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2014年10月3日(金)第4,504回 例会

インキュベーションと国際化

下 條  真 司 氏

大阪大学 サイバーメディアセンター
教授
下 條  真 司 

1958年生まれ。東京生まれだが,多くの時間を芦屋で過ごす。インターネットの黎明期より関わり,’95年のAPEC大阪,’99年京都で開催されたCOP3のインターネットサービス開発にプロジェクトとして関わる。現在はうめきたでVisLab Osakaという情報の可視化によるプロジェクトを推進中。

 私は東京生まれですが大阪が長く,青少年時代も神戸で過ごしたので大阪を元気にしたいという思いがあり,きょうはそういう話をします。「インキュベーションと国際化」という題で,インキュベーションというのは「事業の創出や創業を支援するサービス,活動」。もともと「卵をかえす」という意味ですから「弱々しいビジネスの種を温かく見守りながら育てる」ということ。それが国際化,国際貢献とどうつながるか。私は技術者なので,インターネット技術の新しい部分や新しいチャレンジをどうやっていくか,それに国際貢献や国際化をどう絡ませるかをずっとやってきました。一言で言うと「映画型インキュベーション」「劇場型インキュベーション」につながるだろうと思ってます。これは後でご紹介します。

大阪で面白いことを

 1995年,阪神淡路大震災の年でもありますが,大阪でアジア太平洋経済協力会議(APEC)が開かれました。当時はインターネットを知っている人は少なく,一般の人々が使うのは,もっと先の話だということを頭に置いてください。APECが大阪に来るなら面白いことができないかと,電通とか朝日放送とか,大阪で面白いことをしたくて,しかもインターネットに近い人たちが集まってきた。いわゆる政府資金というのは全く使っていません。みんな持ち出しで「何か面白いことをしましょう」と集まりました。外国のお客さんがいっぱい来るので,インターネットで大阪の情報を紹介しようとプロジェクトが動いていきました。まずネットワーク環境が必要なので,整備しようとできあがったのが「APEC Internet 1995」です。

 OBPのインターネットカフェに情報を蓄えるサーバーを置き,閣僚とか各国のお客が泊まるホテルなどにインターネットを張り巡らせました。ウェブを使い観光情報や交通,天気情報など,いろいろな関西情報を発信しました。今,YouTubeでクリックするとビデオが流れますが,ああいうサービスが当時全くなかったので最初にやってみました。だからYouTubeのようなサービスが日の目を見たのは,関西が結構早かったと思います。

国にできない利害調整

 関西情報にアクセスするためのウェブもつくり,バーチャル空間に関西をつくろうというアイデアが生まれたのは,ここが一番最初だと思います。それがきっかけで’96年に「サイバー関西プロジェクト」ができた。企業や大学,近畿経産局,大阪府など,APECで協力した人たちが集まった。専門分野が違って,ネットワークをやる人も,サービスをしている人たちもいるし,機器を売るところもある。産官学の面白いグループができた。

 ’97年に国連から声が掛かり,COP3(地球環境温暖化防止京都会議)でインターネット中継をしてくれということになりました。外務省ではなく国連からサイバー関西に声が掛かった。APECの経験を生かしてCOP3の会議を世界中に中継してほしいと依頼され,京都市,京都府と協力してやりました。APECでわれわれは会議そのものを中継することはできなかった。外務省が仕切り,会議の内容を外に出すのはけしからんと情報提供を受けられなかったからです。この時は国連から依頼があり,NHKが協力してメイン会議も含めCOP3の会議を中継できた。今でもCOP3のサイトでわれわれがカバーした全会議の記録がアーカイブとして蓄積されています。

 国連はある意味ボランティアの塊で,どこの国でもない。COP3の問題は先進国みたいに今までCO2を排出してきたところ,これから排出していくぞというところ,産業に関係なく(海面の上昇で)島がなくなってしまうというようなところ,いろいろな利害関係が絡む。国だけでは調整できない。だから彼らは,政府でない人たちをどんどん入れて調整を働かせようとする。国とNPO,NGO,企業が事実的に調整されるメカニズムをあえてつくろうとしているということが非常によく分かりました。

「七人の侍」精神

 われわれはいち早くインターネットがどう使えるかとか,国際的にどう貢献できるかと,パワーをまざまざと感じることができ,それにより二つ会社ができた。一つは「NTTスマートコネクト」で,これは関西のデータセンター管理の会社。もう一つは「radiko(ラジコ)」というインターネットラジオです。まさに映画型,劇場型研究開発,インキュベーションだろうと思います。最高の舞台があり,得意分野を持った人たちが集まって最高の仕事をする。それがボランタリーベースでできあがっている。その中でできるだけ派手に立ち回り,国際的な注目を得るということ。まさに『七人の侍』の世界で,いろいろな人が集まり村の人のために働くというロータリーの精神とも通ずると思います。

 去年大阪駅北側にオープンした「グランフロント大阪」に関わっていますが,ここも民間のプロジェクトですが,公共的な側面もあり,大学の人たちと先ほどのサイバー関西も含め「VisLab Osaka」という活動をしています。これも各大学が持つ強みを合わせて面白いことをしようと考えています。

 最後ですが,われわれは次にオリンピックを目指したサービス展開を大阪から始めたいと思っています。(街にセンサーを多数仕掛けるようなサービスは)なかなか使い方も難しいし,投資もかかるので,ぜひこういう機会に大阪の皆さんと新しいサービスをつくり,オリンピックに持ち込むということができればと思います。

(スライドとともに)