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2016年10月28日(金)第4,601回 例会

全国の花街と奈良の芸者

大 野  菊 乃 氏

奈良町元林院
花街復興プロジェクト
代表
大 野  菊 乃 

大阪市生まれ。1996年奈良・菊水楼にてお披露目,芸妓になる。2004年花柳流専門部。新歌舞伎座,国立文楽劇場,松竹座,東京歌舞伎座等にて日本舞踊やお囃子の舞台に出演。関西地方を中心に公演やテレビ出演等にて活躍中。’13年(株)つるや代表取締役。同年と翌’14年,ニューヨークでの二度にわたる海外公演を成功させる。今年2月,奈良市にて全国8花街から芸舞妓を招いての「ならまち花あかり」を花街復興プロジェクトとして主催。

 皆さん,(奈良の)元林院という町をご存知でしょうか。明治5年に花街として成立した町で,その前は,絵師が住む町と言われていました。全国に花街は44ありますが,元林院は全盛期の昭和中期,200人の芸妓さんがいました。

 奈良には当時,お茶屋さん,置屋さんともに30ほどあったんですが,今はお茶屋さんは私のところの1軒のみ。置屋さんは3軒残ってはいますが,うち2軒は70代のおねえさんがいてるだけで,ほとんどお座敷には上がられません。

 今残っている芸者さんは私1人です。それと,3年ほど前に,中学校の理科の先生だった女性が,ずっと地方(じかた)として生きたかったということで,早期退職されて私のところに来ました。その方と,昨年埼玉から来て舞妓さんになったひとの3名で活動しております。

大和をどりの復活

 この(画像の)「ならまち花あかり」は,2月に全国から芸妓さんを呼んでイベントをしたものです。60年ほど前,奈良には「大和をどり」というものがありました。京都の「都をどり」や「祇園をどり」「鴨川をどり」といった会が奈良でもあったわけです。

 当時の行政の人たちは,これを継続して奈良の大きなイベントにしようと思っていましたが,数回で途絶えてしまい,大きいおねえさん方は「いつかこの大和をどりが復活できたらいいね」って口々に言っていました。

 私は3,4年前に,奈良市の30~40代のいろんな職種の人で元林院花街を盛り上げようという「奈良・元林院花街復興プロジェクト」をつくりました。デザイナー,行政書士,税理士,料亭の社長さんなど10人ほどがメンバーに入っていて,こうすればいいんじゃないかという意見をいただき,いろいろな活動をしています。

 私が「奈良で大和をどりができたらいいけども,いかんせん,3人だけでは私のリサイタルショーになってしまう」と言うと,「それなら,全国に菊乃さんの芸妓さんのお友達がいっぱいいるから,その人たちに手伝ってもらったらどうかな」ということで,「そういう手もあるけど,そんなん花代高いやろうな」,「ちょっと無理ちゃうかな」とか言いながら,「声掛けるだけでもやってみようか,ちょっと進んでみようか」ということで,1年がかりでいろいろな芸妓さんを口説き落としました。

 今回はお友達の花街ばっかり,京都の祇園甲部さん,上七軒さん,福井浜町さん,岐阜の鳳川伎連さん,金沢ひがしさん,東京の浅草,品川,そして元林院の計8花街の芸妓さん,各2人ずつを呼ばせていただきました。一番ネックの花代については,奈良の行政の人たちに「何とかしてこういうことをしたいんやけど」って相談に行きましたが,「今回は1回目やから,実績をつくってもらわんとな」ということで,私の貯金を全部吐き出しました。

全国の花街に広げたい

 何で「花あかり」という名前かと言いますと,奈良だけのイベントにしたくないからです。全国には人数が少なくても何とか伝統の灯を消したくない,街を守りたいと思っている花街があります。大阪にも南地花街の「島之内たに川」さんが,お茶屋さん1軒で頑張っています。そういった街で花のあかりをつないでもらいたい,いつかは,例えば「おおさか花あかり」とか,いろいろな場所でしてもらえるように,そして,今まで「花あかり」に出た全国の芸妓さんたちが助けに行けるようにということで,「花あかり」という名前をつけたわけです。

 「ならまち花あかり」では,踊りの会,大宴席,花街日本酒バルなどのイベントをしました。日本酒バルは,2月の終わりは新酒が出る頃ですので,奈良の酒蔵さんに協力していただき,そして全国の芸妓さんたちにお酒を持って来てもらって行いました。元林院町付近の料理屋に芸妓さんを置き,付き出しを出してもらい,ワンコインで飲めるようにしました。それと,東大寺さんの金鐘ホールをお借りし,芸妓サミットをしました。帝塚山大学の西山厚教授に花街についてお話をしていただき,コメンテーターとして奈良市の市長さんや,せ・ん・と・く・ん・の作者の藪内先生,そして私と芸妓さんたちでこれからの花街,奈良のことを考えるといったイベントをしました。

海外公演の夢に向けて

 今年は8花街だけでしたが,来年は10花街以上を目標に,九州地方やいろいろな街の芸妓さんに電話をしております。多分,来年はもっとたくさんの芸妓さんが来ると思いますが,大切なのはまた花代です。奈良県や市の方に「何とかお願いできませんか」と頼んだり,スタッフがありとあらゆる助成金探しに四苦八苦したりしておりますが,大丈夫かどうかというところです。

 「ならまち花あかり3ヵ年計画」というものがありまして,来年は10花街以上,その次はもっともっと多くの花街を呼ぶ。ゆくゆくは,「ならまち花あかり」,全国の芸妓さんを連れて海外で公演するというのが私の夢です。「こうしたい,ああしたい」って毎日,毎日いろんな人に言っていると夢は叶うもんだと思っております。

 皆さんも,来年の「ならまち花あかり」に来てもらえたらうれしいです。あと,ご協賛も募集しております。大きな会社さんがいっぱいおられると思いますので,どうぞよろしくお願いいたします。ご清聴ありがとうございました。

(スライドとともに)