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2020年10月23日(金)第4,769回 例会

食品添加物の役割とその安全性 ~SDGsを少し絡めて~

清 水  亮 輔 氏

(一社)日本食品添加物協会
常務理事・広報委員長
清 水  亮 輔 

1971年生まれ。名古屋市立大学大学院薬学研究科卒業。医薬品原薬製造会社(アルプス薬品工業),食品添加物製造会社(三栄源エフ・エフ・アイ)勤務後,2017年5月より現職。

 日本食品添加物協会は食品添加物の供給事業者,食品添加物を使用し加工食品を製造しているメーカーで組織されています。消費者との信頼関係構築を目的に,事業者にはコンプライアンスの奨励,消費者には正しい理解,不安低減への啓発活動をしています。

食文化・加工技術の進歩とともに

 まず食品添加物の役割と安全性をお話しします。古来より生のお肉,魚,植物を安全においしく食べることができるように様々な技術が使われてきました。燻製にしたり,塩に漬けたり,ヨーロッパではハムやソーセージをつくる時に岩塩が使われてきました。日本でも色をつける時にクチナシ,ベニバナといった植物を使ったり,だしをとったりと。加工技術発達で,そのいくつかは食品添加物となり今に至っています。食品添加物は食文化,食品加工技術の進歩とともにあるのです。
 使ってよいものは,食品衛生法によって決められています。ただ,最近の消費者庁の調査では,このことを知っている消費者は40%に達しません。ですので我々は「食品添加物は決められたものしか使ってはいけない」ということを丁寧に説明しています。
 食品添加物は4つに分類されています。「指定添加物」が制度の原則と考えてください。安全性と有効性を確認し,国が使用してよいと指定したものです。「既存添加物」は指定されないが,長年使用されてきた天然由来の添加物で国が使用を認めているものです。「天然香料」「一般飲食物添加物」も指定されていないが,使用が認められています。
 食品添加物の役割は主に4つあります。1つ目は食品の製造または加工する時に必要なものです。豆腐の凝固剤,ゲル化剤,乳化剤,膨張剤,ラーメンの麺を作るときのかんすい,ガムベースなどがあります。2つ目は食品をおいしく安全な状態で長持ちさせるものです。微生物に対して効果を期待する保存料,殺菌料,日持ち向上剤,防カビ剤などがあります。3つ目は食品の嗜好性の向上です。味であれば甘味料,酸味料,香料,食感であればゲル化剤や増粘剤,色であれば着色料や漂白剤などがあります。五感にアピールし,おいしくするための食品添加物です。色によって食欲が高まり,必要な栄養分を摂取できることにつながるとしたら,大きな役割があるのではないでしょうか。4つ目は栄養価の補填・強化です。ビタミン,ミネラル,アミノ酸のように栄養価を強化するものです。

社会的な役割

 最近,私たちは「食品添加物の社会的役割」と題して,食品に対する直接的な効果以外に視野を広げて,現代の世の中にどのように役に立っているのかを伝えています。介護食や,食品ロスの低減,備蓄食品など様々な状況,様々な人たちに向けた食品の供給に食品添加物は下支えしています。例えば高甘味度甘味料は,カロリーを摂取することなく甘さを享受できたり,飲み物にトロミをつけて誤嚥を防げたりは,比較的新しく見出された役割です。減塩効果のある食品添加物もあります。健康維持や介護食に役立っています。食品を長持ちさせる効果のある食品添加物は食品ロスを減らします。災害が起きた時,即席めん,缶詰,パン,お菓子などすぐに食べられる食品が届けられます。このような食品の製造にも貢献します。
 代替肉という言葉を聞いたことがあると思います。例えば大豆でつくった代替肉は動物の肉により大幅にエネルギーを減らせるので,環境に優しいといえるものです。代替肉を本物の肉に近づけるために味や香り,食感を付与する目的で食品添加物の出番があると思っています。食品の効率的な製造を手助けする食品添加物もあり,エネルギー削減に貢献します。これらのお話を「SDGsと食品添加物」という形でまとめました。

リスクの評価- 管理- コミュニケーション

 食品添加物のリスク評価については,内閣府に置かれている専門家機関,食品安全委員会が行います。人が一生の間に毎日食べ続けても安全と考えられる量を決めます。これをファクターの一つとして,厚生労働省がリスク管理します。食品添加物としての許可の可否や,使用基準を決めます。そのうえで,各立場の関係者がリスク評価,リスク管理について情報を共有して意見を交換する―このリスクコミュニケーションが重要です。
 食品安全委員会のアンケート調査によると,かなりの一般消費者が食品添加物について不安に思っていることがわかります。一方,食品安全の専門家は不安に思っていないということもわかります。専門家はリスク評価,リスク管理をよくご存じですから,問題ないという認識を持っています。ではなぜ一般消費者は食品添加物に対し不安を持っているのでしょうか。過去の食品添加物による様々な事故,安全性への懸念によるリストから削除,そういう歴史がありましたので人々に不安が引き継がれているのかもしれません。しかしながら,この数十年は食品添加物による健康被害は起きていません。
 食品に「無添加」「添加物不使用」と表示されていることがあります。無添加と書かれていると添加物って体によくないのかな,危ないものなのかな,と不安を煽られてしまいます。無添加表示については行政も問題視しています。消費者庁は無添加と表示する際に禁止に相当するかの判断のためのガイドラインを策定する予定です。

食生活の「縁の下の力持ち」

 今はいろいろな食べ物が簡単に手に入り,簡単に食べられます。ビタミン欠乏症というような事例はほとんどみられなくなりました。ただ一方で,偏食も起こりやすくなり,栄養バランスにも影響します。食品添加物を供給する側としても「食育の推進」に関わるべきであり,より健全な食生活を目指して,補佐役,縁の下の力持ちとして貢献していきたいと思います。
(スライドとともに)