1969年,東京大学工学部建築学科卒業,日本国有鉄道入社。’93年,東京圏駅ビル開発(現アトレ)取締役,2002年代表取締役副社長,
’08年仙台ターミナルビル代表取締役社長,’12年6月現職。’08年8月~’12年6月,仙台RC会員。
東日本大震災から1年9カ月ですが,本格的な復旧にはほど遠い状況です。そういう中で,大阪からこの問題を取り上げていただき,さらに支援をいただくことには被災者のひとりとして大変ありがたく思っております。仙台ターミナルビルは仙台,福島,郡山,山形で,メトロポリタンというホテルとエスパルというショッピングセンターをやっております。今回は仙台のエスパルを中心にお話をさせていただきます(スライドを使用)。
震災があった昨年3月11日,JR幹部に決算状況と来年度の計画を説明するため,私はJR本社のある東京・新宿におりました。私は直感的に東北だなと思いました。会議を中止し,すぐさま携帯等で連絡をとったのですが,もうすでに連絡ができないような状況でありました。最終的にはJR電話がつながりまして,そこから断片的に情報が得られました。15時半にはホテル,エスパルのお客様,テナントさん,うちの社員の無事を確認しております。5階に保育園があるんですが,社員何人かで泣きじゃくる幼児を下に連れて行き,お母様に渡しました。ホテルでは最上階の宴会場で専門学校の卒業式がありまして,その人たちを避難階段で下ろしたのが大変な状況だったと聞いております。その後,帰宅困難者も合わせて800名ぐらいがこの駅の周辺に集まりました。ショッピングセンターの地下食品街に全員を入れまして,ホテルの毛布,テナントさんホテルの食品等々を渡して,一夜を明かしていただきました。
翌12日,タクシー4台に分乗して仙台に向かいました。高速道路は使えませんから,下を行き,13日の零時半に仙台に到着しました。部長連中が13日の対策を練っていたところで,13日からの復旧会議に大林組の方を呼んでほしいとお願いしました。今の駅ビルを施工されておりますので,一番中身をご存じだろうと考えました。第1回目の復旧会議で復旧の大体のイメージを申し上げました。ショッピングセンターは地下が大きな被害がなかったので,地下から回復をしていく。ホテルのほうは宿泊をまずやり,宴会場は後回しというイメージを申し上げました。会議は1時間に限りまして,そこで疑問がないように整理をしてから散らばってもらって,調査をしたり,手順を考えたり,手配もしてもらう。次の日の会議で新たな事柄も発生しますので,それをその場で整理をして,またそれを繰り返していくという形で復旧に臨みました。
ショッピングセンターの催事用に使う吹き抜けを対策本部としまして,200くらいのテナントの方たちがここに集まれば何かあるという状況にしておきました。例えば情報提供,安否の確認が伝言板等で同じ会社の人に伝わるように,あるいはメールで本部と連絡がとれるようにしました。食料品もテナントさんから供給いただきました。ここに来れば食料品もある,何か困ったらここに来れば何とかなるということで,24時間体制で対応をしました。
復旧・営業再開までに,住民の皆さんに,焼いて残っていたパンを無料配布しました。テナントさんにヒアリングをしたら,肉や魚は冷凍のものがあるというので,ホテルの前で臨時店舗を開きまして,住民の皆さんにちょっと安い値段で買っていただきました。復旧が進み,地下1階の生鮮三品の部分を復旧しました。ホテルも,宿泊棟は3月26日に低層部分,その後高層部分という形で復旧。予約をとるようになったのは4月1日ですが,あっと言う間に満員になりました。ホテルのレストランは,土日には長蛇の列ができるぐらい家族連れでにぎわいました。皆さん何とか無事だったことの喜びを感じている状況があり,いわゆる「絆消費」を見るような感じがいたしました。
復旧の中から一番感じたのは,ショッピングセンターは一つのコミュニティーの中心だということです。ということで,再開後は復旧本部に使っていたイベントスペースを使って復興支援のイベントを実施しました。こんな時期に若干ためらいもありましたが,これは大変好評でした。ツイッターで,「エスパル,ナウやってるよ」とか,「今スタバにいるよ」とか,そういう喜びの声が随分あふれました。そのときに初めてショッピングセンターの平時ではない存在感を,テナントさんと一緒に感じました。
ホテルのほうは何回かに分けて,少しこだわったカレーライスとかをその場でつくって皆さんに提供し,これも大変喜ばれました。継続的にやることに意味があることを感じましたので,これから先の支援については仙台ターミナルビルの新しい社長にも引き継いで今もやっています。
今回の震災で失ったものも大変大きいのですが,この復旧を通じて信頼関係といいますか,ショッピングセンターやホテルに対する市民の皆さんの期待感,気持ちみたいなものがよく伝わりました。それから,テナントさんとデベロッパーの関係というのは,テナントが稼いだものをデベロッパーのほうがピンはねをするような状況もありますので,なかなかうまくいかないという部分もあります。しかし,今回この復旧を通じて,一体感というものが一気に詰まり,いろんな面で信頼関係が生まれたということが大きいことかなと思います。それから,市民の皆さんの期待感も十分にあることも感じられました。
きょうはこういう発表をさせていただきまして本当にありがとうございました。ロータリークラブの皆さんにもいろいろご支援をいただいております。本当にありがとうございました。