六次産業でした。
 私たちのスープは野菜の量に明確なレシピがなくて,そのときに採れる野菜が入っています。2019年11月にブランドとしてスタートしまして3店舗運営をしております。オープン当初は行列ができて,お客さんに野菜をこんなにダイレクトに届けられるのかということで喜びを感じていたんですけれども,その数ヵ月後にコロナ禍。今後は冷凍スープを活用して出口をたくさんつくっていきたいと思っております。販路を増やすということだけが目的ではなく,就農者を増やすということが大きな目的としてあります。
 そこで,そのような取り組みの中,弊社農場で初めて農業体験をしたという人の中から10名の就農者を輩出することができました。コロナの中で有機農業にも追い風が来まして,脱炭素社会で2050年まで25%を有機農業にする目標を農水省が発表しました。めちゃくちゃ画期的なことなんです。私たちはその第一線で担い手として,入口と出口を同時に増やしていくということで,もっともっと仲間を増やしていきたいなと思っております。

万博を「日本」発信の機会に

 持続可能な食料システムというのはどこの国でも課題。日本に自然と共生するすばらしい文化があり,2025年「大阪・関西万博」をいい発信の機会にしたいなと思っております。地球をテーマとしたオーガニックビレッジというのを誕生させようということで,そういった起点となる場所作りをしようと今,京都の自治体と場所作りを進めています。2025年の春に何とか間に合わせたいなということを思っています。
 有機農業の担い手をつくることは必須であるということが誰もがわかっていながら,なかなか経済的に難しい。ただ,有機農業には,SDGsのインパクトをつくることができるというふうに思っています。SDGsというと,半分は格差社会,半分は環境問題への課題解決だと思いますが,有機農業はどちらにも貢献できると思っております。
 格差社会でいうと,私は農福連携と有機農業には大変可能性があると思っています。今,実際に障害を持った方を農場で雇用しています。農福連携で企業とのつながりをきっかけに副業支援につながること,農業は働き手の受け皿になり,地方の担い手が深刻化している現状の課題解決になるということがポイントだと思っております。
 自然資本を大切にする新しい物語を作りたいと思っています。日本の農業は自然と人が共にあり,自らを自然に溶け込ませていくという考え方があります。この発信こそが,日本が小さいけどキラリと光る国として,日本を見直していくきっかけになるのではないかと思っています。1,000年以上続いてきた文化があるからこそ1,000年先の未来を提案できるという誇りを持って,2025年を見据えて活動していきたいと思っております。
 一次産業ベンチャーでできることは本当に少なく限られています。その中でも,様々な方との出会い,そして協力,中でも経済・社会・環境のバランスのとれた経済を作りたいという思いへの共感で六次産業をスタートすることができました。社会起業家をたくさん生み出す環境,それを自らプレーヤーとなって飛び込んで,私より上の世代の方々とZ世代をつなぐような,そういう役割を果たせたらと思っています。
(スライドとともに)