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2016年10月14日(金)第4,599回 例会

生き続ける企業を目指して

鈴 鹿 可奈子 氏

(株)聖護院八ッ橋総本店
専務取締役
鈴 鹿 可奈子 

京都市生まれ。京都大学経済学部経済学科卒業,在学中にカリフォルニア大学サンディエゴ校エクステンションにてPre-MBA取得。卒業後,信用調査会社勤務を経て,2006年聖護院八ッ橋総本店入社。「守るべきことを守ること,続けていくことが大事」という父・鈴鹿且久社長のもと,長い歴史と伝統の味を守り受けつぎながらも,新しい商品づくりに日々努めている。’11年には新しい形で八ッ橋を提供する新ブランド「nikiniki(ニキニキ)」を立ち上げた。現在,専務取締役。

 社長である父から言われている企業理念として「味は伝統」という言葉があります。どんな時代でも八ッ橋を食べられたお客様が「このお菓子おいしかったな」と思われ,笑顔になられる。おいしいと思われる気持ちをずっと同じにしていきましょう,というのが意味するところです。

 父が必ず新商品開発の際に問いかけるのが,「この商品は100年続きますか」という言葉です。単なるはやりに沿った味で,今売れるから出すのではなく,今後も愛される,自信を持って送り出せる味かどうかという部分を大切にしています。

京都の若い方にも

 私は会社に入ってから,若い方にどうやって食べてもらおうかなという思いをずっと抱えて過ごしていたのですが,2011年3月に「nikiniki」というブランドを立ち上げました。八ッ橋をあまり口にしてこなかった方に食べてもらいたいという思いがあったからです。

 店構えはオープンになっていて,パッとのぞいて見ていただける。並んでいる商品がカラフルなかわいいものだと,地元の若い方でも「何か買って帰ろう」と思っていただいて,そこで初めて「実はこれ,八ッ橋でできているんですよ」というお話をすると驚かれる。「八ッ橋はおいしいものだ」と1人でも多くの方に分かっていただきたいと始めました。

 「nikiniki」はお客様がどんなものが好きかを見極めるパイロットショップにもなっています。ここから生まれた聖護院の商品もあり,逆に100年続く商品が聖護院八ッ橋総本店のほうでも出せるようになったのではないかと思っています。

 私たちの得意なことは何かと考えたら,320年以上続いてきた八ッ橋であり,そこに使っている味の根幹となるシナモンですから,それを専門としたお店をやっていこうと,関連する商品しか出さないようにしています。

100年,200年後を目標に

 経営をするに当たり,父から最初に「削るべきところもあるけれども,残しておくべきところというのもあるんだよ」と言われました。父はこれを「提灯経営」と呼んでいて,「パンパンになってしまったら破裂してしまうから,提灯のように伸び縮みできるゆとりを持った経営方法をしていきなさい」と言われたんです。

 私たちのお商売,特に観光客の数に左右されます。「そのときに,ゆとりのある経営をしていたら,普段は削れると思っていた部分をその年には削る。そうやって生き延びていく。そうすることで続いていくんだよ」と教わりました。

 この時に,「経営をするに当たって,何を目標にするか」という話も父としていました。この会社がずっと大事にしていた経営方針はこれだと思ったのが,短期の目標は具体的に立てていないということです。方針を立てるに当たって,それを一番にしてしまうと,お客様の信用も失うような商品も出てしまう。「100年後,200年後も八ッ橋というお菓子が存在していて,それを食べる方がおいしいと言ってくださるかどうか」。そこだけを目標にしてまず考えていく。

 だから,どんな新商品,戦略を立てるに当たっても,まず考えるのは「100年後,200年後どうなる」という部分で,それに合致して将来的な存続に貢献すると思ったら,細かく計画を立てていく。こういう方針をとっているので,うちの会社はドッと伸びたということはないのですが,ずっと続いていくことができたと思っています。

阻害しないものづくり

 また,その考えに基づいて経営していく途中で父と何度も話し合い,今,これこそがそのやり方を担っていると思うのが,「どんなお客様も阻害しないものづくりをしていきなさい」ということなんです。

 京都府さんとアニメのコラボレーション商品を出しています。15分で何百個も売れるなど需要がある商品ではあるのですが,京都府さんのブースでは置いても,うちの店では置かない。なぜかと言うと,そういう商品が1つでもあったら,これまで買いに来て下さっていたお客様が,「もうこのお店は若い人のほうを向いて,自分たちには向かないんだな」と思ってしまわれ,イメージが変わってしまうからやめましょうということで,置かないようになりました。

 これも阻害しないという考え方の一つと思っていまして,阻害しないってどういうことかなと思った時に,嫌な思いをするお客様をできる限り減らす。というか,私たちが提供するもので嫌な思いをする方がいないように努めていく。それが結局,100年後,200年後も愛されるということにつながっていくのではないかと思っています。

 最後,まとめになるのですけれども,結局,お菓子はおいしいから食べるもの,おいしくなければ食べないんです。だから,私たちができることは,とにかくおいしい八ッ橋を毎日つくること。そして,そのおいしさを1人でも多くの方に知ってもらうために方法を考えていくことかなと思っています。

 100年後,200年後はどんな時代になっているかわからないけれども,毎日試食をして,「ああ,今日もおいしい」とつくっていく,それしかないのかなという思いでこれからも続けていきます。

 本日はありがとうございました。

(スライドとともに)