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2018年2月2日(金)第4,657回 例会

南アジアの女性の課題と
持続可能な社会の創造に向けたNGOの役割

熱 田  典 子 氏

公益社団法人 アジア協会アジア友の会 
副事務局長
熱 田  典 子

管理栄養士。1991年ネパールにて栄養調査実施。’97年よりアジア協会アジア友の会の職員としてネパールのプロジェクトコーディネーター。ネパール各地の農村部の生活改善プロジェクトに携わる。現職以外に,関西NGO協議会副代表理事,関西SDGsプラットフォーム運営委員などを務める。

 本日は,貴重な機会をたまわり,ありがとうございます。「愛と奉仕」を教育方針に掲げる大阪女学院で「奉仕の大切さ」を学びました。そのことが,NGOで働くことにつながりました。なかなか近いようで遠い南アジアではありますが,皆様が少しでも理解を深めていただくひとときになれば幸いです。

39年目を迎える大阪発祥のNGO

 「アジア協会アジア友の会」は大阪発祥のNGOで,肥後橋駅のすぐ近くに事務所があります。今年,活動は39年目を迎えます。2012年に内閣府から公益社団法人に認定されました。

 産声をあげたときは,「インドに井戸を贈る会」でした。日本とは全く正反対の気候のインドの飲料水・生活水が欠乏する地域で,子どもたちが日々,コップ1杯の安全なきれいな水を飲めることをめざし,井戸を掘り始めました。その後,飲料水供給事業は,南アジアを中心に,ミャンマーやカンボジア,フィリピンなどへと広がりました。学校や企業,個人の寄付に支えられて,これまで約1,900基の井戸を設置しました。農村の自立に向けて,教育・環境・貧困自立といった分野でも活動し,今はアジア18ヵ国にネットワークを持っています。

 アジア協会は,昨年の奉仕活動の「ネパール大地震への支援」を通じて,大阪RCの皆様とのご縁を頂きました。おかげさまで,復興住宅3棟が完成し,避難袋も45世帯に配布できました。本当にありがとうございました。

 復興住宅は1軒の間取りが2部屋。現地の大工さんに工法をきっちり教えて,耐震基準の構造に準じて建てました。ネパールには習慣がない避難袋には,軍手とタオルと懐中電灯,そして救急箱を入れます。「避難袋を自分のかばんとして持って逃げて,頭も保護してください」ということも伝えて,現地での普及を目指しています。ネパールは一歩,また一歩と復興へ向かっています。

インド女性の自立支援を

 今年度は,貴クラブ国際奉仕活動として支援をいただき,女性自立支援のための「養鶏事業による生活改善事業」をインドのマハラシュトラ州で実施することができます。同州アムラワティ県のアチャプール地区の5カ村に住む少数民族の女性50人が対象です。地区の貧困率は40%に達します。女性たちが安定した収入を得て自立することで,自信を持ち,生活向上につなげることを目的にしています。

 人々は,家とは言い難いような状況下で日々,生活しています。暮らしを立てる上での主な収入源は農業ですが,農閑期には日雇い労働に出て,それで何とか暮らしが成り立っています。

 数字で見ると,インドの発展はめざましく,特に経済成長率は7.11%,今191ヵ国中10位で,名目GDPも世界第7位です。しかしながら,1人当たりの名目GDPに直しますと世界第145位です。これは経済成長の一方で,取り残されている人たちが多いことを意味します。実際1日1.9ドル以下を基準とした貧困率は68.7%に達しています。

 だからこそ,このプロジェクトは,ようやく毎日を暮らしている人々が一歩一歩,前進するうえで大きな意味を持つのです。数ヵ月後に皆さんに成果を報告すべく,がんばります。

日本とは違う南アジアの考え方

 南アジアの人々の考え方について,たとえ話をしましょう。久しぶりにおじいさんとおばあさんが,孫たちに会うため,息子の家を訪ねました。息子夫婦には最近3番目の子どもが生まれました。何を持っていってあげようか。農村では月に数えるほどしか食べることができない,たった2個の貴重な卵をお土産にしました。では,卵は誰と誰にあげたのでしょうか。

 日本だったら,赤ちゃんを生んだ後のお嫁さんにまず食べさせてあげたいと思うのが人情でしょう。私が,おばあさんだったとしても,そうします。でも,南アジアの場合,2個の卵があったら,1個目は自分の息子に,もう1個は孫の中でも長男,男の子である長男にあげます。悪気があるわけではなく,これが南アジアの一般的な考え方です。

 日本では,男女雇用機会均等法が制定され,昨今は「家事の平等分担」も言われます。でも,南アジアには「女性だから男性に従うのは当たり前」といった女性の否定から始まる社会が,現実として残っています。

 やはり,ヒンドゥー教の教えが大きいです。インド,ネパールは国民の8割が信者で,10億人以上のヒンドゥー教徒がいます。ヒンドゥー教の基本となるマヌ法典で「女性には天性の邪悪性がある」と言われます。具体的には少女,若い女,老女を問わず,女は何事にも独立してはならない,家事においてもしかりである。また,ほかの項目では,女は,幼児のときには父に,若いときには夫に,夫の死後には子に従属する,女は決して独立することはできないとあります。女性は幼い時に結婚したほうがよいという考え方も残っています。

 もちろん,ヒンドゥー教にはすばらしい部分もたくさんあります。だから,宗教をこちらが批判すれば,現地の人々の拒否反応につながりかねません。それは絶対してはいけません。「現状の否定ではなく,人々が疑問に感じたことを自らの手で変えていくことが,暮らしやすい社会を生む」。そんな風に,現地の女性たちに自覚してもらう。その味方になることが重要です。利害関係がなく,誰にとっても中立の立場で活動できるNGOの特色を生かしながら,これからも役割を果たしたいと思います。

(スライド・映像とともに)