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2022年8月19日(金)第4,845回 例会

脱炭素社会に向けたスマートエネルギー事業の動向

餅   浩 志 君(通信事業)

会 員 餅   浩 志  (通信事業)

1989年NTT入社。2007年NTT西日本ネットワーク部担当部長。’12年NTTファシリティーズ エネルギー事業本部技術部長。’14年関西事業本部 副本部長。’17年エンジニアリング&コンストラクション事業本部副本部長。’19年取締役オペレーション&メンテナンス事業本部長。’20年技術本部長。’21年関西事業本部長。’22年7月よりNTTアノードエナジー(株)西日本事業本部長。’21年11月当クラブ入会。

 これまでの特に日本のエネルギーの消費量とかCO2の排出状況,この1週間でも多くの記事が出ておりまして,ちょうど時代の流れが来ている,それだけ課題が多いということだと思っています。2030,2050の目標があるんですけれども,日本は小資源国であり,50に向けて技術開発も大事かなと思っております。
 この夏はエネルギーが足りなくなって電力のひっ迫注意報が出ました。冬に向けてさらに厳しいという話が出てきています。原発も止まっていますから,今はほとんどLNGに頼っているので,高騰がそれぞれ電気料金の拡大につながっている。3割ぐらい上がるのではないかと思いますし,実はNTTグループも,後でご紹介しますけれども数百億単位でコストが増えるんじゃないかと。これはかなり影響してくる。

「使う側」の選択を

 第6次エネルギー基本計画では30年に向かって省エネを2割以上やらなきゃいけないということが,まず一つの大きなポイントです。電力の分野は脱炭素電源の活用,という話をすると,どうしても供給側の理論になってしまう。われわれ需要家側のほうがどういう使い方をしたり,電気の種別を考えてやってかなきゃいけない時代になってきてるんじゃないかなと。しかし,まずもって一番効くのは実は省エネだったりするので,使うものを電化にしていきましょう,もしくは石油ではなくてLNG,将来的には水素みたいな話もあります。
 経産省が出している「カーボンニュートラルな社会」は供給側のエネルギー転換を描いています。送り届けるには基地が必要になってくるということです。どっちかというとやっぱり供給側からのエネルギー転換になっている。自分たちとしては,これを使う側から自分たちの経済活動なりに合わせてどういうエネルギーを選択するのか,エリアごとの特性に合わせて,束ねてコントロールしていくのが大事と思っております。

つなぐことの重要性

 ただ,これをつくればいいという話じゃなくて,例えばバイオマスの話にしても,やっぱり林業とバイオマスとこれを使うところをどうつなげるかというのが実は大事。地域に合わせた再エネの増やし方,使い方。発電・送配電・需要それぞれに情報レイヤーが存在し,データを蓄積,データ活用が必要ということで,「つなぐ」が大事だろうと思っております。
 経済産業省が出している「ゼロエミ・チャレンジ」というのにも,果敢に挑戦する企業があるということです。2021年で624社,製造業が半数を占めています。実はNTTグループは日本の約1%ぐらいの電力消費をしていまして,日本全国に通信拠点を構えているので,結構使っているんです。年間数億ベースでいろんな知恵を絞ってコスト削減したりしているんですけれども,それだけではダメなので,使う機器,ネットワークを変えなくてはいけない。IOWN(アイオン・NTTが発表したネットワーク構想)の新技術は,エネルギーを100分の1ぐらいにする。もう一つは,自分たちで再生可能エネルギーつくっていこうということです。その一翼を私が今いるアノードエナジーとか,前職のファシリティーズ含めてやっていこうということになっております。どこの企業も,自分たちは脱炭素しなきゃという話もあれば,関連事業をどう伸ばして脱炭素社会に貢献するか,二面性があると思いますので,お互いに磨きながらつないでいくというのが大事なんだと思っております。
 グリーン電力(再エネ電源)は,東日本大震災以降のFIT(固定価格買取制度)開始後,太陽光を中心に拡大している。これ結局国民に電気料金として負担してもらっている部分はあるんですけれども,元々2%強しかなかった再エネが今10%ぐらいになってきているということになります。日本のエネルギー自給率は,実は7%ぐらいしかないんです。だからこれをもっと増やして,2030年には30%ぐらいまで自給率を増やしたい。なぜかというと,やっぱり小資源国なので,昨今問題になっているLNGの話,原発の話,いろんなものと組み合わせながらやらなきゃいけないのですが,電力会社,ガス会社,われわれも含めて供給側だけではなくて,使う人が自ら再エネを増やそうという時代になってきているということです。使用している電力をどうやってグリーン化しますか。自ら再エネを設置して自ら使う「自家発電・自家消費」に加え,「再エネ証書の購入」,「小売業者からの再エネ購入」,また最近では「コーポレートPPA」という手法も導入されつつあります。コストとしても見えやすいと思います。こんなやり方もあるということです。

企業の枠を超え協力を

 昨今はサプライチェーン排出量の把握が求められており,自らの排出量だけでなく企業の枠を超えての協力が不可欠となってきています。直近のところと,あと2050年に向けて,それぞれのエリアに合わせ,企業と企業が競争しながら一緒につくっていくことが大事と思います。最終的な脱炭素達成に向けては,燃料転換が必須です。一つの例として,水素は実は実現的には2030以降だと言われている。そうしてカーボンニュートラル50に向かっていく。いろんな技術開発が出てきている。水素活用に向けては,製造→輸送→利用のサプライチェーン構築が必要です。これを一企業,一業界だけでやろうと思うと非常に苦しいだろうなと思っています。うまくつないでいかないと無理だろうということです。ぜひいろいろ協力しながら次の未来に向けた社会をつくっていきたいと思っております。
(スライドとともに)