1933年京都市生まれ。京都府立山城高校卒業,立命館大学入学。’53年~’69年阪神タイガース。’75年~’77年,’85年~’87年,’97年~’98年の3度,阪神タイガースの監督を務めた。’90年~6年間,フランスのナショナルチーム監督。’99年よりABCプロ野球解説者,2000年より日刊スポーツ客員評論家として現在も活動中。
歴史と伝統ある名門大阪RCでお話しさせていただくということを非常に光栄なことだと思っております。体験を振り返りながらお話をさせていただきますので,よろしくお願い申し上げます。
今年のプロ野球は,ソフトバンクが3連覇し,セントラルリーグを制した巨人は日本シリーズで4連敗,アッという間に負けてしまいました。
阪神の今年は何といっても新人の近本選手が1番バッターで一年間ずっと打線を引っ張り,非常に功績が大だったと思います。特に最後に6連勝して3位になるなど矢野阪神はよくやったと思っています。その自信を来年にどうつなぐかということが大きなポイントです。若手の選手たちが自信を持って臨めば,来シーズンは絶対優勝争いに参加するチームに成長すると思います。
課題もございます。大リーグで92本ホームランを打っているボアという左バッターを獲得したと新聞に載っておりました。左に打ってレフトにホームランになるというような評価をしていますけども,やっぱり右バッターが欲しかったように思います。
投手陣では藤浪が復調して活躍していかないといけない。藤浪は軽く投げても150㌔ぐらい投げられますが,制球力,特に精神的なコントロールといいますか,ちょっとイップスになっているように思います。試合で投げて経験をつめば10勝,15勝できます。藤浪の復活を来年の阪神のポイントとして挙げたいと思いますし,また,そういう目で阪神を見ていただきたいと思っております。
阪神にとってありがたいことは観客動員です。阪神は12球団で一番の309万人のファンを球場に動員しました。今年は12球団で2,650万人のファンが球場へ足を運んでいただきました。プロ野球にとっては非常にありがたいことだと思っております。阪神だけでなく広島,九州,北海道,仙台,それと今年は横浜がものすごく客が増えました。非常に喜ばしいことだと思っています。
ここからは大リーグについてお話をさせていただきます。
41年前の1978年にシンシナティ・レッズが来日,14勝2敗1分けと圧勝して帰国したのですが,今ではその実力差が縮んでいることは間違いないと思います。今年もDeNAの筒香,広島の菊池,西武の秋山と巨人の山口の4人がポスティングや海外FAで大リーグに挑戦します。
大リーグは30球団ありますが,国際化が進んでおり,特に中南米のドミニカ,ベネズエラ,プエルトリコやアジアも含め選手を獲得しています。大リーグもかつてはアメリカのプロスポーツ野球がナンバーワンでしたが,最近は観客動員数もやや下降線をたどっているのが現状です。
かつては全く歯が立たなかった大リーグですが,最近はだんだん力が接近し,日本の選手は50数人が大リーグで活躍しております。その先鞭をつけたのが’95年の野茂で2000年にイチローがマリナーズに行って記録をつくりました。この2人が非常に大きな役割を果たしていると思います。
今世界のスポーツの競技人口はバスケットボールが一番多く4億人,サッカーはが3億人,野球は残念ながら3,000万人~5,000万人でマイナーです。野球を世界に広めるということが大きな課題だと思っております。
来年の東京オリンピックで野球は開催都市提案の追加種目でやっと復活しました。野球が正式種目になったのは1992年のバルセロナで,その後5大会連続で続いていたのですが,2012年ロンドンと’16年のリオデジャネイロで途絶えました。しかも,これまでは8ヵ国でしたが来年は6ヵ国と縮小されています。
先日「プレミアム12」というオリンピック予選を台湾と日本で開催し4ヵ国が決まりました。日本以外では2位の韓国,3位のメキシコとイスラエルです。3月に2ヵ国を選ぶ予選があり,恐らくそこでアメリカとかドミニカが出てくるのではないかと思います。
来年はプロ野球も大変で7月24日から8月9日までオリンピック期間は休みます。早く開幕するうえに大事な7月,8月に休むということがどういう結果になるか,大変じゃないかと思います。
ルールで言いますと東京オリンピック以降の国際大会は7イニング制になります。野球は試合時間が長いと言われているためです。しかも,2024年パリのオリンピックではもう野球は行われません。28年のロサンゼルスでもう一回復帰という運動はしているのですが,難しいのが現状です。
最後になりますが,私,タイガース一筋で3度の監督もやらせていただきました。昭和1985年に優勝して’86年,’87年と3年間やって天国と地獄を見ました。この後’89年から7シーズン,フランスで野球と関わりました。規律も文化も違いがありますが,野球には国境はないということです。どの国もルールは一緒ですから,1つの球に向かって全員が集中していけば,言葉が通じなくても意志疎通はできると言うことです。今もフランスとの交流は続いております。
国際的な交流だけでなく,地域との交流がプロ野球の発展につながっていると思います。地域社会の発展とプロ野球というのは欠かせない,車の両輪であるように思います。地元の繁栄があって初めてプロ野球も成り立っていくのではないかと,そのように思っています。ご清聴ありがとうございました。