大阪ロータリークラブ

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2013年11月29日(金)第4,465回 例会

オーストラリア・トゥデイ ~現状と今後の方向性~

Catherine Taylor 君(外交官)

会 員 Catherine Taylor  (外交官)

ビクトリア州メルボルン出身。2013年2 月19日,駐大阪オーストラリア総領事就任。高校時代にロータリー交換留学生として1年間,大学時代にも半年間日本に留学。愛知県国際課,日本貿易振興会(ジェトロ)メルボルン事務所,在日オーストラリア大使館,在仙台オーストラリア領事館など長年日豪貿易に携わる。2013年4 月当クラブ入会。

 日本に関心を持つようになったのは14歳の時でした。ロータリークラブとご縁がありまして,交換留学生プログラムにご推薦いただきました。当時は派遣先がまだ限られていて,アメリカかヨーロッパか日本かという行き先でした。そこで父が「日本はオーストラリアの重要な貿易相手国だから,日本での経験が将来役立つでしょう。日本を選びなさい」と言ったことは,今でも印象に残っています。現在,総領事になっていることを考えますと,父には先見の明があったのかもしれません。そして父ですが,残念なことに私が総領事になっていることを知らないまま他界しました。早いもので来年10年となります。

 なぜ日本が好きなのかとよく聞かれてきましたが,最初のころは,日本が非常に進んでいるというところにひかれました。15歳の時ですから海外は初めてだし,成田空港から東京までのことは,昨日のように覚えています。高層ビルがいっぱい建っていて,技術的な面から見てもむだ使いしないでぎりぎりまで建てている。メルボルンは割と大きい街だと思っていたらとんでもないことでした。これが第一印象でした。

 少しずつ日本語が身につき,人間関係とか少し日本の文化が分かるようになると,相手を非常に大事にすることとか,本音と建前のことですとか,礼儀正しいことなど,そういうようなことも非常に魅力的でした。また,モノづくりが優れていて,お客さんに対するもてなしの心などは,今でも魅了されています。16年も滞在した日本は,私にとってもう一つの故郷になっています。

独特の多様文化が息づく

 ロブ貿易・投資大臣は11月14日に次のような声明を発表しています。「日本はオーストラリアにとってアジアにおける最も緊密なパートナーであり,第2位の貿易相手国である。TPP交渉においても,相互に共通の利益を推進しつつ,日豪経済連携協定の締結に向け,残存している障害に対処することは可能だと確信している」。このように日本と緊密な2国間関係を享受しているオーストラリアとは,一体どのような国なのでしょうか。

 オーストラリアという国は,既存の伝統と新しいものが混じり合った独特で多様な文化が息づいています。先住民であるアボリジニの人たちは,今も続く世界最古の文化的伝統を守り続けています。彼らは,少なくとも4万年以上前からオーストラリアの大地に暮らしています。そのほか,のべ200ほどの国々から移民してきています。1788年に大英帝国がシドニー湾沿いに最初のヨーロッパの植民地を建設して以来,年々数が増え,オーストラリアの人口は1945年にはアングロ・ケルト系,つまりイギリスやアイルランド,スコットランドを故郷に持つ人々を中心に700万人に達しました。それ以降,ヨーロッパやアジアの戦争から逃げてきた67万5000人の難民を含む650万人以上の移民が移り住み,社会や文化に大きな多様性をもたらしました。

 現在のオーストラリアの人口は2,300万人近くに達しています。そのうち,およそ4分の1は海外生まれの人たちです。人口は日本の6分の1ほどですが,国土面積が769万平方㌔メートルにおよび,世界で第6位です。オーストラリアは多くの移民を受け入れて定住させ,成長の原動力としてきました。

日豪の2国間の重要性

 9月に行われた総選挙で6年ぶりに政権が交代し,現在の内閣のトップはトニー・アボット首相です。10月にブルネイで行われた日豪首脳会談で,アボット首相が「オーストラリアは日本との関係をアジアにおける最良の友人として重視している」と述べました。

 そして,オーストラリア初の女性の外務大臣,ビショップ大臣は10月に安倍首相を表敬訪問しました。このように新政権発足以降,閣僚らの来日が相次いでいます。これは日豪の2国間の重要性の表れと言えるでしょう。安倍政権が日本経済の再活性化に力を入れることを,オーストラリアは支援します。安倍首相の「Japan is back.(日本は戻ってきた)」と宣言したことを,オーストラリアは歓迎します。

 オーストラリアの経済成長は力強く,22年連続でプラス成長を達成しています。IMF(国際通貨基金)による成長予測によると,2014年には3.3%プラス成長,13年から18年にかけての実質GDPは年率平均3.1%成長が見込まれています。ですから,スタンダード・アンド・プアーズとかムーディーズによる信用格付けはトリプルAとなっております。

 投資の話ですが,日本はアメリカ,イギリスに次いで世界第3位のオーストラリアへの直接投資国です。またオーストラリアは,日本資本にとってアメリカ,中国,そしてイギリスに続く第4位の投資先です。そして,日本はオーストラリアにとってアジア最大の海外直接投資国で,ほかのどのアジア諸国よりも急速に伸びています。日本からの対豪直接資額は,中国からと比較すると300%もの伸びです。

 今後も日豪間のパートナーシップはますます強化していくでしょう。それをまた関西で,特に友好関係だけではなくて,ビジネス関係,共同開発などができる可能性もかなりあるのではないかと思います。来年6月のシドニーのロータリー国際大会を機会に,一層の友好交流・貿易関係の発展に努め,皆様のビジネスチャンスにもつながるよう応援して参りたいと思います。(スライドとともに)