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2016年12月16日(金)第4,607回 例会

百貨店の店頭から見た本年の消費動向

好 本  達 也 氏

(株)大丸松坂屋百貨店
代表取締役社長
好 本  達 也 

1956年生まれ。’79年慶応義塾大学経済学部卒業後,(株)大丸入社。店舗・本社の部長,東京店長を歴任。2010年1月J.フロントリテイリング(株)執行役員。同年3月(株)大丸松坂屋百貨店執行役員。’13年4月同社代表取締役社長,(株)大丸松坂屋セールスアソシエイツ代表取締役社長,同年5月J.フロントリテイリング(株)取締役。東京日本橋RC会員。

 恒例により,「百貨店の店頭から見た本年の消費動向」についてお話しします。私どもの社員モデルによるミニファッションショーも行いますので,どうぞお楽しみ下さい。

「爆買い」に変化

 今年の個人消費は節約志向から抜け切れず,全般的には厳しかったと言わざるを得ません。前年売上をクリアできた月を「勝ち」,できなかった月を「負け」とすると,10月までの10ヵ月間で百貨店は1勝9敗,スーパーマーケットは4勝6敗,コンビニは既存店ベースで7勝3敗,全店ベースでは10勝0敗で,業態の中でも明暗が分かれました。

 百貨店の1勝は2月で,今年はうるう年で1日多いハンディに助けられた面もあります。百貨店が苦戦している原因の1つは免税売上です。訪日外国人の増加で数年前から大きく伸びましたが,今年4月から前年割れが続いています。「爆買い」が変化し,以前は団体で慌ただしく高額品などの定番商品を買っておられましたが,今は化粧品などが伸びています。せっかく日本に来たのだから自分に合った商品を選んでもらうなど,日本人の普段の買物体験をしたいと変わってきています。

 大丸松坂屋百貨店の訪日外国人の免税売上は2013年が33億円で,’15年には10倍の338億円になりました。香港,台湾を入れると中国の方が85%以上ですが,中国では昨年4月から贅沢品の関税が30%から60%に上がりました。日本,韓国から再入国する人々の税関でのチェックも厳しくなり,そういう影響も大きいです。ただ,一人当たりの買い上げ額は下げ止まってきており,免税売上は来年3~5月くらいからプラスに転じるとみています。

 商品カテゴリーでは食料品が健闘する一方,婦人服など衣料品は苦戦しています。消費者の価値観やライフスタイルが変化し,ファッションにお金をかけなくなっていることが根底にあります。最近では1世帯で服や靴にかけるお金は1ヵ月に約1万1,000円で,20年前の半分です。将来不安が消費の重しになっているとの指摘もありますが,モノ余りの時代で,商品やサービスに新鮮な驚きや感動がないと財布のひもは緩めてもらえません。ただ,モノやサービスを買っていないわけではなく,インターネット通販は伸び続けています。’15年度は13.8兆円で,物販に限っても7.2兆円と,既に百貨店を上回っています。

3 つのキーワード

 今年の消費に影響を与えたキーワードは「SNS映え消費」「リバイバルのリバイタル」「マイナス金利消費」の3つです。SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)は,FacebookやTwitter,Instagramなどで写真や動画を投稿し,「こんな生活をしている」「こんな体験をしている」というアピールが憧れや興味,消費意欲を喚起し,購買や行動の動機につながっています。

 SNS映えする今年のトレンドファッションをご紹介します。今年の冬は重苦しいダークなカラーではなく,写真にきれいに写る明るく柔らかいパステルカラーが注目されました。なかなか新しい服は売れませんが,手持ちの服にプラスして新鮮さを演出するアイテムは好調で,この秋冬はなんといっても「ファーアイテム」です。靴のデザインでは非常に太目で安定感のあるヒールが特徴の「チャンキーヒール」が注目されています。一味違った雑貨を身に着け,SNSに投稿することで「いいね!」がたくさんつき,シェアしてもらえることは間違いないと思います。

 2つ目が「リバイバルのリバイタル」で,ファッションではバブルと呼ばれた1980年代に流行したアイテムが復活しています。昔からある商品を復刻し,今風に演出したものからヒットが生まれています。スカジャンのほか,映画「トップガン」でトム・クルーズが着用して流行したフライトジャケット「MA-1」も人気が復活しました。こうしたメンズアイテムをあえて女性らしい花柄と組み合わせるコーディネートが今風です。肩にボリュームのあるシルエットや,着古したように加工したジーンズも80年代の象徴で,女性のメイクでも太い眉に赤い口紅が復活しています。

マイナス金利の影響

 3つ目の「マイナス金利消費」は,マイナス金利の導入で預金に金利がほとんどつかないなか,いろいろなおトクを見つける消費者の動きがありました。百貨店では1年間お金を積み立てると1ヵ月分のボーナスがつく「友の会」が注目されています。単純計算でも8%お得で,当社では「友の会」新規入会が,ゼロ金利になった昨年2月から前年の約2倍のペースで増えています。「自分への投資」とばかりに,趣味性のモノや資格,習い事にお金をかける動きもあります。安定資産の「金」にも注目が集まり,金製品がよく動く松坂屋上野店では,7月~10月の売上が前年比で60%以上上回りました。

 当社は来年創業300周年を迎えます。長年ご愛顧いただいた感謝の気持ちを込め,関西各店舗でも様々な企画を用意していますので,是非ご期待ください。

(スライドとともに)