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2022年7月29日(金)第4,843回 例会

スポーツチームのサポートメンバーの重要性 ~主体的行動の大切さ~

鳥 内  秀 晃 氏

関西学院大学
アメリカンフットボール部
元監督
鳥 内  秀 晃 

1958年生まれ。’78年関西学院大学に入学し,アメリカンフットボール部に入部。在学中活躍し,卒業と同時にアメリカにコーチ留学。
サザンオレゴン大学(82~84年)とUCLA(85年)で学ぶ。’92年に監督就任。甲子園ボウルの優勝は12回を数え,2002年にはライスボウルも制覇。’16年には世界大学選手権日本代表チームを指揮。19~20年シーズンを最後に監督の座から退く。

 鳥内です。前回は『分業制スポーツにおける組織論』として話させていただきましたが,今回は裏方がどれだけ大事かということをお話ししたいなと。
 「甲子園ボウル」(東西大学日本一決定戦)で,関西学院大学は第4回に初めて出たんです。33年続きまして,その後,私が卒業してから負けたり勝ったりという状況が続いています。私自身は,大学の4年間,日本大学に4年完敗しまして,後輩たちを甲子園で勝たせたいと(学びに)渡米しました。帰ってきて1986年からコーチ,92年に監督に就任しました。マネジャーはいましたけど,トレーナーとか敵を分析するチーム(アナライジングスタッフ)はいなかったんです。そういうことの重要性をアメリカで見てきてこれは大事やと思いましたので,4年生をコーチにするとともに徐々に作ってきました。

部員の4分の1はサポートに

 クラブに今は毎年50人ぐらい入ってきてくれるんで,全体の4分の1,50人ぐらいはサポートメンバーです。それがなかったら回りません。練習のビデオ撮影はマネジャーが10台でやっています。マネジャーは広報活動もやります。毎年秋に「イヤーブック」を作るんです。ことしのチームの記事,写真,スポンサー集め,編集,全部マネジャーが作っています。あとリクルーティング,高校生の試合を見にいって準備していく。
 トレーナーは,体のメンテをするメディカルトレーナー,それ以外に筋肉強化専門の体作りのストレングストレーナーもいて,選手の体をケアする重要な役割を担います。
 アナライジングスタッフというのは,相手チームを分析するわけです。データがそのまま戻ってきたら消化できない。かみ砕いて分析スタッフ交えて次のゲームでどう使おうということをやっています。誰よりも相手校を知り尽くしている。

選手と平等,意見は言い合う

 チームが日本一になるために,それぞれに求められる役割を理解し,行動する。裏方と言うても,うちは「選手が偉い」とかない。皆,平等なんです。チームの目標は日本一です。個人の目標はどうやと言うたときには,今年の目標で,1年後,2年後,3年後はなしで,ことしは何で貢献できるんやということをちゃんと明確にさせていきます。
 ここで大事なのはPDCA(計画・実行・評価・改善)です。これ会社とかで使われてます。フットボールの場合は,非常にこれが役に立つんです。
 年間スケジュールを,監督,コーチ含めて4年生で話し合って作ります。だんだんシーズンに入っていくにつれて試合形式をやっていきます。きっちりプランを練るというのが大事です。日本一になりたい,試合に出たい―言うことは簡単です。ほんまにそれをやる気あるんか。日本一を目指しながらしか人間は作れません。
 試合に勝つために,個人,個人の能力が違うんで,瞬間,瞬間の判断どうやねんというのが大事なんです。相手チームを分析する担当の話を聞きながら,あいつ,めちゃくちゃ強いで,今のお前では勝たれへん,そういう情報交換しながら強くなっていってもらうんです。
 若いコーチによう見受けられるのが,自分の理想にはめてしまう。持ってる人間の個性を消してしまうんです。おれはこうできるのに,お前,なんででけへんねん。それが一番困ります。それぞれ体重,筋力,足の長さ,皆違います。同じものを求めるな,個性消すな,何でも自然体が一番得やと。自然に何ができるんか,それを発見したれや。一番大事なんです。

スポーツは科学,考える力を

 かつては野球もサッカーも剣道も柔道も指導者は軍隊上がりで,非常に理不尽なことが多かった。われわれのクラブでは全然ないんです。戦後75年,ずっと好きなことを言えて。アメリカって「早く自立せえ」って言われるので,自分で考えて自分で行動する。
 スポーツは,根性じゃなしに科学です。私は30年前から言うてます。最小努力で最大効果を出そうよ。問題を発見する力,解決する力。自分らで考えろ。困ったらおれのとこに来いよ。監督がおって,コーチがおって,ケアができる。質問しに来られるんですよ。(大切なのは)その人の姿勢ですよ。考えるからおもしろいんですよ。
 日大事件のとき,お前,めちゃくちゃしばいてるんと違うかと言われましたけど,75年間ないんです。しばかんでもちゃんとできます。本来,体育会系というのは民主的でいろんな意見出し合う,1年,2年関係なしに意見出し合う。世間では,軍隊式で上からは絶対や,トップダウンやと思われているみたいですが,違います。僕は現場に任してあげる。いろんな状況判断を自分で考えるから成長できる。上から言うたことしかできへんのは困ります。
 それぞれに見合ったコミュニケーションをということで,うちのトレーナー,マネジャーは,皆,意見言います,選手にも。これは当たり前のこと。3年,4年生で試合出られなくても,本当に裏方として一所懸命やってるやつは,試合に出てるやつを叱咤激励する。「お前,ユニフォーム着てるんやろ,もっとやれや,負けてまうで」とスタッフが言います。言う権利もあるんです。「能力あるねんからもっとやれよ,負けてまうやん」ということを言えます。「勝ってうれしい,負けて悔しい」,これ全員にならないと意味ないんです。チームに参加してるねんで。日本一のチームになろうと思うてやっているチームで,適当にやっててええんか。裏切っとったら,勝ちは回ってけえへん。―そういうことでやってます。
 時間が来ました。ご清聴ありがとうございました。
(スライド・映像とともに)