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2015年4月17日(金)第4,530回 例会

建設業の環境への取り組み

塚 田  高 明 氏

鹿島建設(株)
顧問
塚 田  高 明 

1947年4月,長野県上田市生まれ。’71年3月,京都大学工学部衛生工学科卒業。同年4月,鹿島建設(株)入社。2008年,執行役員環境本部長。’12年,常務執行役員環境本部長。’14年,顧問。

 建設関連の産業は,ビルを含めあらゆるインフラを造りますので,圧倒的に「資源大消費産業」です。結果として「廃棄物大排出産業」でもあります。造るもののライフサイクルが大変に長いので,長期的に環境に影響を与え続けます。生態系や地域環境への直接的関与が大きい。環境と共生する社会をつくるため,建設関連産業の役割は非常に大きいと思っている次第です。

トリプルゼロを目指す

 2013年に鹿島環境ビジョンをつくりました。「トリプルゼロ2050」というもので,①ゼロカーボン――低炭素社会を徹底してつくろう,②ゼロウエイスト――廃棄物をできるだけ出さない,あるいは資源として循環していこう,③ゼロインパクト――できるだけ環境に対するインパクトを少なくしていこう,という3つです。

 地球環境問題は,エネルギーの利用とジレンマの関係にあります。人類が利用できるエネルギーは,まず化石燃料で石炭,石油,天然ガス,それから原子力エネルギー,そして再生可能エネルギーは水力,太陽光,風力,地熱,バイオマスの5つです。

 現実性のある再生可能エネルギーをいかにベストな状態で使っていくか。当然,長所と短所があります。短所で足を引っ張るのではなくて,技術で短所を革新して長所を伸ばしていかない限り,必要なエネルギーを確保できない。私は,そういうことがエネルギーと環境,両方の問題を解決する唯一の方策だと思っています。

 2050年は孫の世代になります。2050年にCO2排出を半分にしよう,こんな大変に困難な目標を達成する対策をまとめてみますと,私たちが使うエネルギーのクリーン化・低炭素化と,エネルギーをできるだけ使わない省エネルギー社会をつくること,この2つが決定的に重要です。

生物多様性、リサイクル

 「生物多様性」の話をさせていただきます。 「鹿島ニホンミツバチプロジェクト」をやりましたら,社会に受けました。社長に怒られるのではないか,と思ったら,「いいことや」と言われました。ミツバチがいないと,多くの植物の受粉が成り立ちません。

 コゲラは500メートルしか飛べません。ですから,もし都市にコゲラがいるとすれば,500メートルおきにコゲラが棲める森がある,コゲラの巣になるような森があるということです。こういう森をネットワーク的にいっぱいつくっていけば,コゲラが都市に棲めるんじゃないか。これがエコロジカルネットワーク技術です。

 東京湾でも大阪湾でも一緒ですが,カニが豊かなところは,カニをエサにするハゼだとか野鳥が生息できますので,カニが棲める護岸を開発いたしました。今,東京湾の多くの護岸で使っていただいています。

 葉山に「鹿島水域環境実験所」を今から30年ぐらい前につくりました。ここで海の環境の研究をしてきたのですが,今,このアマモ場の再生をやっています。大阪湾でも東京湾でも,昔は小魚の巣になるようなアマモが豊かだったと言われています。

 それから,今どんどん消えていっているサンゴ礁の再生に取り組んでおります。

 都市の再開発に伴って,壊したビルはみんな廃棄物になるわけですから,大量に廃棄物が出てきます。今,建設会社などは,こういう廃棄物はほとんどリサイクルしています。

 宮城県の石巻地区は甚大な被害が出たわけですが,津波とか震災で都市が壊れ,廃棄物がたくさん出ました。これを片づけないと復興になりませんので,時間との勝負で,早く片づける業務をやらせていただきました。

 震災と違って,津波は水災です。海水が大量に混じっていると,廃棄物を処理するのが非常に困難です。選別や破砕の機械を置き,選別方法などを工夫しました。

 こちらのラインでは,手で選別しています。(選別を手がけるのは)被災者の皆様です。可燃物は燃やします。焼却炉が全部で5基あり,1日1,590トン焼却できます。これは,150万人都市の廃棄物焼却炉に匹敵する大きさです。

 無機性の廃棄物の95%以上は,防潮堤とか埋め立ての建設資材として再利用しました。次に災害があったときには,もっと円滑にできるような技術を蓄積できました。

福島の放射能対策

 最後に,福島県の環境放射能対策について触れさせていただきます。

 年間1ミリシーベルト以上のところが,環境放射能除染事業の対象になります。この除染は,そんなにハイテクではなくて,現在は減容化・濃縮運搬・中間貯蔵の段階に入ってきております。

 大熊町と双葉町の2町が中間貯蔵の場所です。福島第1原子力発電所を取り囲むように中間貯蔵施設ができます。

 福島第1原子力発電所の中で,廃炉作業などが続いております。3月24日のNHKニュースウオッチ9で特集され,その様子がテレビで報道されました。その中で,キャスターが「今回,私たちは1日に7,000人が作業をする廃炉作業を初めて密着取材をしました。そこで目にしたのは,放射線だけでなく,様々な制約を受けながら懸命に働く作業員の姿でした」というふうに結んでおられました。

 きょうの本題ではありませんが,たとえば一番ひどい3号炉の解体は全部,遠隔操作しています。解体して,トラックに積んで,所定の場所に持っていって収蔵する,これを全部,無人でやっています。

 ここで得られたさまざまな技術は,今後,世界の原子力分野でお役に立つだろうと私たちは思っています。

(スライドとともに)