大阪ロータリークラブ

MENU

会員専用ページ

卓 話Speech

  1. Top
  2. 卓話

卓話一覧

2017年3月17日(金)第4,618回 例会

クリエイティブ経営

岡 崎  忠 彦 氏

(株)ファミリア
代表取締役社長
岡 崎  忠 彦 

1969年生まれ。’92年甲南大学経済学部卒業。その後,米カリフォルニア美術工芸大学(現カリフォルニア美術大学)工業デザイン科卒業,グラフィックデザインの仕事に従事。2003年(株)ファミリア入社後,執行役員・取締役などを経て’11年代表取締役社長に就任,現在に至る。

 実は,私はファミリアに入るまでは,グラフィックデザイナーとしてアメリカでデザインをしていました。ところが,急に日本に帰って会社の経営を継ぐことになり,自分の中でいろいろ悩みながら進めてきたやり方についてお話しします。

会社再生の六つの施策

 昨年10月からNHKの朝の連続ドラマ「べっぴんさん」で弊社創業の話を放映していただき,非常にありがたいなと思っていますが,今流の言葉で言うと,ファミリアは4人のママ友がつくったベンチャー企業でした。女性たちでスタートさせたところがポイントだと思います。神戸が空襲を受け,預金封鎖に遭い,女性が働かないといけない中で,日本が良くなるためには「子どもたちが健やかで豊かな生活をせなあかん」という思いからわきあがったベンチャーマインドでできた企業でした。根幹にあるのは,洋服をつくるだけではなく,育児法からスタートしたということです。どちらかと言うとコンテンツが大事だったのではないかと思います。

 2011年に社長になった時は,ビジュアルで言うと,目の前に氷山があり,このままいけば会社は存続できないような時期でした。父が急に他界し,これからどうしようという状況でした。最初にとった行動は「開き直る」ということでした。会社は何でできているのかと考えたら,やっぱり「人でできている」と思い至り,今いる人間がいかに元気になれるか考えていこうと決意しました。

 肥大化した会社をシンプルにダイエットさせるために六つの重要施策を考えました。

 一つ目は,おじいちゃま,おばあちゃまのお客様が多かったのですが,赤ちゃんのお母さん,お父さんにお客様になってもらうため,ブランドをブラッシュアップしました。

 二つ目は,店舗営業力の強化。もう一度社員教育に投資しようと徹底的なコミュニケーションを図りました。

 三つ目は,商品開発力の強化。「僕たちは過去の伝統で食ってるんだよ」と言っていましたが,それではいけないと思い,改めて,糸から見直して商品開発をやっていきました。

 四つ目は,粗利益の改善。利益を出していくため,いかに数字じゃなくて中身を見ていけるか。ちゃんと利益体質が出るように改善していきました。

 五つ目は,業務効率化の推進。会社が中途半端に大きくなっていると,要らないもの,例えばセクショナリズムとか,見えていないところがいっぱいありました。これをいかにフラットにしていけるか改革に取り組みました。

 六つ目は,ファミリアは女性がスタートさせた会社なので,次の時代に向けて再び経営陣を女性にしていこうと,日々いろいろな教育をしているところです。

100年企業になるために

 今年で弊社も67年目を迎えますので,100年企業になるためにはどうしていくか模索していこうと,会社のビジョンを決めました。「世界で最も愛されるベビー・子ども関連ベンチャー企業になること」。親父が言っていたことをビジョンとして焼き直し,「子どもの可能性をクリエイトする」という企業理念を打ち立てました。これがドメインになれば,洋服をつくるだけじゃなく,いろいろなことができるのではないかと考えています。

 そこで,今一番大事にしたいコンセプトが「最初の1,000日間(For the first 1000days)」というものです。「妊娠されてから2歳の誕生日までの1,000日間を,世界で最も高いコンテンツ力とサービス力を持った会社にしたい」という思いで,いろいろなプロジェクトを立ち上げました。僕たちは生まれてくる赤ちゃんに最初にいろいろな情報を与えられるという,非常にいいポジションにいます。いかに最初にちゃんとした食育をするか,ちゃんとした情報を与えるか,ちゃんとした生活の提案をするか,本物を体験してもらうかといったことがドメインになると思っています。

4人の創業者なら何をするか

 保育事業として,白金や西宮で本物を体感するプレスクールを手がけています。預かるだけじゃなくて一瞬一瞬をしっかりと教育していくプログラム。食事は全部オーガニックで,子どもたちは献立を聞いてから「いただきます」と食べてくれます。アートクラスでは,銀座のアートギャラリーの有名な書道家の先生の下で,「最初は字を書くんじゃなくて筆遊びから」ということで,紙に筆の筆圧を感じるところから始めています。最初に触れるものをいかにベストなものにしていけるか徹底的に研究していきたいと思っています。

 一つ事例をご紹介すると,群馬県のシルクを使ってニット素材の肌着をつくりましたが,開発に2年半かかりました。30回の洗濯試験でも縮まないことを会社基準としています。そういうことを信じてやっていけば,イノベーションが起こると信じています。

 それから,ネットの時代に向けて,体感型の店を代官山につくりました。商品を置くだけではなく,体感していく時代になるということで,売り方も変えていこうと,いろいろとチャレンジをしています。蔦屋さんと組んでやっている店では,本屋さんの中に子ども服屋を展開しています。

 僕たちが常に思い描いているのは,あの4人の女性たちがいたら,今何をするかということです。そして,ベンチャー精神です。世の中の流れをちゃんと見ながら,次何をするのか見極めていく。この女性たちでスタートしたビジネスを次の時代にどうやってつなげていくか,これからも真剣にやっていきたいと思っています。

(スライド・映像とともに)