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2019年10月4日(金)第4,733回 例会

杭州から大阪へ

蒋   伊 薇 氏

2019 学年度 米山奨学生 蒋   伊 薇 

1995年4月生まれ。中国・浙江省出身。2017年7月浙江工業大学法学部卒業。’17年10月~’18年3月大阪大学法学部研究生。同年4月より大阪大学大学院法学研究科法学政治学専攻博士前期課程在学。2660地区米山記念奨学生として’19年4月~’20年3月末当クラブ受入れ。

 大阪大学大学院の法学研究科で国際司法を勉強しています。「こうしゅう」という中国の地名を聞くと「広州」という漢字が出ると思います。この広州,それに北京,上海,深圳の4つの都市は中国で一番経済力を持ち「一線都市」とも呼ばれています。経済力もあり,外資企業と外国観光客が多いのです。

故郷・杭州はこんな都市

 私の出身の「こうしゅう」は「杭州」で,「くいしゅう」とも呼ばれ,2016年にはG20サミットが開催されました。中国で「上有天堂,下有苏杭」という言葉があります。上には天国があり,下には苏杭があるという意味です。この「苏杭」は蘇州と杭州を指しています。つまり蘇州と杭州は天国みたいな良いところですということです。
 杭州は,上海から新幹線で1時間,名産品は,杭州のシルク,山クルミと西湖龍井茶です。
 「シルクの都」と呼ばれ,世界でも名を誇る産地です。「杭州のシルク」の歴史は5千年前まで時間を遡ることができます。
 中国の人はお茶を飲むのが好きで,多くの人は緑茶を飲んでいます。「西湖龍井茶」も緑茶の代表的なものの一つです。
 杭州の有名な文化遺産は「西湖(せいこ)」と「京杭大運河」です。
 「西湖」の魅力は美しい景色だけではなくて,古くから積み重ねた豊富な歴史文化,民間伝説が人々の心を惹きつけています。宋代の詩人・蘇東坡は,中国の四大美人の一人である「西施(せいし)」に例えて「光り輝きながらさざ波が広がる,晴れの日はまさによく,山の色が煙って見える小雨の日もまたすばらしい。西湖をこの美女西施に例えて言うならば,薄化粧でも厚化粧でもどちらも美しい」という詩をつくりました。
 「京杭大運河」は,北京から杭州までの長さ1,794㎞に及ぶ人力で開削された大運河です。2500年の歴史を持ち,世界で最も歴史が長く,流れが長い人工運河です。今でも河川運輸が活発です。
 杭州には1,000万人以上の人が住んでいます。最近人気になっている本当の理由は「一線都市」で生活するより負担が軽いし,アリババなど有名な企業が多いので活躍できるチャンスがたくさんあるということです。
 杭州はごく一般的な都市でしたが,アリババグループが本社を構えてから,国内外のIT企業が集まることで,中国の有数のハイテクIT都市になりました。アリババのお陰で「新一線都市」と扱われ,総合力は各界から5番目の「一線都市」であると認められています。

米山との出会い, 学んだこと

 ’17年9月,杭州から大阪に来ました。’18年4月までは,研究生として阪大で勉強し,大学院の入学試験の準備をしました。
 日本語の準備は,学校の日本語の授業だけではなく,ボランティアとして豊中市青少年野外活動協会のイベントに参加しました。私は唯一の外国人のボランティアでしたので,日本語を磨きました。また日本語の能力だけではなく,異文化の理解力も成長しました。
 専門知識の準備として,大学院の研究テーマを決めました。研究テーマは,国際投資紛争に適用すべき法です。同解決センターという仲裁機関の判例を読み,紛争に適用すべき法という問題を明確にしたいです。
 ’18年4月に無事に法学研究科に入学,1年目はバイトしながら勉強しました。米山記念奨学会と出会った後は,奨学金が給付されたので,そんなにバイトに行かなくても大丈夫になり,いろいろ体験できる余裕ができました。
 例えば,語学ボランティアとしてG20大阪サミットに参加しました。国内外から来た報道関係者に対して,大阪・関西の魅力や情報を発信する通訳を担当,中国の「新聞聯播」のニュースアンカーの通訳もしました。
 これらは人生の進路にも影響を及ぼしました。日本で卒業した後,中国に帰って弁護士になるつもりでしたが,考え方が変わりました。日本の企業に対する理解が不十分で,日本語もまだ勉強する必要があると実感し,日本で就職することを決めました。法務職で6月上旬に内定をもらいました。
 また大阪RCの趣味の会や米山奨学会委員会の方々との食事会に参加し,中国留学の経験がある日本の弁護士を紹介していただくなど,米山奨学生になったお陰で成長しました。

日本で気づいたこと

 1つ目は,中国と日本の間に,まだ誤解が存在していることです。日本の商業捕鯨の再開について,中国のメディアは強く批判しました。経済のために実施した残酷な行為と判断しましたが,その報道の一面性に気づきました。他方,日本の方にとっては,中国の人が犬を食べていることを残酷な行為と思っていることが分かり,日本と中国が仲良くする道はまだ長いと思いました。
 2つ目は,無駄なことはないということでした。私は目標を立てることが好きで,以前は目標に対して役に立たないことはしませんでした。中国で大学を卒業した後,日本の大学に入学した人について,この人は4年を無駄にしたと判断しました。でも,この人の話や今の様子を見ると理解できました。今は自分の好きなことを探して,ゼロから頑張っているこの人を尊敬しています。無駄なことはなくて必ず未来に影響を及ぼすと思います。
 もう一つ,「価値観」というものは国によるものではなくて,人によって異なるということです。日本に来る前には,日本の人に対し固定印象を持っていました。人の考え方は,その人の経験,周りの環境,教育で一致することはありません。よくわからず他人を指摘することがありましたが,今は簡単に他人のことを否定しなくなりました。
 米山奨学金で勉強に専念できる時間と様々なことを体験させていただき,成長することができました。ロータリアンの皆さんに感謝を申します。
(スライド・映像とともに)