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2017年1月27日(金)第4,611回 例会

PLGAナノスフェアと抗酸化機能および発毛効果

三 羽  信比古 氏

広島県立大学
名誉教授
三 羽  信比古 

1949年大阪生まれ。’71年大阪大学理学部卒業,同大学院修了。東京大学薬学博士取得。国立予防衛生研究所・主任研究官。’94年広島県立大学教授。NPO法人・日本老化防御医科学センター理事長。

 「PLGAナノスフェア」というタイトルになっていますが,「PLGAナノ粒子」と言わせていただきます。このPLGAナノ粒子は,乳酸,グリコール酸が多数連鎖した高分子で,人の細胞のおよそ150分の1から280分の1の大きさですので,細胞の中に非常に取り込まれやすく,毛細血管も自由に通過できます。

育毛成分を毛穴まで運搬

 こちらは皮膚の断面写真ですが,「クマリン」という色素を皮膚に塗布しています。4時間たっても,あまり皮膚の深くまで浸透していませんが,PLGAナノ粒子に封入させると,時間ごとに次第に浸透し,4時間後には毛穴にまで到達しています。

 これは40歳の女性の毛根における薬用成分「ヒノキチオール」の分布の違いを示しています。ただ塗っただけの上半分は分布が薄い。ところが,下は圧倒的に分布が厚く,育毛成分を深く届けるには,PLGAナノ粒子が非常に重要,かつ不可欠ということがご理解いただけると思います。

 皆さん,いろいろな発毛育毛剤を利用されていると思いますが,毛根や毛乳頭,毛根細胞にまで到達すれば確かに効きます。しかし,到達するまでが難しい。到達させるには,運搬役が必要です。それがPLGAナノ粒子の役割だと覚えていただければ光栄です。

市販の育毛剤より効き目も早い

 育毛機能をマウスで調べました。上の画像①は,マウスの背中を毛染めしています。白っぽく見えるのは背中の一部で,毛を剃った後になります。背中の中でも尻尾に近い部分をバリカンシェーバーなどで毛を剃りました。ヒノキチオールを塗っただけの②は,薄っすらぐらいで,あまり毛が増えていません。PLGAナノ粒子に封入させた③を見ますと,非常に濃くなっています。続いて,ベンジルアミノプリンという育毛剤で実験しましたが,溶液だけを塗ったものが④です。ほぼ白いままで,発毛はしておりません。PLGAナノ粒子に封入した⑤は,かなり黒くなっております。

 市販の育毛剤との比較でも,何も塗布していない⑥,市販の育毛剤を塗った⑦,そしてヒノキチオールを封入したPLGAナノ粒子を塗った⑧の変化を見ますと,⑧の発毛効果が優れていることが分かります。ローションに溶かした最終商品形態でも,効果があることが確認できています。また,12~14日後には80~90%まで生えており,他社の育毛剤よりも立ち上がりが早いという点も重要な事実と言えます。

 水素はご存知の通り,宇宙一,小さな分子です。皮膚への浸透力が非常に優れており,PLGAナノ粒子とは構造が違うので,併用するとお互いを高めあうという素地を持っております。水素は活性酸素そのものを消去してくれるため,皮脂・角栓が毛穴を塞いで皮膚呼吸を妨げるのを防御してくれます。非常に強力な活性酸素消去剤である水素,これを活用しない手はないと考えております。

ガン転移への安全性確認

 次に,PLGAナノ粒子の安全性,ガンの転移,促進はないということについてお話しします。

 ネズミの尻尾の根元にほくろのガンと言われるメラノーマを注射します。こちらは肺に転移した画像です。左上は薬剤投与しておらず,この黒い点々,メラノーマが多数見られます。ところが,ビタミンCを注射すると,黒い粒々は見られません。つまりビタミンCが活性酸素を消去し,その活性酸素によって誘発される転移を抑制したと考えられます。

 右上は,発ガンプロモーターのPMAを与えたもので,黒い点々が増えています。左下は,PLGAナノ粒子ではありませんが,それと似通った製品を空の状態で,つまり中に何も封入しないで与えた場合ですが,多少抑制しています。同じくPLGAナノ粒子の空の状態のものを与えた画像ですが,これも若干かもしれませんが抑制しています。一方,右下,これはガンを移植していません。したがって転移するはずはないのですが,あえてそれも調べてみました。空のPLGAナノ粒子を与えると,やはり全く転移していません,黒い粒々が表面に見られません。

 このように,PLGAナノ粒子は,中に何も封入しなければ転移を促進しないことが証明されております。これでメデタシと言えるのですが,やはり最終商品で見ておかないといけません。PLGAナノ粒子の最終製品では,実際にヒノキチオールなどの育毛剤に加え,ほかにも基材となるものがいろいろ入っていますから,そういったものを総合して,ガン転移を本当に促進しないかどうか,きっちり調べる必要があると思います。

 ビタミンCのなかでもVCIPというプロビタミンCがございますが,ガン転移を減らしてくれます。こういうものに発育毛効果があれば一番よいということになります。

 私どもはこれを1匹ずつ調べました。この棒線一つが1匹に当たりますが,薬剤投与なしではがん転移数は少ない。ところがこの有害化粧品は,5匹のいずれをとっても転移の数が多いが,プロビタミンCは少ない。そして,上の部分はガン転移一つの結節当たりのサイズですが,サイズは変わりませんでした。転移というのは,サイズを増やすものではなく,サイズに関係なく結節の数を増やす,これが重要だということが分かりました。

 このように転移抑制を非常に幅広くやっておりますが,まだPLGAナノ粒子の最終形態の商品についてはやっておりません。今後,活性酸素を消去する最小分子である水素製剤を配合したPLGAナノ粒子の開発,PLGAナノ粒子の最終商品形態である育毛剤自体の皮膚がん,メラノーマ転移への影響を調べる。こうしたセキュリティーを解析することが必要であると思います。

(スライドとともに)