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2014年6月6日(金)第4,488回 例会

阪神高速道路50周年と今後の課題

森 下  俊 三 君(通信事業)

会 員 森 下  俊 三  (通信事業)

1945年生まれ。名古屋大学大学院工学研究科修了,’70年日本電信電話公社(現NTT)入社,2004年NTT西日本代表取締役社長,’10年相談役,’07年在大阪トルコ共和国名誉総領事,’12年阪神高速道路(株)取締役会長,’07年当クラブ入会。

 高速道路は全国で9,800㎞,阪神高速は259㎞と非常に短いですが,都市高速としては85%が橋梁という特殊な道路になっています。首都高速に続いて大阪も,ということで昭和37年に阪神高速道路公団が設立されました。大阪の場合,街が入り組んで,建て込んでいます。5年間でこの道路をつくるというので,先人たちは非常に苦労されたということです。全長で10㎞ぐらいですが,立ち退きとかいろいろな問題が出てきて,大半が川の上につくられている。

 阪神高速道路は橋梁が非常に多いこともありますが,技術的に世界に誇る部分があります。1つは4号湾岸線の港大橋です。世界で3番目の日本最長のトラスト橋と言われていますが,中央の径間が510m,非常に長大ということもあって,非常に硬い超高張力鋼を開発しました。耐震設計,耐風設計も随分技術が進歩したそうです。そういった形で順調に伸びてきて,平成6年に200㎞を超えました。

阪神大震災教訓に耐震設計見直し

 橋梁関係で特筆すべきことは,やっぱり阪神淡路大地震です。3号神戸線で635mにわたって倒壊しましたが,橋桁と橋脚が一体になっているため根っこの所で首折れをしてしまった。これをどうつくり直すか。この橋桁と橋脚を分けて,橋脚の幅を6mにし免震ゴムを入れる。そうしたつくり替えを行っています。一体構造は横揺れに弱かったので,基本的には既存の所,この橋以外のところは鉄板を巻いて補強しています。当時は,設計地震力が関東大震災クラスの地震をベースにしていて,約0.3とか0.4ガル程度で設計していたわけですが,阪神淡路の時には,0.8ガルの強い地震が観測されたので,今はそれを基準に耐震設計をやり直しています。

 それと同時に,大地震に対して絶対に壊れないようにするよりも,むしろ地震のエネルギーを少し吸収するような形,若干どこかは損傷しても橋は壊れない,そんな風に考えが変わって設計されています。ただ何が起こるか分からないので,常に最新の試験に基づいて,影響の検討を行っていて,特に最近では長周期振動の問題が出ているので,南海,東南海の長周期振動における特殊橋梁の影響も検討しています。いずれにしても橋は非常に強くなっていると見ていただければ結構かと思います。南海,東南海沖地震の時には高速道路が橋になっているメリット,緊急道路として非常に役に立つと考えています。

3年後に高速のシームレス料金実現か

 今後の大きな問題は3つ。1つはシームレスな料金体系,2つ目が長期的視点に立った維持管理の実施,3つ目はミッシングリンク解消に向けた道路ネットワークの整備です。1つ目ですが,関西は阪神高速道路,NEXCO西日本の道路,大阪府の高速道路,奈良県の道路がつながっていて,各所に料金所があります。大阪市内から京都へ行くだけでも,何カ所も料金所を通らないといけない。ETCも料金がブツ切りになっているため結果的には割高になってしまう。以前から一々別々に払わなくてもいいじゃないかという議論がありました。経営形態を一つにするのが一番簡単ですが,経緯や国の仕組みから見て難しい。せめて料金だけはシームレスにできないかということで,議論が始まっています。

 平成25年末に新たな高速道路料金に関する基本方針が国土交通省から出ました。国としても,道路ネットワークの効率的な利用を実現するシームレスな料金体系の構築を目指すことが方針として出たので,やっとこれで動き出します。最終的には大和川線の整備が平成28年度末に予定されているので,それに合わせて検討していくことになっています。平成29年度からはシームレスな料金が実現できるだろうということで,それに向かって調整していくという段階です。

 長期的な視点に立った維持管理の実施ですが,平成24年12月に発生した中央自動車道笹子トンネルの天井板崩落事故を契機に全国の道路の総点検を行いました。それに基づいて緊急修繕をやっています。31号神戸山手線神戸長田トンネル,32号線新神戸トンネル,ここの吊り天井板を撤去する。それからコンクリートのひび割れによる落下,鉄筋の腐食部分,これを防止するために塗装をやります。次いで,大規模更新・修繕事業です。阪神高速道路も全延長259㎞の3割は建設後40年 たっています。50年ぐらいたつといろいろな 所で支障が出てくると言われていて,早急に こういったものを直していかないといけない。

ミッシングリンク解消へ自治体と協議

 3つ目はミッシングリンク。淀川左岸線の延伸部,これを近畿道につながないといけない。それから名神から湾岸線につなぐ部分,4㎞ぐらいですが,これをつなぐ。それから大阪湾岸道路西伸部が残っています。この3カ所です。これができると非常にうまくトラックは流れるということで,大阪市,神戸市,兵庫県などと話をしています。高速道路だけをつくるというよりも,周辺の公共事業,特に国道といったところでやる。合併施工と言っていますが,そういう他の公共事業と組み合わせてやらないと単独ではできない。この財源をどうするか,国の問題だけじゃなくて,大阪市,あるいは神戸市,そういった自治体側の負担も含めて協議しています。

 いずれにしてもこの3点とも一応計画に入ってきているので,いずれこれは進行すると思いますが,東京,名古屋に遅れをとっているというのはこの部分で,気になっているところです。課題はありますが,大阪ロータリーの皆さんにもご理解いただいてご支援をいただきたいと思います。

(スライドとともに)