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2013年1月25日(金)第4,424回 例会

球界における監督とGMの役割

中 村  勝 広 氏

阪神タイガース取締役
GM(ジェネラルマネージャー)
中 村  勝 広 

1949年6月千葉県生まれ。早稲田大学から’71年のドラフト2位で阪神タイガースに入団。3年目に正二塁手。’81年からコーチ兼任,
’82年に現役引退後,2軍監督,1軍作戦守備走塁コーチを経て,’90年1軍監督に就任。タイガース退団後オリックス球団の常務取締役,1軍監督を歴任。2012年9月に取締役GMとして復帰。

 振り返れば1995年,阪神淡路大震災の年でしたが,監督6年目の7月中旬に辞任をさせていただきました。解任に近い辞任でしたが,昨年9月,17年振りにGMという大任を仰せつかってタイガースに復帰をさせていただきました。

 GMという言葉ですが,耳慣れない言葉かと思います。歴史の古いアメリカの解説を読ませていただきます。「メジャーリーグのGMは重要な役職であり,チームの戦力の1つとされる。チームのほとんどの権限はGMが有し,遠征や方針の決定,選手や団員との契約交渉,トレードやドラフトなど誰を獲得するか,放出するか,誰をマイナーリーグに落とすか,昇格させるか等々,球団オーナーから用意された予算の範囲内でこなしていく。監督はGMが決めた方針を忠実に実行する中間管理職に過ぎない」。そういう重責を担っているところがアメリカのGMでありますが,いかんせんまだ日本の野球界ではこれほどの権限はありません。

使命は「関西シリーズ」の実現

 日本のGMは言わば編成部長というところです。GMがつくことによって現場に介入できると言いましょうか,現場の監督,コーチに一言,二言,ものを申せるということが,日本における権限ではないかと思います。

 そのGMとして,タイガースを今回どんなねらいで補強したかと言いますと,ご存じのように金本,藤川,城島等々,チームのスター選手がこぞって退団をいたしまして,ある意味では過渡期であります。そこを補うために数々の名選手を獲得いたしました。そこにはいろんな批判もありまして,当然耳に入ってきております。

 どこのチームでも,育てながら勝つというのはあくまで理想論でありまして,やはり勝ちながら育てていく。力のない若手選手を,我慢して使うわけにはいきません。そんなわけで方針を打ち出したのは,ここ2年を外部から補強した選手たちでしのぐ。その間に2軍で若手選手を熟成させて,3年,あるいは4年目に理想である生え抜きを中心としたチームづくりをしたい。そういうところが中期的なねらいであるわけですが,果たしてどうなりますか。

 理想は,タイガースとオリックスさんが関西シリーズをやることが,われわれにとっては大きな使命ではなかろうかと思っております。

監督の魅力は絶大な権限

 GMとフィールドマネージャー(監督)は,どんな線引きをしているのかというところをお話しさせていただきます。日本のプロ野球は今年で77年目を迎えます。その間,入団した選手が約6千人強だそうです。その中で,1軍のベンチ入りをして初めて真のプロ野球選手と呼んでもらえるわけですが,それが大体3割強という厳しい競争の世界であります。

 6千強の中から監督の経験者は約217人,約3.5%に当たるそうです。監督という職業ですが,昭和30年代でしょうか,ある財界の雄であられた方がこんなことを言われたそうです。「男として生まれたからには,やってみたい仕事が3つある。一つはオーケストラの指揮者,一つは連合艦隊の司令長官,一つがプロ野球の監督。この3つのうちどれか1つやってみたいな。特にプロ野球の監督をやってみたいな」と。

 その理由として,この3つの職業,いずれも指先一つ動かすことで,この世における自己の存在をストレートに表現できるものばかりです。プロ野球の監督のサイン一つで選手は自由に動きます。絶大な権限,絶大な権力を持っているところが非常に魅力的だな,やってみたいなと言われたそうであります。

 次に監督の使命,仕事や役割を少しお話しさせていただきます。一番大事なところは,個性の豊かな,しかも非常にプライドの高い選手たちの気持ちをできるだけ一つにまとめ上げる。そういうシチュエーションをつくるのが大きな仕事であります。一つにまとめるために何が必要かと言いますと,思想や理論ではなく,人間的魅力であると言われております。

いいところをほめて伸ばす

 仕事は何だと言いますと,人心掌握,人心管理でしょう。人が人を管理して人と戦うという大変難しい職業だとされております。もう一つは人材の育成です。監督は2年,3年,あるいは5年の短期でどんどん代わっていく一里塚でありますが,球団は半永久的に続くわけですから,もちろん監督は目先の1勝が欲しいけれども,脳裏の片隅には次の時代,次の監督にバトンタッチさせる人材を育てなければいけないということも,一つの手腕,能力であるやに思います。

 その中で何が大切かと言うと,選手たちの個性,長所を磨く,伸ばすということです。せっかくいいところを持って入団してきたにもかかわらず,監督,コーチが来る日も来る日も悪いところばかりを指摘していますと,選手たちは,いいところを忘れてしまって,普通の中途半端な選手になり下がってしまうという例が数々あります。いいところはどんどん,どんどんほめて,伸ばしてあげるというのが大事ではないかなと思います。

 いろいろと話をさせていただきました。これをぜひご縁にさせていただいて,タイガースにはこれまで以上の大きな関心を寄せていただき,同時に,オリックスバファローズも応援してあげていただいて,先ほど申し上げました関西シリーズが実現できるように頑張っていきたいと思います。今後ともどうぞよろしくご指導をお願いします。