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2013年9月20日(金)第4,456回 例会

自殺予防といのちの電話 こんな声が聞こえてきます

八 尾  和 彦 氏

社会福祉法人 関西いのちの電話
事務局長
八 尾  和 彦 

1947年和歌山県生まれ。関西学院,仏教大学を卒業後,’74年大阪YMCA入職。’96年から「関西いのちの電話」事務局長。大阪府自殺対策連絡協議会委員。大阪市自殺防止対策部会専門委員。

 9月10日というのはWHOが定めた「世界自殺予防デー」です。自殺予防月間という時にお招きいただいて感謝しております。

 いのちの電話というのは,いろいろな「心 の悩み」を聞かせていただいている団体です。電話相談は1953年,ロンドンで始まりました。1971年東京で始まり,2年後の1973年に大阪でも始まりました。

 いのちの電話は「24時間」「いつでも,どこからでも」かけられます。今,話を聞いてほしいなという時に電話して下さいということなんです。相談は「無料」です。

 「匿名」でお話しできます。名前を言っていただく必要はありません。プライバシーはもちろん守ります。相談員は「ボランティア」で,いろいろな職業の方がいまして,会社員,学校の先生,お医者さん,弁護士さんもいます。2 年間ですが,養成講座を受けていただいて,認定をして相談員になるというようにしています。

相談の18%が「死にたい」

 関西いのちの電話では,今,年間2万3,000件の電話を受けています。私は1996年に関西いのちの電話にまいりましたが,その頃は1万8,000件台でした。だんだん増えてきて,特に最近3~4年で2万件になって,ぐっと増えてきたというのが現状です。

 そのうち60%が「心の病」のある方です。16~17年前だと40%,それが今60%ということで,生きづらい,生きにくい社会だなと思います。そして,「死にたい…」と言ってくる人が18%ぐらいです。16~17年前ですと7%でした。

 電話の内容ですが,守秘義務もありますので,ちょっと抽象化して話をさせていただきます。30代の男性ですが,13年間うつ病で,一人暮らし。俺はどうなるんだろうかということです。「もう生きていてもしょうがないな」ということを言ってこられます。「何のために生きてるんや」というのが多いんです。

 これは14歳の中学2年生の男の子ですが,小学校の時に親が離婚,彼は父親に引き取られた。父親が再婚して,赤ちゃんが生まれるということで,俺はどうなるんやろうということです。「俺を何で生んだんだよ」ということを,切々と言ってきます。そういう気持ちをしっかり受けとめていくことです。「今まで何人かと話したけども,しっかり話を聞いてくれたのは2 人いる。そのうちの1人はおじさんや」と言ってくれたこともありました。受けとめていくことで,その電話をかけてきた人の重荷が少しでも軽くなればいいなと思うわけです。

とにかく気持ちを受けとめる

 「死にたい…」ということを言ってくる人は18%いると言いました。わざわざ電話をしてくるということは「死にたいけれども生きたい」という気持ちが,その奥にあると思うんです。ですから,そこの気持ちをしっかり受けとめていくわけです。そうすると「今まで誰も私の言うことを聞いてくれなかったし,私のことを受け入れてくれなかったけれども,やっと私のことを分かってもらえた」ということで,「死のうと思ってたけれども,もう1日頑張ってみよう」ということが実際あるんです。

 いのちの電話をかけてきた方が,後にどうなっているかは,分かりません。相談員にとっても非常につらいことです。新聞を広げて社会面を見たりすることもありますが,なかなか分からないです。しかし,たまに「あの時の一言で,生き返ることができました」ということで,「今,何とかやっておりますのでその方にお伝えください」というような電話もいただくことがあります。

 実はいのちの電話にも悩みはあります。その1 つは,養成講座で新しい相談員を養成していくわけですが,この3年間減ってきています。今340名ぐらいいて,まだ持っていますが,だんだん影響が出てくるという感じがするんです。阪神大震災の後は,ボランティア元年とか言われて,ボランティア活動がブレイクしました。東北の後はもちろん東北の方へボランティアに行っている方も大勢いるわけですが,何かよく分かりませんが,ムードが違うということをひしひしと感じます。

 「この人は聞き手としていいんじゃないかな」という方がおられたら,お勧めいただければありがたいと思います。

ロータリアンの活動支援に感謝

 私たち年間1,600万円ぐらいの予算ですが,その半分以上は寄付で賄っていて,なかなか厳しいのが現状です。大阪RCの皆様には毎年ご援助いただきまして,本当に感謝しております。9月25日に40周年を迎えますが,7月初めでしたか40周年特別募金の案内をさせていただいたら,団体としていち早くそれに応えていただいたのは,大阪RCでした。本当にありがとうございます。

 自転車操業で,赤字になることも結構あるのですが,何とかクリアしてきたというところなんです。いろいろな団体がありますが,関西いのちの電話を覚えていただいて,末永くお支えいただければ本当にありがたいし,そのことを願っております。

 最後になりますが,24時間毎日やっております相談電話〔06-6309-1121〕,もう1つは,毎月10日,朝の8時から翌日の8 時までの,フリーダイヤル自殺予防いのちの電話〔0120-738-556〕というのがあります。

 「いつでも,どこからでも」と申しましたが,なかなか電話がつながらないこともあります。ですから,お勧めいただく時には,「つながらない場合もあるけども,それだけたくさん悩みを抱えている人がいるんやな」ということで,一言つけ加えていただけたらありがたいと思います。ご静聴ありがとうございました。