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2022年11月11日(金)第4,856回 例会

日本の野球

斉 藤   惇 氏

日本野球機構 会長
日本プロフェッショナル野球組織
コミッショナー
斉 藤   惇 

1963年野村証券入社,’95年同社代表取締役副社長,’99年住友ライフ・インベストメント代表取締役社長,2003年産業再生機構 代表取締役社長,’07年東京証券取引所 代表取締役社長,’13年日本取引所グループ 取締役兼代表執行役グループCEO,’15年KKRジャパン 会長,’17年KKR Global Institute シニアフェロー(現任),’17年日本野球機構会長 日本プロフェッショナル野球組織コミッショナー(現任)。

 任期5年のうち,コロナ対策でこの3年,とにかく,オリンピックをやらなきゃ,ということで特にオリンピック準備でやらせていただきました。Jリーグと一緒になって,最終的には医師11名入れて,2週間に1回,連絡会議で,選手,お客さんをどうやって守るかということを細かくやりました。球場の入り方,退出の仕方,野球選手の場合は2週間に1回PCR検査というのをルール化しまして,選手やお客さんを守ってきて,ことしはお陰様で143試合,100%お客さんを入れさせていただきました。
 (ピラミッドの組織図)われわれNPB(日本プロ野球)の組織,この一番上のところだけがプロの野球でありまして,野球の裾野はやっぱり広くて,このBFJ(全日本野球協会)というのは,社会人野球・高校野球・高野連をまとめている組織であります。その上にちょこっとあるところが,われわれのところです。

運営方式, 日米の違い

 実際は,これがアメリカと全然違うんですけども,われわれNPBは運営しているのは日本シリーズだけです。日本は(試合の)主催権を全部各球団が持っております。利益も99%,球団に属する。損も球団に属するということになります。
 コロナ前の比較ですが,アメリカのMLBは1兆2,000億円ぐらいの収益を出している。われわれわずか1,800億円です。Jリーグさんが1,200億円ぐらいですから,いかに桁が違うかということであります。95年ぐらいまでは実は同じだったんです,サイズも利益とかも。これ95~96年にアメリカは大改革して,日本のように各チームが主催権を持っていたのを,MLBが利益を全部まとめて,放映権も全部管理して利益を再配するという形に変えて,ビジネスの組織化をやったわけです。彼らはどう収益化するか,どうやったら本当にファンがつくかということを徹底的に研究する。MLBの収入は大体全国ネット,それから海外,例えばNHKさんが朝5時ぐらいから盛んにアメリカの野球を放送しますよね,
 お客さんも大分違うんです。今MLBは30チームありますので,上のほうのチームは大変お客さん集めていますけど,弱いチーム同士の試合なんかはほとんどお客さんは入らない,空っぽに近いです。平均をとると日本のほうが1試合の平均は上ですね,NPBのお客さんはお陰様で2019年,2,653万人。コロナにぶつかりまして,正常化するとお客さんが3,000万ぐらいまで増えていただけるのではないかと期待しております。大変おもしろい試合が続きまして,お客さんがたくさん入っていただくようになりました。
 お客さんの入り方を見ますと,阪神さんがやっぱり一番入られるんです。平均4万2,900人入っておられまして,ジャイアンツとわずかな差。一番下のロッテになると2万3,000人ですから,2万人近く差があります。オリックスとヤクルトの数字は今は大分変わっています。特にヤクルトのお客さんはものすごく増えてきています。アメリカはドジャーズがトップですけど,5万人近く入るんです。4万台がカーディナルズ,ヤンキースといったチームとなります。
 どのくらい野球業というのがアメリカでもうかるか。5年間の成長率,ニューヨークヤンキース62%です。5年間で大体20%,30%で伸びて,大体年間10%以上の時価総額がアップする。時価総額が上がるような経営をする。日本からも,いい選手を引っ張り込む。これ日本だけではなくて韓国とか台湾とか,中南米はもちろんですが,世界中からいい選手を引っ張り込んでいます。ニューヨークヤンキースの時価総額が一番高くて60億ドルです。

米は高年俸で活性化

 MLBの年俸ランク,大体ドジャーズが400億円ぐらいですか。日本は公開してないんですけど,推測するにソフトバンクあたりが一番大きいんじゃないかと思いますけど,100億いってないんだろうと思います。下のほうは30億とか27~28億しか払っていません。これだけ差があるんです。アメリカに行っている日本の選手の給料,マー君(田中将大投手)が実は一番多かったんで,9億円です。マックス・シャーザーさんは53億円。よく話題になりますが,エンジェルスに2人,46億円と45億円がいますね。今度,ようやく大谷君が43億円で,日本ではオリックスの吉田君でも4億円。かなり差をつけられてますよね。
 アメリカでは完全な所得の差をつけてインセンティブを与えている。アメリカのマイナーリーグの1A,2A,3A,これはアメリカで決めている最低給料に近いです。一気に落ちるんです。3Aでも1シーズン105万円です。1Aだと61万円。だから,この何十億という世界へ飛びたいというエネルギーを使って社会を活性化しているんです。いろいろ考え方はあるんですけど,日本はこれをフラット化して,全体が沈んでしまうということに遭遇していると思います。

日本は選手の教育に力

 (一方で)優秀なアマの(日本人)選手の99.9%,ほぼ100%は日本のプロ野球に入団します。なぜ優秀な日本の高校野球の選手,あるいはノンプロの選手が12球団に入ってくるかというと,やっぱり教育制度がアメリカと全然違うんです。実はアメリカは教えない。ただ,使う。出来上がった人間を使う。日本は実に丁寧にコーチを付けて,体のつくり方から。大谷君は日本の野球をリスペクトしているんですね。これだけパーフェクトに選手を育ててくれるところはない。考え方が違うということでしょうか。
(スライドとともに)