テノールと言ってもいろんな声があります。レッジェーロは軽やかな明るい声,リリコは叙情的に歌う声,リリコ・レッジェーロは叙情的プラス軽やかな声となります。ほかに,強い声のスピント,一番重厚なドラマティコがあり,野球で例えますと,ドラマティコやスピントというのは,160キロのスピードボールを投げるピッチャーといえばいいでしょうか。
本日の松原君は,おそらくリリコ・レッジェーロだと思います。叙情的な声で,しかもさわやかな明るい声。野球でいえば,140キロ前後のスピードながらコントロールがすばらしく,バッターの心理を読み取るというタイプの声じゃないかなと思います。
少し内容をご説明させていただきます。
♪「初恋」 越谷 達之助作曲
1曲目は日本歌曲です。皆さんの若い頃の,初恋の思い出を思い浮かべながら聞いていただきたいと思います。
♪「鱒」 シューベルト作曲
次はドイツ歌曲です。きれいな川を泳いでいる鱒を釣り人が釣ろうとするのですが,水があまりにも澄んでいるものですから,なかなか釣れず,釣り人は川の水を濁らせて鱒を釣ります。「娘さんたち,気をつけないと鱒のように釣られてしまいますよ」というような教訓的な詩に,シューベルトが作曲しました。
♪「音楽に寄せて」 シューベルト作曲
次の曲は,皆さん,高校生のときに習われたかもしれません。芸術や音楽に対する感謝の曲です。苦しいときも音楽の美しい音色がわたしの心を慰めてくれるという内容です。
♪「セレナーデ」 シューベルト作曲
セレナーデというのは,男性が恋人のいるバルコニーや窓辺で愛を歌う曲のことです。ヨーロッパ,特にスペインなどでそういう習慣があったそうです。日本でそういうものがあったかなと考えますと,和歌なんかがそうかもしれません。日本でも和歌で愛の言葉を交わしました。
♪「ミューズの子」 シューベルト作曲
ミューズはゼウスの娘で,学芸の神,美の神,芸術の神。これはゲーテの詩です。ゲーテは世界に知られた芸術家であり,劇作家ですが,自分自身納得できない何かモヤモヤしたものがあったのかもしれません。世界を楽しくし,男女の愛を語ったゲーテですが,自分自身は満足感を得ることができなかったことが歌われています。
♪「人知れぬ涙」 オペラ「愛の妙薬」より ドニゼッティ作曲
スペインの村にアディーナという美しい女性がいました。彼女に恋をしてしまった純朴な青年,ネモリーノに偽の薬売りが「恋する女性を振り向かせることができる薬だ」と安ワインを売りつけます。それを信じてしこたま飲んだネモリーノにある日,村の娘たちが寄ってきます。実は遺産相続で彼は大金持ちになったのです。一方,アディーナは実は純朴なネモリーノに想いがあり,最終的に二人は結ばれるというストーリーです。
♪アンコール「昴」 谷村 新司作詞・作曲
大阪府出身。東京藝術大学卒業。同大学院修了。ロームミュージックファンデーション,野村財団奨学生としてミュンヘン音楽大学大学院,ウィーン国立音楽大学リート・オラトリオ科卒業。第14回松方ホール音楽賞,第81回,83回日本音楽コンクール第3位・岩谷賞(聴衆賞),第71回文化庁芸術祭新人賞受賞。日本,ヨーロッパにおいてリサイタルを開催し,NHKリサイタルノヴァ,ルールトリエンナーレ,トビリシ国際音楽祭,小澤征爾音楽塾,サイトウキネンフェスティバル,PMF音楽祭等に出演。小澤征爾,ハルトムート・ヘンヒェン,インゴ・メッツマッハー他,国際的な指揮者と共演を重ねる。母校をはじめ多数の大学などで非常勤講師。東京二期会会員。2019年12月ALM RecordsよりCD「シューベルト歌曲集」発売。
京都市立芸術大学卒業。ドイツ・エッセン・フォルクヴァング芸術大学大学院修了。なにわ芸術祭新人賞(第1位)併せて大阪府知事賞,大阪市長賞,京都芸術祭新人賞,摂津音楽祭銀賞併せて聴衆審査賞,堺国際ピアノコンクール高校生部門第1位,モーツァルト国際ピアノコンクール(イタリア)優勝等,国内外での入賞歴多数。スロヴァキアの室内管弦楽団Cappella Istropolitana,日本センチュリー交響楽団,奈良フィルハーモニー管弦楽団と共演する他,ニューヨーク・カーネギーホールをはじめドイツ,ウィーン,イタリア各地にて演奏会へ招かれる。現在,大阪府立夕陽丘高等学校音楽科,相愛大学,大阪教育大学,武庫川女子大学にて後進の指導にあたっている。