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2017年12月8日(金)第4,651回 例会

「第1回上海アイザック・スターン
国際ヴァイオリン・コンクールで優勝して」

木 嶋  真 優 氏

ヴァイオリニスト 木 嶋  真 優

神戸生まれ。3歳でヴァイオリンを始める。2000年第8回ヴィエニャフスキ国際ヴァイオリン・コンクール・ジュニア部門にて日本人として最年少で最高位(1位なし第2位)を受賞。’11年ケルン国際音楽コンクールのヴァイオリン部門で優勝,その優れた音楽的解釈に対しDavid Garrett賞も受賞。 ’12年春にはケルン音楽大学を首席で卒業,’15年秋には同大学院を首席で卒業,ドイツの国家演奏家資格を取得。’16年秋神戸市文化奨励賞を授与された。使用楽器は,ストラディバリウス1700年製 Ex Petri。 ピアノ演奏・鈴木華重子氏:西宮高等学校音楽科を経て京都市立芸術大学卒業。その後渡米。国内各地でソロコンサート活動等活躍。現在堀川高校,大阪樟蔭女子大学講師。

 本日は,こうして皆様とご一緒させていただけるのをとても光栄に思っております。

 1曲目は,皆様にご挨拶の気持ちも込めまして演奏します。
――エルガー作曲 ♪「愛の挨拶」

 次は,打って変わってとても華やかな曲です。
――ファリャ作曲 ♪「スペイン舞曲」

 3曲目は「アベマリア」です。
――カッチーニ作曲 ♪「アベマリア」

 最後の1曲です。お聞きくださいませ。
――モンティ作曲 ♪「チャルダッシュ」

(会場から盛んな拍手)

 どうもありがとうございます。
 いつもはコンサートでヴァイオリンしか弾かないのですが,今日はせっかくですので,皆様の前でお話しさせていただきます。
 私は,神戸生まれ,神戸育ち。3歳からヴァイオリンを始めました。小学校5年生の時,アメリカでのセミナーをきっかけに,海外で勉強したいと強く思うようになり,親に懇願して,中学2年生のときに日本の学校をやめて海外に留学しました。それから,ドイツやヨーロッパなど海外を拠点に活動しておりました。一方,海外で過ごせば過ごすほど,自分が日本人であることを深く感じるようになりました。3~4年前からは,日本国内で演奏する機会を増やしています。

異国で頂点,自分を見つめ直す

 2016年9 月,私は上海アイザック・スターン国際ヴァイオリン・コンクールに出場しました。実は音楽家としては,音楽や芸術はスポーツと違って,コンクールのように「点数」で争わせるものではないと考えていました。人それぞれに感動するもので,感じ方が違います。それを「点数」にして評価することは,私の中では考えれば考えるほどすごく矛盾していたのです。
 私自身,13歳の頃,もう勢いで,そして皆様のご協力で受賞(第8回ヴィエニャフスキ国際ヴァイオリン・コンクール・ジュニア部門日本人最年少最高位)させていただきました。しかし,いろいろなことが見えるようになってきてからは,うまくいかないことがすごく多くなったのです。
 ただ,新設された「上海アイザック・スターン国際ヴァイオリン・コンクール」は故人の巨匠ヴァイオリニスト,アイザック・スターン氏にちなんでつくられたコンクールでした。私自身,小さい頃アイザック・スターン氏にレッスンを受けていたこともあって,初めて興味を持ちました。うまくいかなかったということをずっと引きずるよりも,これを最後のチャンスとして,自分が満足する演奏をしようと考え,出場しました。
 コンクールは1ヵ月強という長い期間に及びます。その間,日本から食べ物を全部持ち込み,24時間ホテルにこもりっきりで誰とも話しませんでした。ネット環境のSNSから自分を断ち切る,とてもいい機会にもなりました。現代社会では不要な,本当は聞きたくない情報も入ってきますが,それが一切なくなったのです。3歳から始めてきた音楽人生に向き合って,私とヴァイオリンしかない生活を過ごしました。
 その時,小さい頃から,本当にたくさんの方のご協力のもとにヴァイオリンを続けてこられたと考えました。コンサートでも,本当にたくさんの方のご協力があり,その上で,私が1人,舞台の上で拍手を受けているのだということを実感しました。私の人生の中で一番実りのある1ヵ月強でした。それがたまたま優勝という形になって,とても光栄に思いました。

感謝を込め,関西で音楽活動へ

 私自身,これから何をしたいかなと考えた時,生まれ育った関西に戻って,文化面やコンサートにもっと携わりたいという気持ちが強くなりました。海外に13歳の頃から行き,大変だったということを忘れるぐらい夢中で今までやってきましたが,この数年は自分だけのためだったらなかなか乗り越えられないこともたくさんありました。今までこうして音楽人生を歩ませていただいた中で関わってくださった方,育ててくださった方,コンサートにお時間を割いて聴きにきてくださる方たちに対して,私ができる形で恩返しをしたいと思うようになったのです。それが今一番の私のモチベーションになっております。これからは大阪で,関西で,もっといろいろと活動をしていきたいなと思っております。
 今日,初めて私の演奏をお聴きくださった方も,初めてこうしてお目にかかる方も,今まで直接的でなくても,間接的に私の関西での活動に関わってくださった方も大勢いらっしゃると思います。ありがとうございます。そして,これからもよろしくお願いいたします。