1960年生まれ。’83年関西大学卒業。重要無形文化財総合指定保持者。海外公演及び文化庁の委託による全国での学校公演事業など海外国内で能の普及に努める。第3 回パナソニック財団奨励賞,第5 回ティファニー財団日本文化大賞。第42回博報賞,第9 回関西文化元気圏賞など受賞。公益社団法人能楽協会理事,公益財団法人山本能楽堂代表理事。2009年当クラブ入会,’12-’13年度副S.A.A.。
皆さんこんにちは。
大阪市から一銭も助成をもらってないこの能楽の世界,これを皆様に支援していただきたく,きょうは「能の囃子」ということで楽しんでいただこうと思います。(舞台に囃子方並び実演)
テーブルに,山本能楽堂オリジナルの『高砂読本』を置いております。これは,よく結婚式で謡われます「高砂」ですが,私が大きな声で謡いますので,皆さんご一緒にちょっと真似して謡っていただきたいと思います。
皆様が謡いを謡っていただきましたものを囃していただくので,「囃子方」と申します。私たち能の世界,私は「シテ方」という主役をするパートですが「ワキ方」,「狂言方」,それとこの「囃子方」の方々で大体全国に1,280数名おります。
さて,順番に紹介していきたいと思います。向かって一番右側は森田流の「笛方」、続きましてその左、幸流の「小鼓方」、続きまして観世流の「大鼓方」、最後に金春流の「太鼓方」です。この一番右側の笛の右側に私が座れば、「五人囃子」になるということです。ですからこの順番,一番右から謡い,笛,小鼓,大鼓,太鼓。こういう順番が雛人形の五人囃子の並べ方でございます。
声を出しているところ,音を出しているところを申しますと謡いは「口」,笛は「下唇」、小鼓は「肩」,そして大鼓は「膝」,太鼓は台の上と右から左へとだんだん音を奏でているところが低くなる順になっております。笛から説明していきますと「能管」と申しまして,能専門の笛です。400年ぐらい前のものを使っております。
代表的な能の笛を吹いてもらいます。非常に高い音のときは,能が始まるときと終わるときで,ふだんの空気を縦にきっぱり切るかのような音を鳴らします。「ヒシギ」というものでございます。
続きまして小鼓を演奏してもらいます。この小鼓ですが,ちょっと隣の大鼓と比べていただけますでしょうか。大きさが違います。向かって右側の小鼓は,馬の皮でできております。真ん中の胴には蒔絵を施し,両側に子馬のお腹の薄い皮を使っております。新しい鼓の皮をつくりまして10年くらいは,練習用,稽古でしか使いません。10年以上打ち込んでこういう音が出るようになっております。
続きまして大鼓です。この大鼓も同じく馬の皮でできております。先ほどの小鼓の子馬とは違いまして,大人の馬の背中,またはお尻のような堅い部分を使っております。
この大鼓は,打ち方の強弱で音をあらわしておりますので,大鼓に関しましては調べの紐を握ったり,放したりすることはしておりません。普通に握っているだけで,打ち方の強弱で変えております。大鼓の皮は,10回ぐらいで使えなくなりますので消耗品です。
さて,太鼓を演奏してもらいます。馬の皮ではなくて牛の皮でできています。これだけ大きな太鼓ですが,打っていい所は真ん中の白い部分で鹿の皮が張ってあります。能の太鼓の場合は真ん中の撥皮(ばちかわ)と言われているところしか打てません。牛の皮に鹿の皮を張っております。
先ほどから「イヨー」とか「オー」とか「イヤー」とか言っておりますが,なぜこういう掛け声を出すかと言いますと能の場合は指揮者がいませんので,この「掛け声」でもってお互いに確認し,間合いをとって演奏を確認しているのです。
さて会長にご協力いただきたいのですが,ちょっと舞台へ上がっていただけますか。大鼓をお願いします。皆さんにもやっていただきましょう。稽古するときには左手を使って右手と拍手でやります。
[「イヨー」という掛け声で,会長は大鼓,会員の皆様は拍手で大鼓演奏の稽古] 続きまして,小鼓も皆さんに体験していただこうと思います。
小鼓は左手に持って構えるのですが,意外とどちらの肩へ構えるかわからないのです。皆さん,一度構えてみてください。どうでしょうか。左手に持ちまして,右の肩へ構えます。そして右の手で打つということになります。全部の指を真っ直ぐ膝の横まで降ろして,振り上げて,やってみましょう。これが「ポ」です。今度は薬指と中指の2 本で打ちます。これが「タ」です。同じように膝の横まで降ろして2本で打ちます。この「タ」と「ポ」を交互に打ちます。
――大鼓・小鼓演奏
ありがとうございました。皆さん何かご質問ないでしょうか。何を質問していいかわからないかもしれませんが,何でもいいです。
――はい,どうぞ。
会員「鼓には両面がありますが両面から音を出すということはないのでしょうか?」
――表側と裏側に皮が張ってございますが,表側のほうが分厚くできていまして,必ず表側を打つようになっております。「裏を打つと雨が降るよ」と昔から言われたりしております。
ここで,皆さんに気持ちよく今日の例会を終わっていただくために,最後は能の囃子をお聴きください。
――囃子演奏
ありがとうございました。最後は,龍神などが出てくる「早笛(はやふえ)」という強い者の登場に使う,大阪RCらしい男らしい凛々しい囃子と高貴な舞に使う囃子を演奏していただきました。