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2014年5月16日(金)第4,485回 例会

リニア中央新幹線の大阪早期開業に向けて

辻    卓 史 君(自動車運輸業)

会 員 辻    卓 史  (自動車運輸業)

1942年生まれ。一橋大学商学部卒業,宇部興産(株)で勤務後,’83年鴻池運輸(株)入社。代表取締役社長を経て現在は代表取締役会長。関西経済連合会では広域基盤委員会リニア担当委員長を担当。在大阪ブータン王国名誉領事,関西経済同友会幹事,大阪商工会議所一号議員,全日本トラック協会副会長などを務める。当クラブ入会1984年4月,’92年度クラブ幹事。

リニア新幹線の必要性

 関経連では2011年5月以来,私が広域基盤委員会のリニア担当委員長を務め,地元選出の国会議員,自治体,関西経済界との連携を図りながらリニア中央新幹線の「東京-名古屋-大阪同時開業」の実現を目指して活動しています。わが国では東京への過度の一極集中と,地方の疲弊と都市との格差の拡大が同時進行しています。大規模な災害が発生すると,首都中枢機能の喪失や,東京,名古屋,大阪という三大都市を結ぶ生命線である鉄道,道路は壊滅,寸断され,経済は致命的な打撃を被り,国家存亡の危機に瀕します。昨年12月に成立した「国土強靭化基本法」に基づき決定された「国土強靭化大綱」にも,リニア中央新幹線建設を「国家的事業」として位置づけることが明記されています。

 東京-名古屋-大阪を結ぶリニア中央新幹線は,全国新幹線鉄道整備法(通称・整備新幹線法)の規定に基づき,2011年5月27日付で,当時の大畠国土交通大臣(民主党)から,民間企業である東海旅客鉄道株式会社(以下JR東海)山田代表取締役社長に対し,建設指示が出されました。東京都と大阪市を結び,最高速度は時速505㎞,走行方式は超電動磁気浮上方式とし,建設に要する費用の概算額は,車両費を含め9兆300億円(ただし利子を含まず)とされていますが,建設開始時期と開業時期については記載されていません。東京-大阪間(438㎞)全線開通の暁には,二大都市を24時間,365日,地続きでわずか「67分」で結ぶ交通・物流インフラが構築されることになります。建設費用は中間駅の建設費,地下駅は2,200億円,地上駅は350億円とされていますが,JR東海は国の資金は導入せず,全額自己資金でまかなうとしています。

大阪同時開業の意義と課題

 JR東海さんは民間企業として建設資金を全額負担されることで,財務面で大きなリスクを負うことになるため,借入金の限度を5兆円以内に抑えるという経営方針の下,開業時期を東京-名古屋は2027年,名古屋から大阪への延伸は債務を減らしたうえで建設を始めるとし,東京-名古屋開業の18年後の2045年という二段階方式で進めるとしています。健全な財務内容を維持する経営方針は妥当と考えますが,大阪への接続が名古屋より18年遅れることでどういう影響が出てくるか。2,000万人を超える人口を擁する関西圏の地域社会,経済に与える悪影響はもとより,国家的見地から過度の東京への一極集中を是正し「バランスのとれた強靭な国家」を目指す必要性,そして自然災害をはじめ様々な国家的リスクによる首都機能喪失等,国家・国民の安全保障に与える重大な影響を懸念しています。あくまで東京-名古屋-大阪同時一斉開業を前提としてこの計画を推進すべきであると考えており,これは関西経済界,自治体,地域社会,地域住民の総意であります。ちなみに専門家の試算によると,二段階方式より同時一斉開業のほうが,利用者の利便性はもとより,JR東海にとりましても採算面でベターであるとされています。

 東京-名古屋-大阪同時開業への最大のネックは,名古屋-大阪間の建設費3兆6,000億円と言われていますが,これに関しては去る4月24日,自由民主党政務調査会の「超電導リニア鉄道に関する特別委員会」(竹本直一委員長)が同時開業を目指す決議を行いました。名古屋-大阪間の建設費を国が負担し,完成後JR東海に譲渡するとしています。この方式では,国は最終的には名古屋-大阪間にかかる建設費の利子のみを負担することになります。赤字国債や建設国債を発行して実施する従来の公共投資とは違い,今後様々な角度から検討されることになりますが,私は,JR東海の民間企業としての限界とこのプロジェクトが持つ国家的重要性とのギャップは国が何らかの形で支援すべきだと考えます。

関西の基盤強化

 関西の交通・物流インフラ整備について少しつけ加えたいと思います。北陸新幹線は現在長野から金沢への延伸工事が行われて来年春に開業し,新聞報道によると金沢から敦賀への延伸が最大3年繰り上げられ,2022年度の開業を目指すとしています。次の課題は敦賀から大阪への接続です。これが実現すれば近畿,東海,関東,信越,北陸が新幹線で結ばれた一つの「環」となり,地域経済・社会の活性化と災害への備え,即ち国土強靭化に大きく寄与することになります。もう一つは,2023年開通を目指して今建設中の「新名神高速道路」の建設です。現在建設が進んでいる「新東名高速道路」は,2020年に全線開通を目指すということです。北陸新幹線の敦賀-大阪の接続と新名神高速道路の建設,リニア中央新幹線の建設は関西の交通・物流基盤強化のための「3点セット」です。これらに既存の新関西国際空港のハブ空港としての役割,大阪港・神戸港を一体運営する国際戦略港湾としての機能が加わると,関西の交通・物流インフラは格段に整備され,経済基盤の強化と首都機能を補完する体制が十分整います。大黒柱であるリニア中央新幹線の大阪開業が東京-名古屋より18年も遅れ2045年になることは,画竜点晴を欠くと同時に,関西の地盤沈下をもたらすことは明らかです。

 リニア中央新幹線のプロジェクトは,個人的な利益や弊社の社業にとって特別な恩恵は何もありません。私はこれ以上の関西の社会・経済の地盤沈下をさせてはならない,後に続く世代に負の遺産を残してはいけないという気持ちでやっています。皆様方もそれぞれのお立場でご支援ご協力をお願い申し上げます。

(スライドとともに)