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2013年10月25日(金)第4,461回 例会

障害者雇用の現場からダイバーシティを考える

石 﨑  順 子 氏

大和ライフネクスト(株) 常務取締役
大和ライフプラス(株) 代表取締役社長
石 﨑  順 子 

1960年生まれ,’83年大阪大学法学部卒業,(株)リクルート入社。’85年リクルートコスモス,’95年福岡ドーム出向。’99年コスモスライフ(現大和ライフネクスト)転籍,2011年から現職。

 私は現在,大和ライフネクストという大和ハウスグループのマンションを中心とした不動産の管理会社で仕事をしております。もともとリクルートグループでしたが,約4年前に大和ハウスグループ入りをいたしまして,現在は分譲マンションの管理14万5,000戸を中心に,その他の建物,ビル,あるいは施設の管理というところでお仕事をさせていただいております。

 管理の現場には非常にいろいろな職種,例えば清掃であったり,警備であったり,あるいはもちろんマンションの管理人であったりという様々な職種が存在いたしますので,現在年齢のほうは22歳から75歳まで,3,450名の従業員が働く会社でございます。その中で,障害者雇用を促進するに当たり,平成23年度に大和ライフプラスという特例子会社を設立いたしました。この会社が現在従業員33名,うち障害者と呼ばれる方が29名勤務しています。主に親会社の大和ライフネクストの事務業務で,図面集,契約書などの電子化業務,名紙の印刷やデータ入力などを請け負っております。試行錯誤の連続でございます。

まだまだ進まない障害者雇用

 日本全国で741万人の方が障害者と呼ばれています。身体障害の方が366万人,知的障害の方が54万人,精神障害と言われている方が320万人。その中でも18歳から65歳未満の就労可能な方は331万人と結構いらっしゃるのです。ただ仕事に就いているのは44万人,わずか13.3%の就労率というのが現状です。

 一方で,障害者雇用自体は,社会的な課題として従来から促進が図られております。従業員50人以上の企業においては2%の雇用が義務づけられておりますし,この雇用率については引き上げられる予定になっております。特に精神障害者においては,人数が最近急増しております。就労が難しいという現状が大きな課題にもなってきておりまして,今後精神障害についての雇用は義務化されていく予定になっております。「特例子会社」というのは,親会社が障害者に特別に配慮した環境をつくるために設立する会社です。雇用を促進することを目的に設立するということですが,親会社で雇用をしていると同等にみなすことができるので,親会社と一体になって雇用率2%を実現していくためにつくられた制度です。全国に現在378社がございます。

 最初は,障害者を区別したくないと正直思っておりまして,ごくごく自然に私たちが働いている職場で普通に仲間として受け入れたらいいじゃないかと考えておりました。いろいろな形で各部署で考えて受け入れるということを進めてまいりました。そうこうしていても,実は雇用率が増えなかったという現状がございます。採用しても,結局すぐやめてしまう。そして,その結果雇用率が増えないということが続いておりました。まず,2005年にハローワークから「3 カ年計画を出しなさい。しっかりと雇用を進めなさい」という命令を出され,「ダイバーシティ推進室チーム」を発足して進めましたが,もう一度再作成命令が出てしまいました。やはり働く環境をしっかりと整えて気持ちよく安定して働いてもらう体制が必要だという結論に達し,2011年にこの会社を設立いたしました。

様々な個性や能力をどう生かすのか

 私どもの会社は平均年齢は35.3歳,18歳から55歳までの様々な方がいます。29名の障害者の社員のうち13名が精神障害の方です。世の中の平均は5%ぐらいと言われていますので,比率としてはかなり高いということが注目していただいている一つのポイントになります。大工さん,コンビニ店長,シニアソムリエ,内装屋みたいな人もいますし,特別支援学校を卒業してくる18歳の新卒も4年連続で採っております。障害の種類や程度を気にすることももちろん,考え方,コミュニケーション,能力,適性が全く違うということを前提に会社の運営,営業も組み立てております。その様々な個性,能力をどう生かしていくのかということですが,単純化した得意な業務であれば,一般の社員よりもはるかに早く,そして集中して,かつ粘り強く継続して仕事ができるというきわめて特徴的な能力を持っているメンバーもいます。それぞれの長所を生かす業務設計ということを,今チーム毎で細かく組み合わせて工夫をしております。

 始めたばかりの頃は,障害者にどう接していいのかわからないということもありますし,意識もしますし,会話もぎこちないというようなこともございました。面接をしてもなかなかその人の本音も聞き出せないし,いいか,悪いか判断もできないとうことも多かったのですが,ある意味特別視することは何もないのではないかと思いますし,障害も個性の一つと思っていいのではないかということを実感しております。

ダイバーシティを広げる

 障害者に限らず,人は人をカテゴリーで分けて典型的なイメージ像をつくって考えてしまいがちです。障害者はもちろんですが,それは高齢者や女性に対しても同じことが言えるのかもしれません。いずれも今は国の政策として雇用を促進するための数値目標が掲げられたり,企業が特別に何か対応を迫られるといった流れにあります。大和ライフプラスでの障害者雇用の実践を通じて,一人一人の個性の違いを理解し,生かすことで個々人が能力を発揮し成長していくという,ダイバーシティの考え方を少しでも広げられれば,と思っているところでございます。

(スライドとともに)