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2021年11月5日(金)第4,810回 例会

コロナ禍での,より安心・快適な患者搬送のために
~ドクターカー専用オリジナルアイソレーター製作の歩み~

入 澤  太 郎 氏

大阪大学医学部附属病院
高度救命救急センター 助教
入 澤  太 郎 

1989年私立甲陽学院高等学校卒業,’97年大阪大学医学部卒業,特殊救急部入局,以降豊橋市民病院で整形外科(手外科を中心)を修練。大阪大学医学部救急医学で大学院進学。市立堺病院整形外科に1年所属,2013年から2年間米国アリゾナ大学に留学,病院前救急のデータ処理の研究で’15年学位取得。同年帰国後,現在まで阪大病院高度救命救急センターで助教として勤務。

 私は阪大医学部を卒業して医者しかやっておりませんが,今日いろいろな人生の先輩方のお顔を拝見しておりまして,私たちが普通に生活している裏で,先輩たちがいろんなサポートをされているのだろうと思いながら参加させていただきました。その中で私たちの活動にご寄付をいただきまして,今日,完成形をお見せしようと頑張ったのですが,少し製作の方で苦労しているようですので,その経緯も含めて,お礼かねがね報告させていただきたいと思います。

コロナ患者の搬送時の課題

 ロータリー財団の皆様方,大阪ロータリークラブの皆様方,ご寄付いただきましてありがとうございます。いただいたお金で何を作っているかということですが,患者さんを安全に運ぶことに必要なものを,買うというよりも,実はそれがないので作るというところに端を発しています。
 昨年4月,阪大病院にドクターカーが入りました。いろいろ注文をつけたドクターカーでして,例えばひさしの部分からサイドタープが出ます。また車内はかなり狭いものですから,不必要なものは取っ払って必要なものだけをつけました。2台のモニターやパソコン用の机,衛星電話があり,移動中でも電話やインターネットが使えるようにして情報共有に活用しています。
 車内は青で統一し,患者さん,スタッフ,そして同乗される患者さんのご家族の緊張緩和を考えました。
 本当はゆっくり準備をしてからドクターカーを始めるつもりでしたが,あっという間に新型コロナにのみ込まれました。阪大病院の場合は,2次病院でちょっと大変だという新型コロナの患者さんを受け入れ,救命センターで気管挿管をしたり,必要であればエクモという人工心肺を挿入したりしてから,集中治療部のICUに届けています。その後,ICUである程度落ち着いた患者さんを,2次病院に搬送することによってICUを空けて,次の患者さんを受ける,ということをしています。昨年8月に10人の患者さんをドクターカーで運びましたが,今年5月の第4波のときは,搬送した患者数は30人ほどまで増えました。
 搬送時,患者さんには本当に申し訳ないのですが,布団圧縮袋のようなものの中に入っていただいて運ぶようになっています。ですので,患者さんから見れば,ピタッと袋が迫ってくるような状況です。ドクターカーの中に搬入すると,医師のフェイスシールドやアイガード,カーテンがあって,さらに患者さんが入っている袋,アクリル板があるので,医師からはほとんど患者さんの顔は見えません。患者さんからもこちらの様子は見えないでしょうから,すごく不安でいらっしゃると思うんです。
 ICUで少し良くなったと安心して,じゃあ病院かわりましょうとなっても,このような状況で運ばないといけないということが続いていました。
 患者さんを運んだ後の片付けも大変で,とにかく袋を開けてひたすら拭きます。慣れてきても,用意に30分,終わり片付けで1時間ぐらいかかっています。問題点として,準備や片付けも大変ですが,患者さんは感染した自分が悪いと感じてすごく遠慮がちで,ものすごく我慢をされて,夏は暑かったり,不安だったりされたと思うんですけれども,何もおっしゃられない。それで安全と言えるのでしょうか。この課題をどうしようかと悩んでいるときに,クラウドファンディングのお世話になる機会をいただきました。

クラウドファンディングで寄付集まる

 患者さんを運ぶドクターカー専用アイソレーターのアイデアを作り,クラウドファンディングサービスの「READY FOR」に,目標金額500万円で提案してみたところ,先輩方のご支持もあり,最終的に1,851万円というたくさんの寄付をいただくことができました。本当にありがとうございます。
 実際どのようなアイソレーターかと言いますと,中で患者さんが起き上がれるようにしたい,カプセル部分の透明性もほしい,リクライニングもしたい,患者さんの心電図モニターや呼吸器の機械もオールインワンで中に入れてしまいたい,などを考えた設計にしました。
 関東の工場で作っていただいていますが,とても苦労されています。緊急事態のときにはパンと外せるようにと考え,あまり細かい細工はせずにすぐに蓋をパカッと開けられる形で設計するなど,相当こだわっている部分もあり,透明カプセルの成型が思い通りに進みません。採算度外視で頑張ってくださっているという状況で,昨日,一昨日と話をした段階では,何とか目途が立ちそうだということを聞いて,ちょっとホッとしています。

12月に披露イベントを開催

 アイソレーターの完成予定が当初の9月末から11月末にずれ込み,本日お見せできないことは大変申し訳なく思います。
 今後の予定としましては,中学生や高校生に興味を持ってもらいたいと考え,12月11日に披露イベントを開く予定です。大阪大学吹田キャンパスのグラウンドにドクターカーやDMATカー,ドクターヘリ,そしてできあがったばかりの私たちのオリジナルアイソレーターを展示します。クラウドファンディングが始まったときにメディアにも取り上げていただいたこともあり,そのような形を通して,私たちが普段やっていることをお伝えできればなと思っています。
(映像・スライドとともに)