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2022年3月11日(金)第4,825回 例会

地域密着とプロ野球

梨 田  昌 孝 氏

プロ野球解説者 梨 田  昌 孝 

1953年島根県浜田市生まれ。浜田高校時代’71年春・夏甲子園出場。同年ドラフト2位で近鉄バファローズから指名。’79年・’80年捕手としてパ・リーグ連覇に貢献。’88年現役引退(通算874安打,113本塁打,ダイヤモンドグラブ賞4回)。2000~’04年大阪近鉄バファローズ監督(’01年パ・リーグ優勝)。’08~’11年北海道日本ハムファイターズ監督(’09年パ・リーグ優勝)。’16~’18年東北楽天ゴールデンイーグルス監督。
東日本大震災の被災地に寄り添い,北海道に地元球団を根付かせるなど,地域とプロ野球球団のあり方を模索してきた。

 今年69歳になります。一昨年,新型コロナウイルス感染症にかかりまして本当に命が危なかったんですけれども,このように元気に回復することができました。本日は3月11日です。11年前のあの日,日本ハムの監督として東京ドームホテルに宿泊していました。すごい揺れで,エレベーターも止まり,非常階段で下に降りました。その後,義援活動もしながら,地域密着で地元の人と寄り添いながらやってまいりました。

長所と短所から生まれたこんにゃく打法

 高校を出て,できれば東京六大学,あるいは関西でも野球の強い大学に進みたいと考えていました。しかし市役所勤務だった父ががんで亡くなり,大学に行って怪我をしたらドラフトにもかからないだろうと,すぐにプロの道に入りました。ところが島根県でも中国地方でもすごいよと言われた私ですが,近鉄に入団してプロの壁にぶち当たりました。プロで生きていくために,自分の長所,あるいは短所をいかに自分なりに理解しないといけないと痛感しました。そこで生まれたのが「こんにゃく打法」でした。私は体の強さはあるけれども柔らかさがなく,手を振ってみたらどうかと,不細工な打撃フォームでしたが,コーチや監督に頼らず,自分なりの考えでやってこられたのがよかったのかなと思います。
 当時,セ・リーグの方がはるかに有名で,本当はセ・リーグのチームに行きたいなと思いながらドラフトのくじで近鉄に当たったわけです。パ・リーグの場合,いまでは北海道から宮城,千葉,埼玉,関西,福岡に球団があり,非常に地域性が豊かです。ほぼ新幹線で移動できるセ・リーグと違い,飛行機で移動することになります。日ハムで4年間監督をしましたが,北海道から福岡まで2時間以上飛行機に乗らないといけません。ダルビッシュ投手や外国人選手のように2㍍近くある選手が,シートベルトをずっとしているわけですからハンデがあります。そういった部分でパ・リーグの選手たちは非常に強くなります。この移動慣れが,体力の差となり,交流戦でも大きな差となってパ・リーグの方が圧倒的に強い結果につながっていると思います。
 パ・リーグが最近ずっと強い理由は,高校からプロに入った選手の伸び率が高いこともあるでしょう。特にピッチャーがそうで,DH制があるためと思います。セ・リーグだといいピッチングをしていても打順が回ってくると代打を出されてしまいます。経験を積むことができるパ・リーグの投手の方が伸びる感じがします。

地域に密着し,ファンのために戦う

 近鉄では5年間監督も務めました。当時,ピッチャーが弱く,防御率は4.98。つまり1試合に5点取られる投手陣だったので,「5点取られても6点取ったら勝てる」ということをずっと言い続けました。
 私はキャッチャー出身ですから,監督1年目は機動力野球を目指しました。盗塁をしたり,ヒットエンドランをかけたりしましたが,どうもうまくいきません。監督は経営者みたいなものですから,一度掲げたスローガンはなかなか取り下げることができません。しかし2年目にこのチームの良さは何だろうと考えたときに,長打力だと思い直し,機動力野球をやめました。とにかく長打待ちです。盗塁はしかけません。すると,タフィ・ローズ選手が55本の本塁打を打ち,中村紀洋選手が46本打ちました。ピッチャーが悪かったら,この「いてまえ打線」で何とかカバーしようと,選手の特徴をつかみ,チームの長所,短所を見抜きながら指揮を執りました。
 その後,声を掛けていただいた日ハムの監督に就きました。知り合いも親戚も全然いない北海道でしたが,日ハムのファンはピンチになればなるほどワーッと拍手で激励してくれました。やっぱりチームというのは地域に密着しなくちゃいけないし,そしてファンが一番であり,ファンのために戦うんだと強く思うようになりました。

1位予想は横浜ベイスターズ

 そして今シーズンの日ハムは新庄監督になりました。キャンプに行くと,僕のところにパッと寄ってきて,「梨田さん,大丈夫ですか。コロナ,心配しました」と,優しい言葉をかけてくれました。そういう配慮ができる人です。いま打線をガラガラポンでやっていますが,それはそれで意味があるようです。選手たちに「4番の仕事は何をするんだ」,「2番打者は何をするんだ」とか,そういうことを考えさせる意味でもすごくおもしろいことをしています。どんな順位でやってくれるのか,どんなサプライズがあるのか,非常に楽しみにしています。
 今年の順位予想はとても悩ましいです。普段なら12チームすべてのキャンプに行くのですが,今年は新型コロナの影響で5チームだけでした。さらに球場に行ってもグラウンドレベルまで降りられないんです。選手やコーチと会話ができず,新外国人選手もまだ来ていません。どういう順位をつけるかとなると,非常に頭が痛いのです。
 阪神ファンの方が多いと思いますが,スアレス投手が抜けたのは非常に痛いところです。昨年は2位予想でしたが,今年は3位ぐらいになるのではないでしょうか。そして私の1位予想は,横浜です。牧選手,山崎康晃投手がよくなってきており,東,今永両投手も復帰してきました。ただ私の順位予想は,多分外れます。こんな簡単に当たるんだったら,解説者も必要ないと思うぐらい,本当に波乱含みだと考えています。
 東日本大震災では,まだ2,500人以上の方々が行方不明になっています。こういうことを忘れないように,またこれからも少しずつでも協力できるように頑張っていきたいなと思っています。