1982年3月東京大学教育学部卒業,同年4月日本国有鉄道入社。2000年7月JR西日本 岡山支社次長,’02年7月JR西日本 人事部マネジャー,’07年7月営業本部次長,’10年6月執行役員創造本部 副本部長,’13年6月(現職)。
本日はお招きいただきまして,ありがとうございます。大阪ステーションシティ,あるいは私どものルクアが開業して10年ということでございますが,実はかなり紆余曲折ございました。私たちがどんなふうに考えてやってきたかというのを,皆さまには「お客様目線」を忘れずに,見て聞いていただければいいかなと思っております。
大阪ステーションシティは2011年5月に開業しております。大阪ターミナルビルにノースゲートビルをつくり,その中の商業施設として私どもルクアと百貨店でJR大阪三越伊勢丹,2つの施設ができました。サウスゲートビルディングには,引き続きではありますけれども,リニューアルされて大丸梅田店,ホテルグランヴィア大阪などが入っております。
梅田は商業激戦区と言われて久しいエリアですが,今になって考えてみると,実は百貨店激戦区と言ったほうが正しかったのかなという感覚です。このルクアをつくるにあたって,どういうことをやればこちらに来ていただけるかというマーケティングを初代社長がやったのですが,実は意外な穴があったというのが結論でございます。
商業施設の床面積をお示ししていますが,この当時,梅田地区の商業施設の面積が格段に増えた時期であります。これだけ増えてもまだ商業施設がつくれるのか。そもそもショッピングセンター(SC)とは何をしているんだ,百貨店とは何が違うんだ,という基本的なところをお話しします。
百貨店は一つの巨大なお店で,一つの事業者です。一方,SCは基本は不動産賃貸業,場所貸し業です。ただ,普通の場所貸し業と違うところは,皆でお客さんを呼んだり,PRしたりするんです。路面で個別にやるよりも売り上げを獲得できるようにするのが我々の役割です。どういうお店をどんなふうに集めてくるか,どういう集客策を打つか,です。ルクアが開業して,初年度341億円。当初,250億円と計画していたのが,かなり上振れすることができました。お陰様で早々に業界の中でも評価をいただけるようになりました。
これでめでたし,めでたしかと思ったところなのですが,隣に出ていた百貨店のほうの売り上げがなかなか思うようにいかない。梅田は実は百貨店激戦区だったんだということですが,4番目の百貨店ということで,なかなかフルの百貨店で立て直せない。そこで,ルクアと一体で―。百貨店のいいところを残しながら,専門店を入れていく。百貨店もテナントにしていくということをやったのが,ルクア1100(イーレ)という館です。これができたタイミングで,私ども全体としてルクア大阪という名前にいたしました。
昔から「百貨店かSCか」ということを業界の中では言っていたわけですが,別にお客様にとっては,百貨店でも専門店でもSCでも,何でもいいじゃないかと。むしろそこに行けば何でもそろうのが一番いいんじゃないのか,というのが基本的なコンセプトです。「ワンストップ・ショッピング」を提案して,お客様に「なるほど」と言っていただけたということです。
これでひと息だと思いましたら,実は積み残し案件がございました。「デパ地下」です。百貨店が上手にできるだろうと思っていて,ちょっと様子を見ようかということもあって,デパ地下部分を残していました。ところが実はデパ地下は,デパート戦争で一番厳しいところであります。特に規模の小さいデパ地下というのは,なかなか太刀打ちができないのです。
何か違う技はないかとデパ地下を歩いていますと,一つ気がついたこと―「ここにある総菜など,売っているもの,すごくおいしそうだよね,ここで食べたいよね」という声があったのです。百貨店のデパ地下は,持って帰っていただくのが効率的なビジネスでした。しかし,家に持ち帰り,さあと思ったときにはテンションは下がっている。「やっぱり食べものって作り立て,総菜は作り立てがおいしいよね」と。私自身の海外旅行での経験でも,現地の市場は,野菜や魚などを売っているだけじゃなくて,そこで料理して食べさせてくれる,ワインも出してくれる。単なる観光資源じゃなくて,地元の人たちの生活に密着しているなと思ったわけです。こういうことができないんだろうか,と考えました。
ところが,自分たちでいくら知恵を出して考えても,どなたかやってくださるテナントさんがこられないと,何もできないんです。志を同じくしてくださる方がおられないと何もできない。探したところ,阪急オアシスにやっていただけました。
今はコロナ禍でございます。そのなかで,eコマースをどんどん進歩させていかざるを得なくなっているわけです。お客様にとって,こういうことがちょっとできたらいいなというご提案―。大層な技術で,何か想像もできないようなことをやるというふうなことではないだろうと思っています。
これまで申し上げたように,紆余曲折あってここまできました。ポイントは,お客様視点で,あったらいいな―。あったらいいなを形にしている,その繰り返しで今までまいりました。これからもいろいろな提案をさせていただきたいと思っております。どうぞお引き立てのほど,よろしくお願いします。本日はありがとうございました。
(スライドとともに)