大阪ロータリークラブ

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2013年9月27日(金)第4,457回 例会

外資系ファンドから見た日本企業

津 坂    純 氏

TPG キャピタル(株)
代表兼パートナー兼マネージング・ディレクター
津 坂    純 

1961年生まれ。’79~’83年 Harvard College, Harvard University(米・ケンブリッジ)。’86 ~’88年 Harvard Graduate School of Business Administration(米・ボストン) Merrill Lynch & CO. や GOLDMAN SACHS & CO. 等,数多くの外資系企業に勤務。’06年から現職。

世界各地で資産運用

  「TPGキャピタル」という会社は,世界で資産運用をしています。主に国や企業の年金を預かって,世界中の企業に投資しております。総資産ベースでいきますと,投資先を全部累計すると30兆円,売上は13兆円強です。

 例えば,「タカラトミー」は,子どものおもちゃを手がけています。トミカ,プラレール,リカちゃん人形が有名です。おもちゃは少子化問題もあり,国内だけでは需要が減ります。やはり海外に行かないといけない。「海外戦略を兼ねて手伝ってくれないか」ということで,私ともう1 ~ 2 名で会社の役員を務めさせていただいています。「エイボン」は,世界でトップ5 に入る化粧品会社です。ほかにも,「ジョイント・コーポレーション」は「アデニウム」というブランドで,「アデニウムタワー梅田」という30階建てのマンションを2012年に建てています。

 ロータリーさんの指導のもとに,私どもも,できるだけ社会奉仕活動というのを常に意識しています。私は個人的にもハーバード大学の役員もしています。経済同友会,赤十字にも,できるかぎり時間をつくって,少しだけですけどお手伝いをさせていただいています。

 ちょうど「3 . 11の悲劇」,東日本大震災が起こった時の事です。私たちは人の供給や物資の提供をさせてくれとお願いしました。いろいろな避難所に電話をかけましたが,「もう間に合っている。山積みだ。要らない」と言われました。それで,「あえて必要なものは何ですか」と聞いたら「あえて言うなら,子どもたちが避難所にいてすることがない。音を出さない,おもちゃはないか」とか「女性の方の化粧品があれば持ってきて」と言われました。タカラトミーとエイボンに投資していたので,トラックいっぱい物資を積んで,郡山で当時一番大きい避難所に物資を届けました。

 投資会社は,皆さんハゲタカと思われていますが,私たちはそういう会社ではありません。「どういう投資をするの」とよく聞かれますが,答えは簡単に言うと非常に柔軟に行っています。金額で8 億円から2,000億円まで投資する能力がございます。

 「どのくらいの期間で投資するの」ともよく尋ねられます。平均では5 年~ 7 年です。すぐに売るようなことはしません。じっくり経営陣とつき合うのです。一つだけわれわれが投資するときにこだわるのは,やっぱり投資先の経営陣と意気投合することです。

欧米,日本,中国で世界経済の65%

 日本の話に入る前に,今世界で何が起こっているのかに少し触れます。アメリカ,EU・ヨーロッパ,中国,日本,この4 つのエリアで世界の経済のGDPの過半を占めています。数字であらわすと,アメリカ22%,EU圏23%,中国11%,日本8%。世界経済の約65%がこの4つのエリアにあります。ブラジル,ロシア,インドはすべて3%。日本は東京圏だけでも,2.8%です。カントリーリスクを負う国より,日本で中身がよくわかる東京と大阪で仕事をしたほうがいいのではないですか。これが,私たちのうたい文句です。

 簡単に地域別に話をしていきますが,アメリカは好調です。アメリカの100社の株式指数は,2013年の8 月時点ではもうリーマンショック前のピークを上回っています。ただ,富裕層と貧困層の格差問題はあります。

 ヨーロッパは,一言で言えば「もうダメ」。リーマンショックから7 年たっていますが,ヨーロッパはリーマンショック前のGDP水準に戻っていません。ヨーロッパは,これから先に厳しい状況が続くのではないのでしょうか。ヨーロッパの回復を楽観的には見ないで慎重にしないといけないのが,投資家の見方です。

 中国ですが,これも慎重に見ないといけないと思います。家計の消費がGDP比率の大部分を占めない限り,中国経済は危ない。どこまで中国の消費そのものが伸びるかによって,将来が決まっていきます。ここも間違いなく社会問題がいろいろ出ています。

少子高齢化,政府負債が日本の課題

 日本ですが,私ども投資家の見方は,割れています。いい日本と悪い日本がある。ただ,現状をよく見ると世界経済の日本の地位は低下しています。また,少子高齢化が大きな課題です。2009年から2050年この40年間に,20代~30代の層が50%近く下がります。さらに,日本が抱えているもう1 つの課題は,政府の負債です。世界で一番借金している国は日本なのです。

 借りている金額はGDPに対して間違いなく2 倍近くありますが,それ以上の国内保有の金融資産があります。だけどそれがいつまでも続くわけではありません。日本の国がこのままのペースで赤字収支を運営していけば,GDPに対して借金が増えていきます。2022年ぐらいには,借金と保有資産が同額になってしまいます。そのまま借金だけが増え続けると,日本は借金国になります。金利が上がり,悪い自体が起こります。それまでに,まだ9 年,10年の期間があります。この間に日本国の財務体質を,ある程度筋肉質にするように,私は政府などに対して毎日訴えていくつもりです。

 これからの日本企業にとって,日本だけが戦いの土俵ではありません。私たちが目指しているものは,ロータリーの「四つのテスト」に書いてあるように「真実か」,「皆さんに平等なのか」,「本当にフェアーなのか」という理念によく似ています。それで,「奉仕」ということを投資家の言葉に変えますと,金もうけの話じゃなく,会社がよくなれば投資家としては成功するという概念で私ども日々仕事をさせていただいているつもりです。皆さん,今日はありがとうございました。(スライドとともに)