大阪ロータリークラブ

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2015年1月16日(金)第4,517回 例会

ロータリーを学んで思うこと

庄 野  晋 吉 君(ガラス工業)

会 員 庄 野  晋 吉  (ガラス工業)

1940年,佐賀市生まれ。慶応大学工学部機械工学科卒業,日本板硝子(株)入社。2001年まで同社副社長,後,日本板硝子工学助成会理事長を経て現在特別顧問。’02年当クラブ入会。’07年職業奉仕委員長・理事,’12年副会長・理事。’09年度から地区職業奉仕委員会でも活躍中。

 今月はロータリー理解推進月間です。ロータリーが他の団体と違うところは「職業奉仕」という考え方がベースにあることです。

 私は2000年にITバブルがはじけたとき,新金融資本主義経済に非常に疑問を持ちました。貧富の差を大きくしているのではないかと感じ,調べてみました。欧米の銀行トップの年収は100億円を越えています。日本の銀行のトップは100分の1です。ちなみに,オバマ米大統領の年収は,2013年は5,700万円程度です。

 金融関係の方々が膨大な報酬を取られるのは,それだけ各社がもうかっているということです。これらのお金は実体経済ではありません。虚構の経済だと私は思っています。誰かがもうかっているということは,誰かが必ず長期で見れば損をしている。こんな状況を,ロータリーとしては私は納得がいかない。

ロータリーの誕生

 仕事がなくて困っていた青年弁護士のポール・ハリスが友人を募って,友情とビジネスを混ぜたら仕事が増えるんじゃないかと考えて,この組織をつくります。1905年,鉱山技師のローア,洋服屋のショーレー,石炭商のシールと4人でスタートさせます。互恵主義で親睦を図ろうというのがベースです。

 翌年,ドナルド・カーターを誘ったら,彼は「一業種一会員制度はエゴイズムだ。他の同業者,一般地域社会の職業人たちはどうなるのか」と言った。それを聞いたハリスは,あり方を変えようということで,ここで「奉仕」の概念が生まれます。

 1911年になり,ミネアポリスRCの初代会長ベンジャミン・フランクリン・コリンズが「ロータリーの奉仕は,自分を犠牲にして神に奉仕するんだ」と提唱します。

 これに対し「ロータリーは宗教的なクラブではない。自己犠牲は行き過ぎだ」と提唱するのがアーサー・フレデリック・シェルドンです。彼は「20世紀における商業主義の指標は,協調することでなければならない。知恵の光明に照らされることによって,人は,経営の科学は奉仕の哲学であることを理解するに至る」と。非常に難しい言葉ですが,「他人に最もよく奉仕する者が,最も多く報いられる」ということです。

 続いて起こるのが,職業人の倫理運動としての理念です。1915年に向かってロータリーの「道徳律」が決まってきます。

日本の職業倫理

 さて,日本です。日本の伝統的職業倫理の世界において,普遍的な考え方が江戸時代からあります。古くは鈴木正三の「万民徳用」,石田梅岩の「石門心学」,二宮尊徳の「報徳教」,近江商人の「三方良し」,それから下村彦右衛門の「先義後利」。

 「三方良し」は非常にわかりやすい。売り手がもうかり,買い手も気持ちよく買って使います。世間良しというのは,近江商人は橋を架けたり,寺子屋を建てたり,社会奉仕をちゃんとやっています。

 下村さんは大丸の創始者です。「先義後利」というのは,お客第一です。シェルドンの考え方にぴったり合う考え方を持ったのが下村さんで,昭和12年,大阪RC会員の里見さんが大丸の社長だったころに,この考え方を日本のロータリーに普及させます。

 大坂商人を調べてみますと,いろいろおもしろいことがわかります。水の都・大阪にかかる「なにわ八百八橋」は,商人がつくったものです。淀屋橋は淀屋辰五郎さん,肥後橋は熊本出身の方が架けました。大坂商人は商業道徳,職業道徳を確立しています。

 近年,企業の不祥事がいっぱい起こっていますが,われわれは二度と起こしてはならない。不祥事の抑止要因は皆さんです。経営トップの姿勢,誠実性が不祥事発生を抑えます。

ピケティの提案

 2013年の全世界の貿易総額は18兆3,000億ドルです。有効決済日で割ると,1日700億ドルです。ところが全世界の為替売買総額は,1日に5兆3,000億ドルもあります。実業の75倍も取引されています。

 全世界の株式時価総額は,昨年の8月で38兆5,000億ドルです。世界188カ国のGDPの合計でも74兆ドルです。全デリバティブの総額は2008年のデータですが,国際決済銀行(BIS)が出した数字で684兆ドルもあります。

 これらがITバブルをつくり,住宅バブルをつくり,サブプライムローン問題を起こし,リーマン・ショックを起こし,われわれの実体経済を左右する,という,あってはならないことをやってきているわけです。

 銀行がなかったら,われわれの経済は成り立ちません。企業は銀行なくして生きていくことができません。しかし,金融商品というのはやっぱりちょっと問題だな,というふうに私は感じております。

 最後に申し上げたいのは『21世紀の資本』,トマ・ピケティの本です。去年の暮れとことしの正月はピケティ三昧でした。

 資本主義の発展とともに富は多くの人に行き渡って,所得配分は平準化する,というのがこれまでの経済学の考え方ですが,彼は違うんです。資本主義では格差は拡大するという考え方なんです。特に1970年以降,格差は広がったと言っていますから,ビッグバン(金融自由化)を言いたいんだなと思っております。どこにも書いてないが,におうんです。

 ピケティは,累進課税を大きくせよ,タックス・ヘイブンをなくせ,と提案しています。

 皆様の参考になったかどうかわかりませんが,以上です。どうもありがとうございました。

(スライドとともに)