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2017年5月12日(金)第4,624回 例会

消費の二極化時代を表す食市場のトレンド

山 下  智 子 氏

(株)ひめこカンパニー
代表取締役
山 下  智 子 

フードビジネス・マルチプロデューサー。女子栄養大学客員教授。1988年,食業界のシンクタンク(株)ひめこカンパニーを設立。代表取締役に就任。食業界全般,流通業界で幅広く活動。商品開発,広告・SP企画,マーケティング,レストランプロデュース,メニュー開発,売り場開発,戦略立案等,外食,中食,内食と幅広い食フィールドでビジネスを展開。

 本日は「二極化消費」についてお話しします。二極化消費には四つのパターンがあります。一つ目は,富裕層の消費と大衆の消費という二極化。二つ目は,「たまハレ消費」や「自分ご褒美」といった,普段節約や我慢をしていると揺り戻しで起きる消費の二極化。三つ目は,好きなものにはお金を使っても,どうでもいいものは100円ショップで買うという「メリハリ消費」の二極化。そして四つ目は,SNSに載せるものにはお金を使っても,載せないところには使わないという「見せない消費と見栄え優先の消費」の二極化です。

ヒットを飛ばすプレミアム商品

 富裕層のプレミアム消費についてですが,「阪急梅田本店」が200万円以上のドレスを集めたコーナーを設けたり,「JTB」で1人1,000万円超のツアーが売れていたりと,富裕層は一定いて底堅い安定した利益を得られるため,こういうサービスは以前ほど下火にはなっていません。

 一方,一般大衆の「たまハレ消費」は,たまにはいいものを食べたいということで,高級なポテトチップスやカップヌードル,アイスクリームなどプレミアムな食品が売れています。「なか卯」では,少し高めの魚介系メニューやローストビーフ丼を出したら,高齢者が続々と来店するようになったそうです。

 また,賃金が上がらないなか,メリハリをつけた消費をしようという動きがどんどん出てきています。スーパーマーケットで7割ぐらいの商品が昨年よりも安くなる中,カカオ成分が多い「粒チョコレート」や食物繊維の多い「シリアル」など,健康にいい商品は少々高くても売れています。こうした「メリハリ消費」に対応するため,「イオン」や「セブンイレブン」では日用品を下げる代わりに,プライベートブランドはどんどん高価格帯にシフトし,利益を確保しています。イオンがフランスから誘致した冷凍食品専門店「ピカール」は,当初青山と麻布十番にできましたが,売れすぎて品揃えが追いつかず,中目黒への出店が遅れたほどでした。

 四つ目の二極化「見せない消費と見栄え優先の消費」ですが,例えば山盛りの「ローストビーフ丼」は1,000円ぐらいしますが,スマホ,SNSに16万回載っています。写真を撮るためには多少高くても出す。その代わり,載せないものは400円のマックでも,安い牛丼でもいいということです。見せる消費の人たちに売れているのが,食材とレシピがついたグルメな料理キットです。2人分で6,000円ぐらいします。「リア充」という言葉が流行っていますが,要は,私の日常はこんなに充実しているという姿をSNSに載せるためには,私の日曜日はオマールエビで,あるいはフォアグラで,ムール貝で,とならなきゃいけない。SNSに載せるための消費行動ができてきていて,食べるための料理ではなく,見せるための料理がお金を払う対象になってきています。

デリバリーが多様に進化

 食市場は生活に密着しているので,景況感に大きく左右されます。現在の景況感ですが,1年後と予想が同じです。要は,今は良くないけど,来年もいいと思えないということです。今と似ているのが2006年です。キーワードがすごく似ていて,今からお話しする宅配ビジネスもこの年に流行っていて,やはり生活者の財布の紐が固いときは,食市場も似てくるという傾向です。

 少し景況感から話はそれますが,「グルメなデリバリー」として話題の最新の動きをお話しします。

 アメリカの「ウーバーテクノロジーズ」が日本で宅配を始めました。利用者がスマホアプリで店とメニューを決めると,平均して34分ぐらいで届けてくれます。海外では,新しいフードデリバリーサービスが続々と誕生しており,アメリカでは一流シェフが待っているだけの商売ではダメだと,宅配を一生懸命やっています。パリの場合は,レストランでテロがあったので,恐くて外食に行けない。でも,おいしいものは食べたいということで,宅配が流行っているようです。

 面白い試みとしては,自走式ロボットでの宅配がワシントンで始まっています。信号が赤だと止まるし,人とすれ違う時は待つこともできます。オーストラリアでもドローンで運ぶピザ屋があります。アメリカのベンチャー「ズームピザ」は,トラックの中に56個のピザ焼の窯が入っていて,電話やインターネットで注文を受けると,トラックで走りながら焼きます。宅配先まで20分,ピザを焼くのに10分かかるとして,10分走ってから焼き始めれば熱々が届けられるということになります。

科学でつくる食の未来

 「サイエンスフード」について少しだけ触れます。これから地球の人口が拡大していくと,科学でつくった食を好きでも嫌いでも食べざるを得ないことになります。オランダでは人造肉というのがつくられていて,2013年夏にはハンバーグ1個当たりの肉の価格が3,500万円かかったんですが,わずか1年たたずして10ユーロ,約1,400円まで下がりました。こういうところに投資家のお金が集まるので,開発の速度が早い。目に見えない肉の繊維から培養していく技法ですが,多分10年後には,アメリカでは豚肉,鶏肉,牛肉の人造肉が一般で売られるだろうと言われております。

 日本でも,ゲノム編集で満腹中枢を刺激していくらでも餌を食べられるようにし,フグの成長期間を2年から1年に半減する取り組みが進んでいます。これから先,フグは大衆魚になっていくと思われます。

(スライド・映像とともに)