大阪ロータリークラブ

MENU

会員専用ページ

卓 話Speech

  1. Top
  2. 卓話

卓話一覧

2014年12月19日(金)第4,514回 例会

百貨店の店頭から見た本年の消費動向

山 本  良 一 氏(百貨店)

会 員 山 本  良 一  (百貨店)

1973年,明治大学商学部卒業後,(株)大丸入社。店舗・本社の部長,室長を歴任し,2003年5月,同社代表取締役社長。’07年9月,(株)大丸と(株)松坂屋HDの経営統合により発足したJ.フロントリテイリング(株)取締役。’10年3月,(株)大丸松坂屋百貨店代表取締役社長。’13年4月,J.フロントリテイリング(株)代表取締役社長(現任)。’03年当クラブ入会。’05年度雑誌委員長。

 今年の漢字は「税」ということですので,まずは消費税増税の影響についてお話をしたいと思います。
 増税前の3月の駆け込み消費は消費税率が3%から5%に引き上げられた1997年より大きく,逆に4月の反動は97年よりも小幅にとどまりました。その後,マイナス幅は着実に縮小しているものの,このところ足踏み状態にあり,想定よりも回復は少し遅れているかなと感じています。
 年明けの初売りで弾みをつけ,本格的な回復軌道に乗りたいと考えています。

百貨店の売り上げは堅調

 百貨店の売り上げが比較的堅調に推移している要因として「高額消費の拡大」と「インバウンド消費の拡大」が挙げられます。
 高額消費拡大の背景には,2種類の「消費の二極化」が見られます。一つは,富裕層による消費の活性化です。大丸松坂屋百貨店でも,富裕層のお客様が多い外商部門の売り上げが好調です。外商の売り上げは,外商以外と比べ,明らかに回復のペースが早く,7月以降は前年を上回っています。
 また,一人ひとりの消費行動の中にも,消費の二極化が見られます。「メリハリ消費」と言われるもので,生活必需品は徹底的に節約をして,その一方で本当に良い物や,自分にとってこだわりのある分野にはお金を惜しまないという傾向が強くなってきています。
 次に,インバウンド消費です。訪日外国人旅行客による消費が,消費税増税後の百貨店の売り上げを下支えしています。免税売上高は昨年の数字を大きく上回っており,免税対象商品が拡大された10月には2.5倍,11月は3倍以上に飛躍的に伸びています。
 国別シェアは中国が50%を超えており,台湾,韓国,香港と続いています。

今年の消費動向

 私どもの店頭で実際に売れている商品をご覧いただきながら,今年の消費動向を読み解いていきたいと思います。
 キーワードは三つ,「カワイイ」「一芸に秀でる」「日本のものづくり」です。
 女性の就業率が高まるにつれ,消費を牽引する女性のパワーがますます注目されています。女性の消費意欲を刺激する最強のキーワードは「カワイイ」です。仲の良い友達同士や親子でおそろいの服やアクセサリーを身につけることを「双子コーデ」と呼び,若い女性の間で流行しています。
 女性をかわいく見せる王道のスタイル,エプロン姿をご覧に入れます。ホームウエアのアクセントとして,少し高めのエプロンが売れています。モデル(写真)が着用しているのは,ハリウッド女優も愛用する「ジェシースティール」というブランドで,税込み価格が6,300円です。
 次に「イエナカ志向」が非常に高まっており,日々の暮らしを便利にしたり快適にしたりするキッチン雑貨,家電にヒット商品が目立つようになってきています。ヒットの秘訣は,お客様のニーズを徹底的に追求して,求められている機能だけに特化したわかりやすさ,すなわち「一芸に秀でる」ことと考えております。
 「お茶プレッソ」は,茶道の手順をもとに設計をされています。セラミック製の臼で茶葉を粉末状に挽き,まるで茶筅を使ってたてたような,のどごしのいいお茶ができ上がります。家庭でお茶を飲むときは急須,というのが日本人の常識ですが,それを覆し画期的な商品を考えました。
 三つ目。外国人旅行客が日本製品に寄せる信頼は,われわれの想像を超えるものがあります。日本の手漉き和紙の技術がユネスコの無形文化遺産に登録されたこともあり,日本人の間でも「日本のものづくり」が見直されています。
 福井県鯖江市で伝統工芸品「越前漆器」を製造する会社が,漆を塗る前の木地づくりで培われた技術を生かし,木製品のブランド「ハコア」を立ち上げました。木製のスマートフォンケース,蝶ネクタイなど既成概念にとらわれない革新的なものづくりに挑戦しています。
 滋賀県の近江八幡市の「八幡靴」は,天然の皮を職人が一足ずつ手縫いで仕上げる高級靴として知られています。足型を3次元,3Dで計測するフィットスキャナーを導入し,足の型を樹脂で再現することで,通常10万円以上のものを6万円台の価格で実現しています。

キラキラ輝く年に

 いよいよトリです。ブルガリのネックレス,ブレスレット,指輪の3点セットで総額1,667万円です。ヘビをモチーフにしたデザインで,イタリア語でヘビを意味する「セルペンティー」と呼んでいます。ヘビは古代文明の神話,伝説では英知とか生命力とか永遠の象徴ということで,大変縁起のよい生き物とされています。
 私どもの店舗では,今年に入り1,005万円のネックレスが5点,527万円のブレスレットが4点,135万円の指輪が15点売れ,富裕層の消費意欲を実感しています。
 輝くハイジュエリーをご覧いただきながら,来年も皆様がご健康で,ますます活躍され,キラキラ輝く年になることをお祈り申し上げまして,私の話を終わらせていただきたいと思います。ご清聴ありがとうございました。
(スライド,モデルとともに)