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2013年3月1日(金)第4,429回 例会

ジャパン・シフトの時代
~「安倍バブル」改め「日本バブル」とは何か~

原 田  武 夫 氏

(株)原田武夫国際戦略情報研究所
代表取締役
原 田  武 夫 

東京大学法学部在学中に外交官試験に合格。12年間,外務省に奉職後,アジア大洋州局北東アジア課課長補佐を最後に自主退職し,独立系シンクタンクを設立。

 きょう皆様方とお会いできて,大変光栄に存じております。というのは,きのうからきょうにかけて大きく世界が変わっているからです。1つはローマ法王が退位されました。ローマ法王が自主的に退位されるのは600年ぶりの現象です。もう1つは,日本時間できょうから明日の未明にかけて,アメリカで強制的な財政支出の削減が行われます。2011年9月に決まった予算制限法という法律に基づいて,強制的に国家の支出が10%減らされるというものです。ほかに,すごく大きな転換点だなと私が痛感したのは,スイスの代表的な新聞「ノイエ・チュルヒャー・ツァイトゥング」の1面トップに「国家が通貨発行の権限を独占するのは,これはもうやめるべきではないか」という論評が載ったことです。通貨発行を民営化すべきではないかとスイスの一流経済紙が主張し始めたのです。

システムの大転換が始まる

 すごく重要なことは,世界史が転換するときに必ずドイツ語圏から変わってきたということです。世界大恐慌(1929年)が最もひどくなったのは,ニューヨークにおける株価の大暴落ではないのです。1931年に,その影響を受けたクレジットアンシュタルトというオーストリアにあるロスチャイルド系の銀行が,破綻したところから始まりました。今回のスイスの新聞の記事には,オーストリアの経済学者たちがそう言っていると書いてあるのです。私はここでゾクッと来ました。ヨーロッパ,アメリカはまず今までばらまいたお金をいったん回収しなければいけないのです。これが2番目の話です。アメリカがなぜ強制的に財政支出を減らしていくのか。自分自身で小さくならないと,ハイパーインフレになってしまうからなのです。経済が崩壊する前に,全く新しい通貨システムにすべきじゃないかと言い出しているわけです。これから起きることはシステムの大転換なのです。

 通称バチカン銀行と言われていますが,世界中から特にオイルマネーが集まっています。今までのシステムは,バチカン銀行が世界中からドルで集金して,そのお金をシティー・オブ・ロンドンに飛ばす。シティーは世界中のタックスヘブンに飛ばすわけです。すなわち旧大英帝国に飛ばすのです。なぜシステムが変わると私が断言しているかと言えば,シティーを抱えているイギリスの国債が格下げになりました。そこでシティーを中心とした集金システムを全部壊して,ここで稼いでいる連中から税金を巻き上げ始めたのです。皆がシティーにお金をドル建てで預けているからアメリカは何も考えずに借金できたのです。ドルを持っていると運用せざるを得ないでしょう。トリプルAの金融商品がありますと銀行が言うのです。それは米国債です。

世界のお金が日本に向かい始めた

 このまま行くと破綻する可能性が出てきたので3月1日からアメリカはみずから財政支出を削減せざるを得ない。ヨーロッパとアメリカを頼りにしていた中国も倒れそうになるわけです。でも,平成バブルの1986年後半から1990年までの間に動いていたお金の3倍の量のお金が,今世界中に動き回っています。世界中からお金がものすごい勢いで日本に来ています。それは日本がいいからじゃないのですよ。日本が自分自身でバブルを起こさなければならない理由があるので,この2年間か3年間ぐらいだけ,日本にお金が殺到するのです。それは日本の人口問題です。団塊の世代の方々が65歳になって,基礎年金を受け取り始めるのです。去年の政府債務の国内総生産(GDP)との比率は210%でした。要するに1年間に日本が稼ぎ出す金の2倍借金があるのです。来年2014年は240%,再来年2015年には270%になります。そのことを理由に投資家が日本国債の空売りに入るのです。放っておくと2010年5月にギリシャで目の当たりにしたような状態になりかねない。日本が止めるには国家債務不履行宣言をするしかないのです。それには国際的なルールがあります。1つは財政調整,もう1つは債務交換。財政調整には2つあります。1つはむだな支出をなくすことです。もう1つはむだな政府保有資産を全部売ることです。

日本は自らバブルを起こす

 わが国も財政調整をしているのです。例えば政府保有資産の売却です。日本航空の株放出から始まった流れはこれですよ。年金積立金運用独立行政法人という年金を運用しているところが,2013年度から年金運用全体のポートフォリオにおいて日本株の運用を増やすと言い出しました。わが国が政府保有資産を大量に売却するのであれば,高値で売れなかったら意味ない。公的,準公的な資金を使って,日本は自分自身でバブルをやっていくのです。同時に,デフォルト宣言するかもしれないとちらつかせて,日本国債の空売りをこの3年間止めるのです。ということは債務交換をしなければいけない。これが増税です。去年,野田さんが消費税増税について国際公約したのは,デフォルト宣言をする可能性があるよと見せているわけです。

 平成バブルと同じことにならないためには,一つしか方法はありません。日本が持っている1,500兆円という国富を,もっと国内で回さなきゃいけないのです。真の意味での循環型社会をつくり上げることです。3つの方法を資料にも書いておりますが,「1.富の循環」。ようやく財務省が動き始めましたが,相続税の問題,資産承継。「2.知恵と技術の循環」。ものづくりの復活。「3.人脈の循環」。1,500兆円もお金があるのだったら,これを回すことがリーダーシップに求められている。その瞬間に,われわれは新しい経済システムをつくり上げたというふうに世界から評価されると思います。(スライドとともに)