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2022年2月4日(金)第4,821回 例会

日本のブラインドスポット解消に正しい外国人アプローチ

コチュ・オヤ 氏

(株)Oyraa
代表取締役社長
コチュ・オヤ 
(Oya KOC)

トルコ出身。トルコの大学で電子・通信工学を専攻,ドイツ留学の後,東京大学大学院入学,アルツハイマー病の検出センサーの研究開発に取り組む。卒業後ボストンコンサルティンググループ入社,日本の大手企業のプロジェクトに経営戦略コンサルタントとして携わる。2017年,外国人が言葉に困った時に即時に通訳者を呼び出せる遠隔通訳アプリ「Oyraa(オイラ)」立ち上げる。日本国籍取得。
内閣府クールジャパン戦略メンバー,知的財産戦略構想委員,’25年大阪・関西万博日本館政府出展事業検討会メンバー。

 コチュが姓で,オヤは名になりますが,覚えやすい,言いやすい方で呼んでいただければと思います。皆さまの中には,既に多くの外国人と一緒にお仕事されている方,これから外国人を採用して一緒に働くことを検討されている方がいらっしゃるでしょう。16年間日本にいる私の経験,私の視点からお話をさせていただければと思います。

トルコの大学入試での思わぬ失敗

 私がいま,ここでお話ししていることには二つの理由があります。一つ目は,父親が購読していた「ナショナル・ジオグラフィック」のシリコンバレー特集を読んだことです。半導体のことを初めて知り,その技術に興奮してしまいました。将来,最先端の半導体技術の分野で頑張りたいと決めました。
 二つ目は,トルコの大学入試での思わぬ失敗です。子どもの頃から勉強が大好きで,自信満々に試験を受けました。ところが3問目で何度解いても答えが選択肢になく,ほかの問題を読む時間を失ってしまいました。その問題は結局,正答がないミスだったのですが,日本でいえば東大クラスの大学進学に失敗してしまいました。ただ4番目ぐらいの大学には入れました。
 入学当初は「人生終わった」と考えていましたが,半導体を夢中になって勉強して失敗を取り戻そうと思い直しました。滋賀県にあるオムロンの工場でICチップなどの製造を研修する機会を得て,2ヵ月間滞在して学べたことは感謝しています。そして2010年,東大の大学院に入りました。トルコでの失敗のリベンジができたかなと思います。

東日本大震災を経験して

 大学院生のときに経験した東日本大震災で,二つのことを決めました。一つが,日本に対する愛を非常に感じて帰化することでした。もう一つは,日本にいた外国人の友達の一部が震災後すぐに帰国してしまったことから,日本のことを心から愛する外国人を増やしていこうと決めたことです。
 コンサルティング会社に入社し,日本に住む外国人の友達から電話が入ってくるようになりました。「いま区役所にいて,手続きをしたいけどあまり話が通じない」などと,通訳をお願いされる電話でした。調べてみると,日本の通訳会社にお願いすると,10~15分の電話だけでいいのに,今すぐには依頼できず,予約できたとしても半日以下では予約することができないんです。要は半日分の代金6万円を払わないと,1分でも10分でも通訳が使えないことがわかったんです。
 通訳側も調べたら,通訳者の9割以上がフリーランスです。そこでマッチングプラットフォームをつくり,1分単位で使えるオンデマンド遠隔通訳アプリ「オイラ(Oyraa)」を立ち上げました。1分毎の課金になっていて,1分あたり120円ぐらいで使えるサービスです。英語,日本語だけなく,例えばベトナム語とロシア語の通訳にも使えます。
 全世界に外国人(移民)は2億8,000人もおり,毎年500万人のペースで増えていきます。「世界の移民人口国別ランキング」によると,米国は当然ながら最も多く,ドイツやロシア,フランスなどと続きます。日本は人口の多さでは世界で11位の国ですが,移民の数は277万人で24位です。日本は外国人をまだまだそれほど受け入れてないということになります。

なぜ日本は選ばれないのか

 日本のブラインドスポットについてお話ししたいと思います。経団連のメンバーを見ると,50歳以上の男性ばかりです。なぜ女性がいないのか,なぜもっと若い人がいないのか,なぜ外国人がいないのかというところが疑問です。残念ながら日本社会のダイバーシティの現状だと私は思っています。
 ではなぜダイバーシティが重要なのでしょうか。今までは日本の企業は日本だけで商売していればよかったかもしれませんが,グローバルな競争が激しくなる中,どんどん価値の高い商品やサービスを,日本だけでなく,世界中に出していく必要性があります。様々なバックグラウンドを持つ人が貢献した商品やサービスが,多くのコミュニティに届けられることになると思います。
 VRやドローン,eスポーツなどの新しい分野への変化に日本も対応していく必要があります。そういった業界には,最先端のエンジニアやデザイナーなどの高度人材が求められます。少子高齢化が進む中,こういった高度人材はグローバルに増やしていく方に私は可能性を感じています。しかし,残念ながら日本で働きたい,日本でキャリアを構築していきたいと考えている人は少ないのです。
 「世界人材ランキング」によると,その国に行って働きたいという人材の数は,日本は51位にとどまります。なぜ日本が選ばれないかというと,採用の問題があります。私も体験しましたが,外国人も日本人と同じ就職活動をやらないといけません。日本語での採用試験に不平等さを感じます。キャリアアップについても,日本では,実力やパフォーマンスで昇進するのではなく,3年たったらとか,10年たったらというところがあり,世界の基準と大きく違っています。さらに日本だとエンジニアやデザイナーの給料がかなり低いということがあります。4倍とか5倍とかの差になっています。
 日本は今後,もっともっと世界から高度人材を受け入れて,商品やサービスのレベルをアップしていかないといけないと思っております。
(スライドとともに)