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2016年4月1日(金)第4,575回 例会

海外の社会課題に対する企業とNGO等との協働事例
-産休サンキュープロジェクト-

堀    乙 彦 氏

日本赤十字社 事業局
国際部長
堀    乙 彦 

1956年東京生まれ。’80年明治学院大学経済学部経済学科卒業,日本赤十字社入社。外事部(現国際部)に所属。総務部を経て,国際部で救援・開発協力事業などを担当。アフガニスタン,パレスチナ暫定自治区,カンボジア,旧ユーゴスラビア,北方四島等,各国での救援活動に従事。’96年,外務省のスカラーシップよりオックスフォード大学クイーン・エリザベス校難民研究プログラム修了。2012年組織推進部長,’14年現職。同年より明治学院大学経済学部客員教授。

 本日は「ともに生きる社会と企業」というテーマで,皆様と日本赤十字社が協力して支え合う社会の実現に取り組んでいくことについて,一緒に考えたいと思います。あわせて,住友商事様とのパートナーシップによる成功事例である「産休サンキュープロジェクト」も紹介させていただきます。

最初は38人で活動

 赤十字は1859年,イタリアの独立戦争におけるソルフェリーノの戦いで,スイスの青年実業家,アンリー・デュナンがボランティアとして住民とともに敵味方の区別なく救護を行ったことから誕生しました。傷ついた若い兵士を見て,戦う意思のない兵士はもはや兵士ではなく人間で,人間同士救わなければいけないと思ったことがきっかけでした。

 その後,彼は,戦時の中立的な救護活動を行う組織をつくり,活動を保証するために各国が協定を結ぶ必要があると提案。それが後の各国における赤十字社になり,’64年のジュネーブ条約に結びついていくのです。

 日本では西南の役に際し,佐賀藩の元老院議官,佐野常民が’77年に日本赤十字社の前身である「博愛社」を創設したことが始まりです。佐野はその10年前,使節団としてパリの万国博覧会に派遣された際,赤十字のパビリオンを見て活動を知りました。その後,法律の整備や科学技術の進歩だけではなく,赤十字の活動が盛んになることが真の文明開化だと考えるようになり,博愛社の創設に邁進。日本政府がジュネーブ条約に加盟した翌年の’87年に日本赤十字社に変更しました。

 活動は当初38人のボランティアで始められました。今日,960万人の個人会員及び12万の法人会員,130万人のボランティア,6万6,000人の職員が一緒になり,国内外の人道的な課題に取り組んでいます。活動費は,年間500円の個人会費と10万円の法人会費,その他の寄付で成り立っています。

希望はボランティア

 今日の世界を見ると,災害,紛争,テロ,感染症,環境破壊,気候変動,少子高齢化,貧困,教育,人口爆発,暴力,差別など様々な人道課題が山積しており,これらが複雑に絡み合い,もはや一国では解決できない,どの国際機関やNGOも有効な対応策を持ち合わせていない状況です。赤十字も例外ではありませんが,唯一希望として残されているのがボランティアの力です。

 現在,国際赤十字は,190の国と地域に1,700万人のボランティアが参加する世界最大の人道支援ネットワークを有しています。2015年のネパール地震や’13年のフィリピン台風災害,シリア内戦での難民救援,エボラ出血熱が流行したリベリアなどに支援チームを派遣していますが,実はそれぞれで多くの地域ボランティアが活動しています。

 残念なことにシリアのボランティアは50人以上が命を落としています。エボラ出血熱の流行地域でも,1万人の訓練された赤十字ボランティアが,最も危険な遺体の埋葬,消毒作業,住民への正しい知識の普及などを行いました。災害時に海外からの支援活動がメディアでよく取り上げられますが,実際は地域のボランティアの活動が大きいのです。

 今年5月にイスタンブールで国連世界人道サミットが開催されます。効果的な救援活動の実施,紛争下の保護の強化といったテーマと合わせ,技術革新を含む革新的な取り組みを人道活動に取り入れることも議論されることになっています。

 つまり,皆様,企業または個々人の方々が持たれている革新的な技術やアイデアを救援活動に役立たせることが期待されているのです。例えば,途上国での救援活動に,コンピュータ会社から提供されたパソコンやプログラムが活かされています。アフリカなどのインフラの未整備な地域ではソーラーランタンなどが地域の医療や住民の生活を支えています。

感謝の気持ちを支援に

 ’15年9月,国連は「持続可能な開発のための目標」を採択しました。住友商事とのパートナーシップで取り組んでいる「産休サンキュープロジェクト」は,この目標の一つに掲げられている「すべての人々の健康的な生活の確保と福祉の促進」を目的としています。

 世界では,年間660万人の5歳未満の乳幼児が命を落としています。出産で命を落とす妊産婦は年間約30万人に上ります。

 プロジェクトの名前からもお分かりになるかと思いますが,出産のためにお休みを取られた社員の方に出産の喜びと応援してくれた方への感謝の気持ちを寄付としてあらわしていただき,企業も福利厚生の一環としてマッチングファンドで対応してもらい,これらを資金としてアフリカの母子保健を支援するというものです。

 企画段階から住友商事の社員の方々に参加いただきました。現在,ケニアの診療所へのアクセスが困難な地域で,乳幼児死亡率,妊産婦死亡率の減少を目指し,母子の健康状況の改善を図るための活動を展開しています。

 プロジェクトの参加申込書と日本赤十字社のリーフレットをお配りしました。様々なプログラムを紹介しておりますので,皆様のCSR活動のパートナーとしてぜひ日本赤十字社を選んでいただき,産休サンキュープロジェクトだけでなく,皆様の企業が目指されている方向と合致する様々な活動を一緒に考えていくことができましたら幸せに存じます。

(スライドとともに)