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2014年3月14日(金)第4,478回 例会

大阪から発信するテレビ報道

春 川  正 明 氏

読売テレビ
報道局 解説副委員長
春 川  正 明 

1961年生まれ。’85年関西大学社会学部卒業,読売テレビ入社。ニュース編集マンから報道記者に異動。神戸支局長,司法キャップ,大阪府警キャップ,NNNロサンゼルス支局長,報道部長を経て,2007年から解説委員。

 大阪のメディアの関係,企業の関係,大学関係の方といろいろいらっしゃると思いますが,残念ながら「ヒト・モノ・カネ」,「情報」も東京に一極集中しております。その中で,大阪からいかに全国に発信していくかということが非常に大事だと思っております。テレビの場合,大阪の民放は「準キー局」という言い方をしまして,読売テレビの場合は日本テレビ系列ですが,準キー局からも全国ネットの番組をいろいろ報道しているわけです。

 本日のメインの話になる大阪発・全国ネットの報道番組についてですが,読売テレビでは「ウェークアップ」と「ミヤネ屋」を大阪発で放送しております。ちなみに,私は「ミヤネ屋」のコメンテーター,解説委員として出ていますが,以前は,「ウェークアップ」という番組のチーフプロデューサーをやっておりました。この両番組の共通点ですが,大阪のスタジオからやっているのです。「ミヤネ屋」は毎日2 時間,午後2 ~ 4 時まで。「ウェークアップ」は土曜日午前8~9時半です。毎週大阪から11時間半,全国に情報を発信しています。それから,両番組とも報道局の解説委員が出演しております。

大阪発全国発信の意義は

 全国ネットの報道番組を大阪のスタジオか らやるということに,非常に意味があると思 っております。私が思うのは,こういう世の 中であればこそ,違った視点を提供すること に非常に意味があるんじゃないかということ です。これは別にメディアに限ったことでは なくて,地盤沈下している大阪,元気がないと言われている大阪の中で,全国に向けて, 「いや,ちょっと違うんじゃないか。東京の 皆さんはそう見ていらっしゃるけども,大阪 から見たらそうは見えへんよ」ということを発 信することの意味が非常にあるのではないか なと思っているわけです。

 ご承知のように,東京は永田町,霞ヶ関が あって,距離感が非常に近い。例えば政治問 題について東京の生番組で何か話せば,すぐ に反応が返ってきます。もちろん大阪でも大 阪発の全国ネットだと反応は返ってはくるの ですが,東京の局を通じて返ってくるんです。 直接はあまり返ってこない。ということで, 本音トークになるんです。「ミヤネ屋」の場合, そもそも宮根さんが台本を全く無視します。 実際オンエアーが始まりますが,全く聞かれ ない。わざと打ち合わせもしない,わざと台 本は無視する。それで司会者の能力によって 本音を引っ張り出していくというのが,大阪 の番組の特徴なのです。

異なる価値観を発信する

 東京をライバル視して権威に物申すという ことも,大阪の人たちは非常に意識してつく っています。こういうこともありました。小 泉政権時代,世の中全部小泉さんでした。そ の中で私はあえて,「本当に小泉さんでいいの か」という番組をつくりました。なぜかと言う と,気持ち悪いんですね,大阪の人間からす ると。皆が皆「小泉さん,小泉さん」。しかし, 「郵政民営化ができれば外交もうまくいく」と いうのは,ちょっと待ってよ,本当にそれで いいのかと。世の中の流れが一方向に行って いる時にあえて違う番組をつくるというのは, 東京ではなかなか勇気の要ることだと思いま すが,大阪ではそうでもないんです。

 その根底にあるのはジャーナリズムの本質, 権力に対する懐疑です。ここにやっぱり大阪 のスタジオから報道番組を,しかも毎週11 時間半も定期的にたくさんの時間をちょうだ いして流すことの重要性があるんじゃないか なと思っています。残念ながら東京の方々は 大阪のことをライバルだとは思っていません。 ところが大阪は,「俺たちはライバルや」,「東 京の暴走を止めるのは俺たちしかいない」と 言っているわけです。そういう中でどれだけ独自の視点を出せるか,目線を磨き上げられる かということが非常に問われているわけです。

 この違う意見,価値観を発信する重要性。 私は今解説委員としてテレビに出て,コメン テーターという仕事をしていますが,今世の 中であちこち取材させていただいて,番組で 発言させていただいて,この仕事をしながら 一番感じているのは,違う意見,価値観を発 信する重要性です。

ジャーナリズムの今後

 ジャーナリズムの仕事をしていて今後につ いて非常に大事だなと思うのは,やっぱりわ れわれの仕事の一番大事な「権力の監視」で す。権力を監視することにおいて,東京の価 値観だけではなしに,大阪からの価値観,地 方からの価値観,違う見方も含めて監視をし ていくということです。それと選択肢の提供 です。世の中いろいろ選択肢があっていい んじゃないか。テレビの場合は放送法という のがあって社論というのがないわけです。政 治的公平は絶対だと言われていますし,世の中の意見が分かれることについては,いろい ろな視点から皆さんが判断する材料を提供す るというのが解説委員の役割です。その選択 肢の提供というのが非常に大事でしょうし, そのときに東京以外の視点,これを出すこと というのが非常に大事だと思います。

 最後に,一番大事なことはやっぱり「志」で す。少しでも皆さんの生活が豊かになって, 皆さんが少しでも幸せを感じるような世の中 になるために,皆さんになりかわって,お力 をいただいて権力をチェックする。権力とい うのは何も警察や検察だけではありません, 大企業の皆さんもある意味権力かもしれませ ん。いろいろな形の力があるところを,弱い 方々になりかわって,本当に世の中はちゃん と動いているのかということをチェックする のがわれわれの仕事だと思っています。

(スライドとともに)