専門 素粒子論(ニュートリノ・宇宙)。1945年生まれ。’68年大阪大学理学部卒業,東京大学大学院修士,メリーランド大学院Ph.D。その後,オハイオ州立大学,テキサス大学,オレゴン大学研究員。’80年大阪大学助手,’89年同教授。2007年理事・副学長。’11年退職。現在大阪大学名誉教授。当クラブ入会’08年1月。’12年副S.A.A.,’14年青少年奉仕委員長・理事。本年度副会長・クラブ奉仕委員長。米山功労者・PHF(ポールハリスフェロー)。
本日は,「多様性を尊重し,信頼を深めよう!」という本年度の宮原会長の方針について,ロータリーの原点から考えていきたいと思います。
「ロータリーの樹」という資料があります。2008年のRI国際協議会の全体会議で,渡辺好政RI理事がロータリーを一本の樹に例え,「ロータリーにおける職業奉仕の重要性」について講演を行いました。その内容を少し訂正し,2013年のシカゴ開催の規定審議会で正式に公認されたものです。樹の根っこに「超我の奉仕」「最もよく奉仕する者,最も多く報われる」という二つのモットー,四つのテストがあり,根っこから出た幹が職業奉仕,その枝,果実が青少年奉仕,国際奉仕,社会奉仕であるという位置づけになっております。
渡辺好政さんの説明を読ませていただきます。――ロータリーの樹に水と栄養を送る「根」は「クラブ奉仕」であります。会員は,クラブという学校で「相手のことに思いを馳せ,相手を助ける」という「奉仕の理想」を学び,その真意が「共存共栄」であることが分かります。「クラブ会員」はロータリーの目的を基本とし,ロータリアンの行動規範である「四つのテスト」による奉仕活動の実際を体得することで,「ロータリアン」に進化してまいります。進化してゆく過程の基盤には「超我の奉仕」「最も奉仕する者,最も多く報いられる」が存在します。二つのモットーをコインの表・裏と考えながら,日常の奉仕活動に邁進しております。ロータリーは「理念の高唱」に終わるのではなく,「行動の哲学」なのであります――と説明されています。私は非常に感動いたしました。
「ロータリーの目的」には「一人一人が奉仕する,実践する」ということが書かれています。自己の成長と合わせて一人一人が奉仕する。普通の寄付団体では団体で奉仕するということですが,ロータリーは最初から「一人一人として奉仕」ということが重要だとうたわれています。
「1915年の倫理訓」では,個人の完成を前提として自己より他者を先に考える,つまり,自分づくりがまずあって,他人づくりをさらに一生懸命やると,そういうシステムになっていると思います。
ロータリーの奉仕は一方的ではなく,双方向のつながりがあるような奉仕です。大阪RCの「みおつくし奨学金」でも,もらわれた方といつも交流し,本当に役立っているのか,その方たちが今どう考えているのか,黒田章裕委員長,本当に頑張ってやっておられると思うのですが,これこそがロータリーの奉仕だと思います。ロータリーの職業奉仕は,その奉仕の心をもって,される側の人とも交流し,喜んでいることをくみ取って自分の喜びとする。それによって新しいことを見つけ,成長していくという循環,それがロータリーの奉仕の真髄です。
では,このために何をすればいいかですが,ハーバート・テーラーRI会長は「ロータリーの大きな仕事は,生活の様々な領域において有能な役に立つ人物を育成すること。そのことこそなすべき仕事ではないか」と言っております。「人づくり」と考えるとロータリーの真髄をよく理解できます。
ロータリーにはいろいろな考え方の人がいて,尊敬し合うなかで自身も成長し,皆さんも成長していく。そうしたことを社会にも働きかけ,社会の人たちも成長していく,そういう循環をつくり出す。それがロータリアンになるということだと思いました。
ですから,宮原会長の今年の標語「多様性を尊重し,信頼を深めよう!」は,まさにロータリーの本質的な活動を言っていると,心から理解しております。それを深化させていくことが,より魅力的なロータリーにしていくものだと思います。
これを達成するための方策ですが,まずいろいろな年代の方の対話と交流を促進する。他クラブや地区との交流,若手を地区に派遣し,いろいろなものを学び,交流していただくことは続けていく必要があると思います。
また,多様性の尊重ですが,会員同士の対話の平等性の担保は,本当に良好だと思います。例会などでいろいろな方とお話し,テーブルミーティングでも皆で会話,交流するように努めることが重要かと思っています。「出前授業」や行事への積極的参加も続けていくことによって信頼が深まっていくだろうと思います。
最後に,今何が最も求められているかですが,私は,ロータリーは企業倫理運動,人づくりの運動であると思っています。ロータリーは世界中にネットワークをつくっていますし,その真意は共存共栄ということで,今の世界情勢を考えたときに重要なことと思います。さらに,人材育成ですが,年配の人間も若者たちにいろいろなことができます。何ができるかと言うと,若者を育てる,学校教育ではできないようなことを補完する。実は花乃井中学校では道徳教育という時間の中で出前授業をやっていますが,こういうことが非常に重要ではないかと思っています。
いい人材が育てば,国はきちっと保てる,そして世界も保っていくはずです。ロータリーは非常に素晴らしい人材のストックであり,それを有効に使うことが重要ではないかと思っております。本当にありがとうございました。
(スライドとともに)